第31話 ルーツを探すという夏休みの自由研究

「この院長夫人というのが君の思っている通り、お父さんにオレンジダイヤモンドを渡した本人……だと思う。彩城瑠璃子。本人は否定しているけどね」


「彩城瑠璃子さんにとって父はどんな存在だったんでしょうね。平野さんの話に出てきた看護師時代の同僚の人。せめてその人の見方が合っているような女性だといいな」


「実は僕がこの彩城家に取材に行ったんだ。残念ながら瑠璃子さんはすでに家を出て生活していたけど。その時、近所に昔の彼女について何か知っているような、話したがってるような主婦がいたんだ。女の人って意外と細かく見てるからね。今度、その家に行こうと思う。君も行かないか?」


「ええ、行きます。でもいいんですかね?」


「いいよ。夏休みの自由研究とでも言って取材させてもらえばいいよ。ルーツを探すとかさ」


「ルーツを探す?」


「間違ってないだろ?」


「まぁ……」

 

 にしても夏休みの自由研究なんて、この人は私をとことん子ども扱いしてるんだろうな。身長はあまり変わらないっていうのに。


「でもその前にお父さん関連で、ある人物について調べてほしいんだ。もし分かったら、その人の所へも同行してほしい」と平野さんは続けた。


「え? 誰のこと?」

 私は突然、不安になった。そんな警察のような、探偵のような危険な行為が自分にできるだろうか?


「君のお父さんの昔の友達だよ。そんな大事おおごとじゃないんだ。君んちのお父さんの実家に昔の年賀状がとってないかな? もしあれば、その中にイツキって名前の友人からのものが無いか、調べてほしいんだ。あるいは卒業アルバムでもいい。当時ならまだ卒業生の住所が載ってあったんじゃないかな」

 

「イツキ?」

 そんな事かとちょっとホッとした。


「お父さんから聞いた事ない?」


「ないですけど」


「ティユルで二十五年前に君のお父さんと一緒にバイトしてた少年らしいんだ」

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