第33話 クラスメート

 電車は私達の住む街の駅に着いた。これまでは程々に大きいと思っていたけど、今日、こうして昼下がりの駅前に着いてみると、何だかちっぽけに感じてしまう。

 駅前のバスセンターに着いた私は、運悪く、会いたくない顔ぶれに出会ってしまった。例の、席の近いクラスメート達。最初に、武藤ゆきなと藍原ユウヤの姿が見えたので、デートかな、付き合ってるのかな、なんて勘ぐっていたら、次に木嶋ルミと島本カズキの姿まで見えた。やっぱり夏休みでも同じ中学の同窓生同士で集まってるんだ。あきれるような、うらやましいような不思議な感覚。


 こういう時、普通なら目立たないように反対方向を歩くとか、軽く会釈か挨拶をして通り過ぎるとか、かな。でも私の身長ならバレないようにするのはちょっと難しい。微妙に挨拶して去ろうかと迷っていた。そんな時、藍原ユウヤの方から声をかけてきた。


「月島じゃん。月島も遊びに行ってたんだ」


 私が答えるより早く、木嶋ルミが棘のある感じで言った。「ほら、ゆきな。だから言ったでしょ? 心配するだけ時間のムダだって。こうしてモデルみたいなカッコして、モデルみたいな子と遊んでるんだから」


 私は自分の今日の服装をチェックしてみたけど、どう考えてもイオンで買った普段着だ。どこ見てるんだろ。でも、ゆきなが、このグループのメンバーが心配してたって事実は意外だった。


「そっか。心配してくれてたんだ。知らなかった。ありがとう。でも遊びに行ったわけじゃないから。ウチの父さんに変な疑いがかけられてるから、無実を証明するため、今日はいろいろな人と話をしに出かけたの。父さんの勤める中学校の卒業生と一緒にね」


「無実を証明するために?」


 これには、皆、驚いた様子だった。隣のセンパイが言葉を添えた。


「そうだよ。僕は中学時代、月島先生に三年部活で間お世話になっていて、それで無実を証明するのに協力しているんだ」

 高校生と思えない、大学生のお兄さんのような落ち着いた声のトーン。


「お兄さん、大学生?」ユウヤが訊く。


「いや、高校生だけど。大倉高の三年」


「へえ……。それにしても無実の証明なんてやっぱ月島はすげーな」


 ユウヤが感心したように、フニャッと笑った。

 カズキがそれに対して言う。


「でも警察も動いてるんだろ? 任せておけばいいのに。 もし真犯人がいたりしたら危なくね?」

 ゆきなも言った。

「そうよ。高校生が刑事みたいな真似、できるわけないじゃない」


 私はきっぱり言った。

「できるかどうかは関係ない。黙ってくよくよ考えているより、自分なりにやれる事をやってみるだけ」


 カズキは、この言葉に、うつむいて足元の地面に視線を向けていた。他の三人も。


「じゃあ、また登校日にね」

 私は四人と別れ、センパイと駅のエスカレーターに向かった。




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