第21話 クリスタルレイン
その店はすぐに見つかった。路地に入っていった三軒先に。
この辺は、それまでの年長者向けの下町といった風情からお洒落な雰囲気の街に変わっていて、ちょっとスタイリッシュなカフェもあったりする。
「ここ……よね?」
ミネギシとは、見た目からして全く違う。ミネギシの社長さん達が「邪道」と言った意味が分かる気もする。店の正面には“Crystal Rain”と書かれた空色の看板が掛かり、下に丸っこいゴシック体の文字で「あなただけのジュエリーを見つけるお店(800円〜)」と書かれてある。その横にあるガラスケースにいくつかのアクセサリーが飾られていた。
ふんわりとした白の照明に照らし出されているアクセサリー達。幻想的に輝いていて、この照明は本当に効果的。一枚の絵みたいで、それでいてそこにあるアクセサリーは、それぞれ違う個性で、身に付ける人の魅力を引き立てるだろうデザインだ。
青と緑の細いジュエリーを組み合わせた爽やかなネックレス。すごく小さなルビーを花束にしたようなフェミニンなネックレス。そしてミネギシにあったのと同じシトリンは、一粒だけのネックレスになっていて、横に輝く緑と白の小さながキラキラが効いている。あれはダイヤモンドの模造だよな。
自動扉が開くと、店内に足を踏み入れた。
そこはミネギシとは違う世界で、どちらかと言うと私のテリトリーに近い。雑貨屋さん。さっき見たガラスケースの中のアクセと同じような商品が並んでいるけど、めちゃ安だ。そして石自体もガラスのボウルに盛られて売られている。ピンク色、水色、薄茶色、ペパーミントグリーン…と様々な色が店の中にあふれている。
また、オレンジ色の石をいつの間にか眼で追っていた。店のオーナーと思われる、長い髪の女性が奥から現れ、私に挨拶した時に。
「いらっしゃいませ。何か、お探しですか」
「いえ、私は……」
私はなぜか言葉に詰まった。とても整った顔立ちの人だ。センパイが、後を引き継いだ。
「僕達はこのお店を経営している方に会いに来ました。ここにいる月島菜々さんのお父さんを知っていると聞いたので。僕は月島さんのお父さんの教え子で、宮田璃空と言います」
クリスタルミヤコはその情報に驚きも見せず、微笑んでいた。
「あなたが月島君の娘さんなのね。はじめまして」
「はじめまして。月島菜々と言います」
店内には若いカップルと外国人らしい若い女の子二人連れ.そして女子高生と思われるグループもいた。クリスタルミヤコは、作業場のようなエプロンをかけたの中年の女の人に他のお客さんを任すと、店の壁際にあるテーブルの所へ椅子を運んてきて、私達に勧めた。
「来る事は、サキちゃんから前もってメッセージが入っていたので知ってたのよ」
仕事中にも関わらず、メッセージを送るあたり、サキちゃんってやっぱりナカナカの人。
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