第11話 私と彼③

「ララと言う人を探しているのですが存じませんか」

「えっ!?  あ、いえ、知りませんけど……」

まさか自分が探されているとは思いもしなかったので驚いてしまった。

だが、ここで動揺してしまってはいけないと思い平静を装って答えたつもりだったのだが、うまくできたかどうかは分からない。

そんなことを考えている間にも話は続いていく。

「実はですね……いや、その前にまずは自己紹介からしましょうかね、僕はクラウスと言います、よろしくお願いします」

そう言って手を差し出してきたので握手を交わすことになった。

(あれ? なんでこの人私がララじゃないってわかったんだろう……?)

不思議に思ったものの今はそれよりも大事なことがあることを思い出し質問を続けることにする。

「あ、はい! こちらこそよろしくお願いします! それでさっきの話の続きなんですけど……」

と言うと彼は頷いて続きを話し始めた。

「公爵令嬢のララを探しているんです、存じませんか、冒険家様」

「えっとぉ~、知らないなぁ~」

思わずしらばっくれてしまったが仕方がないだろうと思う。

だって本当のことなんて言えるわけがないのだから。

それに何より恥ずかしいという気持ちもあったからだ。

しかし、それが裏目に出たようだ。

彼の顔を見ると明らかに不機嫌そうな表情をしていたからである。

まずいと思った時にはもう遅かった。

次の瞬間には、押し倒されてしまっていたのだ。

そして、そのまま馬乗り状態にされてしまい身動きが取れなくなってしまったのである。

必死に抵抗を試みるもののビクともしないどころか、どんどん押さえつけられていく一方だった。

このままではマズイと思い咄嗟に叫んだ。

「きゃあああああっ!」

自分でも驚くほど大きな声が出たと思う。

その証拠に彼も驚いていたようだったからだ。

「なんで、リリアーナ何て名乗っているのさ、ララ」

「それはっ……」

言葉に詰まる私に構わず続ける彼に対して何も言い返せなかった。

なぜなら図星だったからだ。

そもそも何故こんな事態になってしまったのかといえばそれは簡単なことだ。

私が偽名を使ったことが原因であることは明らかなのだから当然と言えば当然だと言えるだろう。

だから私は全てを話した。

「虚偽罪で、名前も育ちも魔抹消された?」

「うん、そうなの、だから名乗れなくて、貴方は?」

「レイだよ」

彼が名乗った名前を聞いて驚くと共に納得した。

「レイなの? 本当に? 本物? どうしてここに?  

いや、それよりどうやってここに来たのよ? もしかして転移してきたとか言わないわよね」

彼は、首を横に振ると言った。

「アレからずっと探して歩いて来たんだ」

「え!?」

その言葉に耳を疑った。

あれからずっと一人で旅をしていたというのか。

だとしたら相当大変だったに違いない。

私は思わず涙をこぼしてしまった。

それを見た彼は慌てて謝ってくる。

その優しさが余計に辛く感じられた。

私は、涙を拭うと彼を安心させるように言った。

「大丈夫よ、気にしないで、それよりごめんなさい、嘘ついてて」

私が謝ると、彼は首を横に振った。

「いいんだ、ララだって大変だったんだろう? なら仕方がないさ、

それに、こうして会えたんだからいいじゃないか」そう言って微笑んでくれた。

私はその笑顔を見て嬉しくなった。

(ああ、やっぱり好きだなぁ)

そう思うと自然と体が動いていた。

彼に抱きついていたのだ。

突然の行動に驚いた様子だったが、すぐに抱きしめ返してくれた。

それだけで幸せだった。

しかし、いつまでもこうしてはいられないと思い離れることにする。

そうすると今度は彼の方から抱きしめてきてくれたのだ。

嬉しくてたまらなかったが、今はそれよりも大事なことがあったので我慢することにした。

(キスしたいな……)

「あの、その、もう少しだけこうしていたいんだけど、ダメかな?」

と尋ねると、彼は微笑んで頷いてくれた。

私たちは、しばらくの間、抱きしめ合っていたが、やがてどちらからともなく唇を合わせた。

お互いの舌が絡み合い、唾液を交換し合うような激しいキスだった。

息が苦しくなり、口を離すと銀色の糸を引いたのが見えた。

それがとてもいやらしく見えた。

もう一度キスをしようとすると、今度は彼から求めてきたので喜んで応じた。

それから何度も繰り返していくうちに段々と頭がボーッとしてきたような気がした。

(あ、なんかこれヤバいかも……)

と思っている間にも行為はエスカレートしていき、

「ララ、可愛いよ」

と言われながら胸を揉まれた時には、思わず声が出てしまった。

恥ずかしいと思いつつも、もっと触って欲しいと思ってしまう自分がいることに気づき、

ますます顔が熱くなるのを感じた。

「ララ、デートでもするかい?」

「うん、行きたい!」

私は即答した。

その後、私たちは手を繋ぎながら街へと繰り出したのだった。

もちろん、ただのデートではない。

お互い好き合っているのだから、やることは決まっている。

まずは、一緒に食事を楽しんだ後、夜景が綺麗なスポットへと向かった。

そこで手を繋いでみたり、肩を寄せ合ってみたりと、イチャイチャしながら時間を過ごしていた。

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