第4話 ララ
何故なら、このままでは俺達まで眠らされてしまう可能性があったからだ。
俺は慌てて仲間達に指示を出し、全員が逃げ出せるよう手引きをしたのだが、その時にはすでに遅かったようだ。
気がつくと、既に門が開き始めていたのだ。
(くっ、間に合わないか!?)
そう思って焦った次の瞬間、俺は信じられない光景を目にした。
なんと……その向こうには見知らぬ人物が立っているではないか?
「おや? こんな所に人がいるなんて珍しいですね」
そう言いながら近づいてきた人物は、何と魔族ではなく人間だったのだ。
驚きのあまり動けなくなってしまった俺を余所に、彼は話を続ける。
「ああすみませんね、驚かせてしまったみたいで。
でも、そちらから入ってきたんですよね? それなら不法侵入ではないと思いますが、違いますか?」
(しまった!)
と後悔したが時すでに遅し。このままでは捕まってしまうと思い、慌てて弁明しようとしたが……その前に彼がこう言った。
「いや、別に私は貴方達を捕まえようとは思っていませんよ」
それを聞いてほっとした俺だったが、彼は続けて言った。
「ただし、一つだけ教えてほしいことがあるんです」
それを聞いて不安になったが、それでも黙って聞いているしかなかった俺に向かって彼はこう続けた。
「貴方、今、空を飛ぶ魔法を使っていましたよね? もしよろしければ、私にも教えてもらえませんか?」
(えっ、なんだって!?)と驚く俺に彼は続けて言う。
「実は私、空を飛びたくて仕方がなかったんですよ。
でも、残念ながら私には翼が無いものですから……そこで貴方の魔法を研究すれば飛べるようになるかもしれないと思ったんです」
と真剣に話す彼に好感を持った俺は、その頼みを受け入れることにした。
(よし、やってやろうじゃないか!)
そう思い意気揚々としていると、彼が更に話を続ける。
彼は早速俺の手を取りながら言った。
「ありがとうございます! それでは行きましょうか!」
そう言われて手を引かれるままについていく俺だったが、
「な、何だ、この音」
兵達が喚く中、アリスは肩を竦めた。
その一瞬で、パキラの顔から怒りが消えた。
代わりに顔に浮かんでいるのは喜びの表情だ。
パキラと互角以上に渡り合える人間が自分の下についた、
というのはかなりの収穫らしい。
これ以上この場で戦う必要がなくなったことで気が抜けてしまったのか、逆に気が楽になったらしく緩んだ表情を浮かべている。
そう口にしたサツキの瞳には微かな狂気が宿っているように見えた。
彼女の言葉に悪意はないことはわかっているのだが、それで相手を黙らせてしまえるだけの力があった。
「ま、まあ、そういうのもアリか……」
俺もそれに同意せざるを得ない。
実際サツキのステータスは高いので、魔法や武術を使わなくてもある程度の仕事はできるだろう。
その時、向こうの方から声が聞こえた。
あれは確かウチの騎士団長の、
「今日は皆、よく集まってくれた。王国騎士団の誇りにかけて、この国の平和を守ろうではないか」
その言葉に皆が歓声を上げる中、俺はその場で固まってしまった。
理由は単純だ。その輪の中に、最愛の人であるリアの姿があったからだ。
彼女の姿はまるで精巧に作られた人形のように美しかった。
そして長い黒髪や華奢な身体、整った顔立ちに似合わない豊満な胸、くびれたウエスト、程よく引き締まったヒップなど、
それらの要素が合わさることで女としての魅力を引き立たせていた。
そんな彼女は普段の服装とは異なり、鎧を着用していた。
その姿はまさに凛々しくも美しく、周囲の目を釘付けにしていた。
「れ、レイ様っ、き、危険すぎます!」
俺は慌てて抗議するが、当の彼女は涼しい顔で受け流してくる。
リアは表情を変えず淡々と言った。その態度が妙に艶っぽく、見ているだけでドキドキしてしまうほどだった。
思わず見惚れてしまいそうになる自分を律して俺は言う。
「ちょっと待ってくれ!俺たちはどんな相手と戦うかも知らないんだぞ!? それなのに前線に連れて行くなんて無理だ!」
そう叫ぶと、パキラは首を傾げた。
彼女の仕草はとても可愛らしいものだったが、今の俺たちにとってはそれが逆に腹立たしかった。
(どいつもこいつも……)
そう思った瞬間だった。俺の体が突然光り始めたのだ。
「な、なんだ!?」
驚きながらも自分の体を確認する。
すると、なんとそこには女体の肉感が備わっていたのだ。
しかも胸は爆乳と言っていいほどの大きさで、お腹周りや腰回りもきゅっと締まっており、まさに男好きする体型となっていたのだ。
突然のことに頭が真っ白になる俺だったが、同時に股間に感じる違和感に気づいた。
恐る恐る下を向くと、そこにあるべきはずのものがなくなっていたのだ。
つまり今の俺は女の体になっているということになるのだが……、しかしそうなると次の疑問が湧いてくる。
何故俺が突然女になったのかということだ。
だがそんなことを考えている暇はなかった。
何故なら俺の周りにいた騎士達が次々と変化していったからだ。
彼らは口々に悲鳴を上げ、戸惑い、狼狽する。
そして、皆一様に女性へと姿を変えていくのだ。
そんな私は驚きを隠せず、逃げ出すのです。
逃げる場所は、世界樹ユグドラシルの森の中、ここは、エルフとダークエルフ、そして人間が共存する場所です。
そこに住む人々にとって私は危険な存在なのです。
ララは剣を抜き、襲いかかってくる敵を次々と切り伏せていく。
彼女は、相手の急所を確実に突き、一撃で仕留めていった。
その動きには一切無駄がなく、洗練されていた。
その姿はまるで舞っているかのようだった。
だが、それも当然である。
なぜなら、彼女の師が、最強の剣聖であるからだ。
そんな彼女が相手では勝ち目などあるはずがないのである。
しかし、彼女は諦めることなく立ち向かっていった。
ララは、レイと共に魔王討伐の旅をしている途中、魔界と人間界を繋ぐ門の前へと辿り着いた。
そこで出会ったのが、サツキである。
二人は意気投合し、一緒に旅をすることになったのだが、ある夜、サツキが悪魔族のスパイだと判明する。
しかし、彼女は心優しい性格で、敵であっても命を奪うことを嫌っていた。
そんな彼女に対して、ララはサツキを助け出すことを決意。
彼女と協力して脱出を試みるも、途中で見つかってしまい、再び捕われてしまうのだった。
その後、救出されたララはエルフ族やダークエルフ達と共に逃走を図るも、敵の幹部に見つかってしまう。
そこで、パキラが戦闘に介入し、敵を撃退することに成功するのだった。
しかし、その結果、ダークエルフ族とエルフ族の間に溝が生まれてしまうことになる。
そんな状態では、一緒に旅をすることはできないと判断したララは、一旦パーティを離れ、世界樹ユグドラシルの森で静かに暮らすことを決意した。
その夜、彼女は自らのステータスを確認していた。
そうするとそこには驚くべき内容が記されていたのだ。
(これが……私の能力なの?)
(確かスキルの名前は、誘惑術(チャームマジック)だったはずだけど……でもこれって……本当に使えるのかしら?)
半信半疑のまま、ララは、自分に宿った力を使ってみることにした。
そうすると、彼女の目の前に、突如、一人の男性が出現した。
それはなんと、レイだった。
(ええっ!? ど、どうして彼がここにいるの? まさか、私のスキルが発動したってこと?)
(そ、そんなはずないわ! だって私は今まで一度も彼に魅了を使ったことなんてないもの!)
そう思いながらも、目の前の状況は変わらない。
しかも驚くべきことに、レイの方も自分の意思とは関係なく動いてしまっているようだ。
(もしかして……このスキルって本物なの?)
そう思うと、彼女は試してみたくなった。
もし本当に自分の思い通りになるのであれば、彼の心を手に入れられるかもしれない。
そうすれば、レイとの関係も進展するはずだと考えたのだ。
そこで彼女は、早速行動に移すことにした。
レイに対して誘惑術(チャームマジック)を使うと、彼の表情は徐々に変化していった。
その表情からは、明らかに彼女に対する好意が見て取れた。
(やったわ! これで彼を私のものにできるのね!)
ララは心の中で歓喜の声を上げた。
しかし、その直後、ララは自分が重大な過ちを犯していたことに気づくのだった。
(ちょっと待って……これってもしかしてまずい状況なんじゃないの?)
そう思って慌てて能力を解除しようとするが、時すでに遅し。
レイは完全に彼女の虜になってしまったようだ。
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