第9話 私と彼①

(うう、眠い〜)

という声が無意識のうちに出てしまっていたようで、それを聞いた彼女が心配そうに声を掛けてきたようだが、

上手く答えることができずに曖昧な返事をすることしか出来なかったらしい。

しかし、そんな彼女の様子を見て申し訳なく思っているうちに、再び眠りについてしまっていたようである。

それからしばらくして、ようやく意識がはっきりしてきたことで改めて周囲を見回してみると、そこはレギンスの部屋の中だったようだ。

そのことに驚きつつもベッドから起き上がろうとしたところで、彼女に声を掛けられたようだ。

どうやら昼食の時間らしく、一緒に食べようと誘われたようだが、食欲がないことを伝えた上で断ったところ残念そうにしていたようだったが、

それでも引き下がらずに説得しようとしていたようだ。

だが、その熱意に負けて渋々承諾することにしたらしい。

そのため、二人で食堂へと向かうことにしたようだ。

(はぁ、どうしてこんなことになっちゃったんだろ)

と考えながら歩いているうちに、あっという間に食堂に到着したようだ。中に入ると既に全員揃っていたらしく、

私が最後だったようで注目を浴びてしまったようだ。

恥ずかしさのあまり顔が赤くなってしまった気がするが、

それに気づかないふりをして席に着くことにした。

そして、皆でいただきますの挨拶をして食事を始めたわけだが、味がほとんど感じられない状態が続いていたせいか料理の味がよくわからなかったようだ。

そんな中、一人だけ黙々と食べている者がいたようで、それがアリアだったのだが、なぜかこちらを睨んでいるような気がしたので気になったものの、

あえて気付かないふりをすることにしたらしい。

(きっと気のせいだよね?)

と思いながら食事を続けていると、急にお腹が鳴り出したことで我に返ったようで慌てて口を押さえると、俯いてしまったようである。

その様子を隣で見ていたリリアーナだったが、すぐにフォローしてくれたお陰で事なきを得たようだ。

そんな二人のやり取りを見た他の者たちは不思議そうな顔をしていたものの、深く追及してくる者はいなかったようだ。

その後、無事に食事を終えた後、部屋に戻ることにした私は、自分の部屋に入るとすぐにベッドの上に倒れ込んだまま動けなくなってしまったようだ。

(うぅ、頭が痛いよぉ)と言うと意識を失ってしまったようだが、その際に何やら呟いた声が聞こえた気がしたものの聞き取ることはできなかったらしい。

そして翌朝、目を覚ました時には何事もなかったかのように元気になっていたようだ。

その様子を見ていた彼女はホッとしたような表情を見せると部屋から出て行ったのだった。

そんな後ろ姿を見送ったあと、支度を済ませた私はいつものように食堂へ向かうと、

そこでは既に皆が集まっていたため挨拶を交わすことにした。

「おはようございます」

と声を掛けると全員がこちらを見ていたので、一瞬ビクッとしてしまったのだが何とか堪えることができたようだ。

ホッと胸を撫で下ろしていると、早速食事を摂ることになったので食べ始めることにしたらしい。

しばらくは黙々と食べていたものの途中から手が止まってしまったようだ。

というのも昨日の晩ご飯以来、何故か食べ物が喉を通らなくなってしまい食欲がない状態が続いているからである。

そのことを心配しているのか何人かの視線がこちらに向けられていることに気付いたらしい彼女は、申し訳なさそうな表情を浮かべながら食事を続けていたようだ。

やがて食べ終えると席を立って部屋に戻ったのだが、

「う、気持ち悪い……」

と言いながら倒れ込むと、そのまま気を失ってしまったらしい。

そして、しばらくすると目を覚ましたようで、起き上がるなり周囲を見回していたが、誰も居ないことを確認するとホッとした様子を見せていたようだ。

その後、シャワーを浴びてから着替えを済ませると、部屋を出て仕事に向かうことにしたようである。

その道中でふと立ち止まると何かを考え込んでいる様子だったものの、すぐに気を取り直したのか再び歩き始めたようだ。

その後、仕事を無事に終えた彼女は、屋敷に戻る途中で何者かに襲われることになったようで、

突然背後から羽交い締めにされてしまったため抵抗することができずにいると、

口元に布のようなものを押し当てられてしまったせいで意識を失なってしまったらしい。

「んんっ!?」

という呻き声を漏らしながらも必死に逃れようとしていたようだが、次第に力が抜けていき、

ついには完全に気を失ってしまったようだ。

その結果、地面に倒れ込んでしまったところを通りかかった馬車に拾われて運ばれることになったようだ。

(あれ? ここは一体……?

「目が覚めたようですね」

と女性の声が聞こえてきたため顔を上げると、そこには知らない女性が立っていることに気がついた私は驚いて目を見開いていたが、

それと同時に自分の身に起きた出来事を思い出してしまったらしく、恐怖で震え始めてしまったようだ。

その様子を見ていた女性は微笑みながら話しかけてきたようだ。

「そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。別に取って食おうというわけではありませんから」

と言ってくれたことで少し安心したらしく、落ち着きを取り戻したようだったが、それでも不安を完全に拭い去ることはできなかったようで、

俯いたまま黙り込んでしまっていた。

そんな私の様子をしばらく見守っていた女性だったが、このままでは話が進まないと思ったのか本題に入ることにしたようで、

ゆっくりと話し始めたようだ。

「……それで、どうしてこんなことになったか覚えていますか?」

「いえ、全く分かりませんけど、そもそも貴方は誰なんですか?」

と聞くと驚いた表情を浮かべた後で、納得したように頷いていたようだったが、何かを思い出した様子でこんなことを言い出したようだ。

(あれ?この人ってもしかして?)

そう思いながら見つめていると、こちらの考えていることが分かったようで笑いながら答えてくれた。

「ふふ、思い出してくれたようですね。そうです、私は貴方のことをよく知っていますよ」

と言ったところで悪戯っぽくウインクしてみせたかと思うと続けてこう言ったのだ。

その口調はとても優しく穏やかなもので、聞いていて心地良いものだったらしく思わず聞き入ってしまっているうちに、

いつの間にか警戒心が薄れ始めていたことに自分でも驚いていたほどだった。

それに気付いたのか、満足げな笑みを浮かべると、今度は真剣な眼差しを向けてきたかと思うと、こう切り出してきたのである。

その内容を聞いているうちに驚愕することとなったが、確かにその通りだと思ってしまったため素直に認めるしかなかったようである。

それからしばらくの間、話をしていたのだが、不思議と心が落ち着くような感じがしたようで、

気が付くとすっかり打ち解けてしまっている自分に戸惑いを覚えずにはいられなかったようだ。

すると、そんな私の様子を見ていた彼女も嬉しそうな表情をしていたように見えたのは気のせいではなかったと思う。

(何だろう、この気持ち……凄く温かい感じがする……)

そう感じながら、彼女の話に耳を傾けていたのだが、気がつくと眠ってしまっていたようで、

気が付いた時にはベッドの上で寝かされていたようだ。

「あれ?いつの間にベッドに移動したんだろう?」

などと考えながら身体を起こそうとしたところで違和感に気がついたらしく、自分の体を見下ろしたところ、なんと下着姿にされてしまっていたではないか!

それを見た瞬間に顔を真っ赤にしてしまったようだが、次の瞬間には血の気が引いて真っ青になってしまったようだ。

なぜなら、自分の隣には見知らぬ男性が横たわっていたからである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る