第12話 まるでデート

 着ていく服に悩んでいた。初めに考えていたのは、白のパンツルックにマリンルックのようなボーダーのTシャツと空色のオーバーブラウス。でも初めての相手に、しかも社会人の記者に会うのに、あまりくだけ過ぎた格好は印象が良くないだろう。

 結局、細い縞のシャツとベージュのコットンのロングスカートにした。

 何にせよ、私は目立つと中学の頃から先生達にまで言われていた。背が高くて、手足も長くて、眼はじっと見つめられると怖いと言われるくらい眼力があるし。だから目立たないくらいの格好でちょうどいいんだ。

 でも付き合ってくれる璃空センパイの事を考えると、せめて少しでもオシャレしたかった。いつものポニーテールを、紺色のレースのリボンで結ぼう、そう決めた。以前、雑貨屋さんで見て、一目惚れしたリボン。取っておきの時にこれで髪を結びたいと思って買った。

 本当はスカートも、もう少し可愛い、ヒラヒラしたのにしたかった。でもそうするとスニーカーじゃおかしいので、サンダルにしないと。そうすると、ヒールの分、小柄な璃空センパイより高くなってしまう。

 でもこんな風に着ていく服を考えるのって、まるでデートみたいだ。いやいや、違う。大事な事を聞きに行くんだから。


 璃空センパイが、私の代わりに週刊レーベンの編集部に電話してくれたのだった。


 編集部では、担当者が私、月島菜々本人に替わるよう、言った。そして学生証等の身分証明書持参なら、同じビルの中の喫茶店で担当者が話をするとの事だった。


 待ち合わせの駅の改札前に五分前に行ったにも関わらず、センパイはすでに来ていた。


「ごめんなさい。待ったんでしょ?」私が言うと、「ううん。好きで早目に来ただけだから気にしないで」とセンパイは相変わらず涼しい声で言う。

 センパイは紺色のポロシャツで、今日の私の服装に合っている。

 うん、やっぱりこれはデートっていうもの、そのものじゃないかな、とあえて錯覚に陥ってみる。

 

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