第8話

【アカデミー:講堂】


エプソム・トーナメントが終わり、学園の熱も冷めてきた頃。

北半球の中緯度ではそろそろコートを着始める時期であるが、一年を通じて安定した気温のコロニー内では変わらずシャツ一枚で過ごしている。

「来月末はニューイヤーホリデーで、二月はクリサンセマム・チャンピオンシップ。十一月のイベントって何があった?」

「……試験」

「あぁ……」

講義が終わったばかりの講堂で、アキラ・ユガワラとヴァンセット・ツィナーが机に突っ伏した。

デイル・ハラルドソンはそれに構わずテキストをバッグにしまい込む。

「次の講義は格納庫だ。急がないと間に合わないぞ」


席を立つ。しかしその前に立ちふさがる人影。

「重点育成組はお忙しそうですわね」

「これはこれは。学年四位のヘレン・マクスウェル嬢。ご機嫌のようでなにより」

「学年主席様に覚えていただけるとは、光栄ですわね」

その人影は主にミシェル・ラングレンに注目しているようなので三人は見捨てて準備を続ける。班で一番慈悲深いアキラはミシェルの鞄も用意しているようだ。

豪奢なドリルスタイルのお嬢様は、L1最大のコロニー、ビッグアイの市長であるマクスウェル侯爵家の令嬢。ダンスのお相手は月のラングレン侯爵家嫡男に押し付けるのが正解だ。

「アンタたち、アレおいて先に行くの?」

「下手に無視すると後に響くわよ」

同じく重点育成組のズオ・シェンとコヨーテ・アリマはそれぞれマルドゥックと台南空の関係者であり、グリンヤルティのデイルと同様、社交界でヘレンと顔を合わせる立場にある。

一応貴族関係者のヴァンセットは気にした風でもないが、ミシェルを待つつもりではあるらしい。

「わざわざ衆目の前で、今をときめく月の王子に喧嘩を売りに行くか?」

「あら、地上の若旦那は先週の選挙速報も見ていないのかしら?」

デイルは端末で軽く検索する。市長交代の時期ではないはずだが。

「市議会選挙で陣営の有力者が敗北してるのよ。アジア連邦筋がその分成長してるってわけ。TPUはL1の基盤が弱いから影響は無し」

先のエプソム・トーナメントの結果、アジア連邦主席の家系のハオ・イーシンが二位となったことでアジア連邦系の株価が上昇。一方L1に基盤を持つ選手が結果を残せなかったせいでマクスウェル侯爵家の陣営は勢いを落とした。

「いくらトーナメントとはいえ、それだけで政治がひっくり返ることはあり得ない。東海岸とア連の政治闘争はL1では日常茶飯事だし、悪いことに市長派の財務が不祥事を起こした直後だ」

ヴァンセットが補足する。

そうなんだ、とよくわかっていなさそうなアキラ。

「お嬢がわざわざこの場で突っかかってきたことにも、そこに意味がある。はたから見ればバカみたいだろう?あれは政治的に追い込まれて後がないお嬢様って演技だ。囃し立てるやつと冷静に距離をおくやつをここで見定めるんだ」

饒舌に語るのはガルシア・ベラスケス。

「通常カリキュラム組は、そろそろ足切りの時期だからね」

ヨナタン・ドレイファスがそっと補足する。

足切り、つまり成績が一定以下の学生は三冠の予備競技への出場権をなくし、実機訓練の機会も減る。特にヘレンは座学は好成績でも実技が壊滅的だ。口さがないものたちは没落とみて好き放題囀り始める。

「あるいは、アカデミーと組んだ茶番ですらあるわけだ」

「そういうこと。不言実行のアンタなら大丈夫でしょうけど、そこのバカは気を付けなさいよ」

ズオに指をさされたヴァンセットが後ろを振り返る。

寡黙に立っていたクウェト・バックマンが後ろを見る。

移動しようとしていたガスパール・マホーニーがつられて後ろを見る。

同じく移動しようとしていたツバメ・テシガワラが後ろを見て、そこには壁があった。

振り向いたツバメがガスパールを見て、ガスパールがクウェトを見て、クウェトがヴァンセットを見て、皆の視線がコヨーテに向いた。

「な、なによ!」

「気を付けろって、誰かが言ってたぜ」

「アンタねぇ!」

「まったくお似合いね」

「誰が!」

ズオの揶揄いが飛ぶ。コヨーテは本気でキレているが、この二人にとっては日常の掛け合いなので誰も気にしていない。


ヘレンとミシェルの嫌味の応酬もよくあることなので重点育成組は誰も気にしていないが、デイルが注意深く伺うとヘレンの背後で彼女を炊きつけた気になっている何人かが見えた。

それを遠巻きに見る連中の目の色を見れば、態度も見て取れる。

「……政治は嫌いか」

「……好きではない」

「ならいい。好悪と得意不得意は別だからな」

茶番に巻き込まれて逃げてきたクウェトがそっと話しかけてくる。あまり会話を好まない彼だが、デイルとは話がしやすいようだ。

「まぁ、話半分に聞くといい。この場で実権を既に持っているのはミシェルやヘレン、他数名くらいだ。親の七光りで入学した子供が政治ごっこをしたところで五年後には体制も変わっているさ」

「五年後?」

クウェトは黙って教室を出る。

ふと時計を見れば、移動するにはぎりぎりの時間。

「おい、そろそろ行かないと間に合わないぞ」



【アカデミー:宿舎】


十一月は問題なくスケジュールが消化された。

ヘレンがそれ以後突っかかってくることもなく、通常カリキュラム組は足切りに戦々恐々としながら年末のテスト期間を迎える。

またしても二十八班の勉強の面倒を見つつ、アキラはなんとか上位層とギリギリ呼ばれるだけの成績を残す。

「やったじゃないか、アキラ」

デイルがよくやった、とばかりにチョコを投げ渡す。

「これで来年は五十番くらいか?」

それを見たヴァンセットが面白がってクッキーを投げ渡す。

「実習で大きく加算される。三十番はいけるだろう」

とはいえ座学でも実習でも、ライバルの五班は皆優秀であるし、ヘレンも座学だけはミシェルに次いで三位だ。政治力を持たない彼が得られる席には上限がある。

ミシェルはキャンディを投げ渡しながら分析した。

「それで、学年次席のミシェルさんは今後の見通しをどう考えていらっしゃるので?」

「くっ……殺せ……」

ヴァンセットの揶揄に本気の屈辱を感じている彼は、トップの座を失っていた。

「彼女はボクの努力を上回った、それだけだよ」

座学で総合一位になったのは二十八班のツバメ。他の三人が足を引っ張っているように見られているが、彼女自身は一年次で二十三番の成績を誇る。

人類圏の同世代、そこから選ばれた三百人からさらに上位を競うのだ。上位三十人は家格の差で決まると言われるほど、彼らの差は大きくない。

「来年の席次を決めるのは二月の試験だ。クリサンセマム・チャンピオンシップの直後に行われる座学と実技。そこで取り返す」

立て続けにキャンディをアキラに投げつけた彼は、そっと寝床の戸を閉めた。


努力はしている。当然のことだ。

努力していないものが月の王子でいられるだろうか。

消灯時間後もブースの中で自習している。見回りの教官もブース内で自習する分には黙認してくれる。

衝立の向こうでもテキストをめくる音。それが三つ聞こえる。

生まれつきの才能、日々の努力、そして運。さらに仲間とのめぐり合わせ。

どれを欠いても頂点に立つことはできない。

そうやって全力を出したところで、望む結果が得られるとも限らない。

ライバルは常に自分以上の努力をしているのだ、そう言い聞かせる。

ラングレン家に生まれ、将来を確約された身だ。たとえ怠惰であってもそれなりの席は用意されるし、誰もが自分の歓心を惹こうと寄ってくる。

だがそれを、彼自身が許さない。この時代の貴族という特権は宗教的権威によって与えられるのではなく、市民の委任によって生じるのだ。宇宙開発黎明期に先頭に立って活躍したからこそ、時代錯誤な貴族という政治的階級が存在できたのだ。

それを彼は兄と慕うヘンリー・バージルに諭されてここにいる。

テキストをめくる。

現代社会を構成する国家連合と大企業の一覧がそこに並んで記されている。

コロニーと地上では社会制度が違う。感覚としては理解しているが、改めて文書にすると酷く面倒な時代だ。

そして月の南極、シャクルトンポリスはそのどちらとも違う貴族都市。

人の上に立つ以上、人の世を理解しなければいけない。

息を一つ吐き、ココアを一口含む。口寂しさにキャンディを探すが、そういえばアキラに投げつけて遊んだのだった。


デイルは論文をめくる。

企業の創設者一族に連なる彼だが、努力を怠ったことはない。

兄姉はすでに社の要職についており、彼も卒業後すぐに同じような働きを求められる。

手にした論文は宇宙時代の言語論。

いわく、人類が宇宙へ進出したごく初期、共通語はアメリカ語だった。簡易で誰にでも理解できたからだ。次に中国語が混入した。中国人労働者が大勢月面開発に参加した結果だ。当時のアジア連邦に行き詰まりを感じた若者たちが宇宙に活路を見出し、低重力の月面開発は宙に浮かぶL1開発へ弾みをつけた。この時代のピジン語をファースト・リンガフランカと呼ぶ。そこからクレオール化した言葉が主にL1で使われるポリス・フランカ。日本語や上海語、台湾語が混入したものがL5のノア・フランカ。月やL2ではファースト・リンガフランカが洗練されてルナ・フランカとなり、まとめて英語の方言として扱われている。

さらにページをめくる。

言葉は思考の起点となる。母語にない物を脳は思考できない。果たして凍土に暮らす少年が南洋の森の植物の実際的な分類をイメージできるだろうか。毒草か薬草か、文化と生活が求めれば言葉は生まれ、無関係の言語がそれを訳すことはまずない。

翻訳という行為には、異言語で思考した者が彼の言葉でどう感じたかを取り込む必要がある。いずれ多国を渡るデイルは、その細かな差異を汲み取って本社に届ける役を得ることになる。

わざわざ言語論から漁る律義さは彼の堅物さの表れでもあるが、堅実さでもある。

座学の試験をトップ層には届かなくとも十分上位の成績で終えた彼は、ひたすら実学の知識を集めていた。


ヴァンセットはニュースペーパーを漁る。画面だけでは足らず、壁にも投影された記事は各国各企業各勢力の動静ーーー人事/株価/新製品/工場建設/食料生産等々。

公開されている情報を物流と金融の流れに沿って並べれば、多くのことが見えてくる。

今重点的に探しているのは先々月に大学機関から公開された新設計のLeフレームについて。

曰く、地上での運用を目指し多脚化するという。

Leフレームの操作は、神経を専用スーツによって延長し、身体の延長として機体を動かすものだ。コックピット内で煩雑な操作を要求された初期のLeフレームと比べ、神経接続の実用化によって宇宙開発の効率は大きく向上した。しかし、人の身体として動かす都合、人の身体から大きくかけ離れた姿を脳が受容できない。

あるいは、逆さに映る眼鏡をかけ続けるとある日脳が逆像を正として認識するように、多少の負荷をかけてでも多脚に接続させ続ければいずれ慣れるだろう。

しかしそれでは扱えるランナーが極端に限られてしまう。また、多脚ランナーも日常生活に支障をきたすことになる。

いわく、新型はその欠点を克服したという。

ランナーとLeフレームの間に挟みこまれた装置が、機械からフィードバックされる違和感を除去するらしい。

つまり、操作に必要な触覚ともいうべき情報が大きくロスされる。

もっとも地上では無重力空間で行うような高機動が必要とされないため、作業用汎用重機として有用性があるだろう。もちろんバックホウやラフタークレーンのような従来の重機のほうが価格でも操作の習熟難易度でもLeフレームを凌駕するのは言うまでもないが。

とはいえ副腕はすでに実装された。多脚も技術的に解決されていくだろう。

片手間に集めたL4派の情報をBotに整理させつつ、ヴァンセットは関連特許を確認していく。


アキラはまずまずといった試験結果を見返しつつ、明後日の予定を確認していた。

ニューイヤーホリデーは光節ほど長くはないが、それでも多くの学生が帰省を予定していた。

三人もそれぞれ帰るという。アキラもプリヴォルヴァ3に帰るか迷ったが、叔父はまだ火星に出稼ぎ中。プリヴォルヴァ3で労働という気にもなれず、しかしL1や地球に行くほど懐に余裕がなかった彼は、アカデミーに残ることにしていた。



【アカデミー:格納庫】


故郷に帰る三人を見送ったアキラは、二十八班のガスパール、ヨナタンとともに格納庫に来ていた。

なおL5出身のエルロイは帰省している。

「シミュレーションモード、起動」

二人も同様にシステムを立ち上げた。

頭上に見えるのは小さな星のきらめきと、視界の下半分に青い星。

〈シフ・シャオ、演習宙域に入ります〉

横に現れた機影=レンジャー。

その他、AI管制の機影が十ほど浮かぶ。

〈これが、低軌道〉

ヨナタンが呻く。その機影は徐々に下がっていた。

〈重力に引かれてるわよ。高度を維持して〉

〈はい、先輩!〉

クリサンセマム・チャンピオンシップ。地球低軌道を一周する三冠最後のレース。

ナガサキの二位、エプソムの四位であった彼女が、最後に狙える冠。

そしてアキラたちが来年出場するべく努力しているレース。

〈ルールは簡単。地球一周してここに帰ってくること。経度0、緯度0、ギニア湾ヌル島上空500キロがスタートライン。最低高度は地上100キロのカーマンライン。脱落宣言は300キロあたりで出すのが慣例よ。カーマンライン以下だと低軌道軍も回収できないし、Leフレームだと単独で大気圏突入は不可能だからね〉

デブリに遮られる直線16キロを駆け抜けるナガサキ・10マイルと違い、デブリは少ないが約40,000キロの長丁場のレース。特例として推力制限をCraft6=推力100まで解除されるお陰で、選ばれた十八機のLeフレームは時速にして20,000キロに達する速度を発揮する。もちろん燃料消費が激しい最高速を発揮できる時間は短く、増槽を使い切りながら加速のタイミングを狙い続ける二時間が繰り広げられる。

さらに途中では戦闘が発生する。武装を外して軽量化を図った機体が撃墜されて脱落している程度には激しい戦闘だ。レーザーで推進機を後ろから焼かれることで機体の爆発も起こる。

〈さらに四年前の事故では予想外のデブリ雨のせいで十八機中十機が損傷、四機が墜落。特に中段グループは全滅だったわ〉

デイルの姉が優勝した年だ。近年で一番大きな被害が出たが、さすがに出場者は選ばれた十八名。低軌道軍の救援もあり死者は出ていない。だがかつては多数の死者を出た年もある。

〈アセンが終わったらまず一本行くわよ。トイレはちゃんと済ませてきた?〉



【グリンヤルティ社:シェラン島工場】


北欧同盟を構成する一国家、デンマークの首都コペンハーゲンがあるシェラン島。

暖流のお陰で比較的暖かい地域だが、今年の冬はだいぶ寒いようだ。

デイルは自社工場の視察に来ていた。

ランドグリーズの脚部が並び、大型クレーンに吊るされた腰部と接続されていく。

「そういえば、シフ・シャオの出身はこの隣のフュン島出身らしいですよ」

チノパンにセーターを着た、オルトロス・グループの男が隣にいる。

「......彼女がグリンヤルティ社の支援対象ではないのが残念ですね」

「今のところ人気は八位。二度とも上位に食い込んできているが、レンジャーでクリサンセマムはきついだろうという評価です」

「推力制限解除があってもレンジャーは高速域が弱いですから。推進系もセンサー系も、無重力空間でのCraft4仕様で設計されています。このレースで一番勝ち目があるのは……」

「うちのランドグリーズ。地上での限定的な運用すら可能な大出力型。さらに大型の機体は増槽と兵装と装甲をすべて備えることができる。細かい回避軌道が求められるナガサキと違い、ひたすら前進しつつ撃ち合うクリサンセマムはランドグリーズにうってつけです。さらに重装甲のお陰で大気圏に落下しても耐えられる生存性。低軌道軍に正式採用されているのもそのためです」

今製造ラインに乗っている機体も、いずれ宇宙に打ち上げられるのだろう。

労働者たちは特別深刻な顔をするわけでもなく淡々と職務をこなしている。

重機を操作する者、工具を手に機体に張り付く者、それらを監督する者。

工具や資材が散らばっているようなことはなく、壁の無事故記録はそろそろ二年になろうかとしていた。

概ね状況は良い。このラインも明日には休暇を迎えて閉鎖される予定だ。

デイルたちに気づいた監督が手を振って挨拶し、再び業務に戻る。

「いい職場だと思いますよ」


工場を出てコペンハーゲンへ、さらにオーレスン・ブロンを渡りスウェーデンに。デンマークとスウェーデンの間の海峡を渡る海底トンネル+鉄道道路併用橋は渋滞することなく流れている。

橋から海峡を見下ろせば、何隻もの船が行きかっていた。古くからバルト海に向かう航路の要衝であり、今でも北欧同盟の大動脈となっている。

今通過している貨物船もグリンヤルティやH&Tの荷物を運んでいるようで、見覚えのあるコンテナが載せられていた。

デイルは二次元方向にしか進まない機械の、原始的な操作系を完璧に制御していた。

相変わらずオルトロスの男は横で居眠りしている。

次はおよそ三百キロ先のカルマル。ここで兄が待つという。

ラジオから流れるニュースでは次の議会で提出される法案について解説されていた。曰く、北欧同盟内に再び労働力として下層民を呼び込めないか、という物だそうだ。街頭アンケートの結果は九割が反対。政府はこの結果を受けてカルタヘナ・モデルの開発を再開するのではないか、と分析されていた。

「そうだ。ミス・シフのライバル。ミス・パウラにはお気を付けを」

寝ていたはずの男が、おもむろに口を開いた。

「……南欧出身で、今はL2だそうだが」

「ええ。そして」

「L4残党派の支援を受けている」

「ご存じでしたか」

「まぁな」

「ではヴァンセット・ツィナーもL4残党派だということはご存じで?」

「……」

「正式に開発されたカルタヘナ・モデルに、ツィナーシリーズというラインアップがないことはご存じでしょう。彼ら人造人間は何種類も作られ、規格外とされたモノが数多く廃棄されたことは多少見識があるものなら誰もが顔を背けている事実に過ぎません。一方、ドクトル・ツィナーは過激な設計思想からL2を追われ、開発が始まった当時のL4に逃れたことは知られていない」

確かにデイルが知るヴァンセットは宿舎に規則違反の通信機を持ち込んでいたり、裏の情報に通じていたり、L2のジオローパ家も斜陽にも関わらず地位を保っていたり、怪しいといえばとても怪しいところがある。

「ご学友を疑うのは気が進みませんか?」

「いや、敵になるのなら躊躇はない。だが今はまだ学友だ。あいつがいないと俺たちは成績を残せない」



【L1:天都東父】


「ボクは今夜も戻れない。ちゃんと大人しくしているんだぞ」

返事を待たずに通話を切る。

端末をジャケットの懐に入れ、襟を正してメインホールへ戻ったミシェルを待っていたのは、アジア連邦のとある企業関係者たち。あるいは、水虎会関係者とも。

「すみません、お待たせしました青叔父」

「構いませんよ。ミシェル先生」

赤を基調としたデザインの店内、その一番奥の個室。

ミシェルは対面に座る老人に一礼して椅子に座る。

彼が席に座るのを見計らったように出てくる料理たち。前菜には棒棒鶏、それからフカヒレのスープ。

箸の使い方はアキラとヴァンセットに習ったので心配ない。少なくともこの場で恥をかき、見下げられるような無様は晒していないはずだ。

「とても美味しいですね」

「でしょう。是非ご友人と一緒に食べに来てほしい」

「是非とも」

偽りない本心だ。美味しい中華料理に舌鼓を打つ。

続いて主菜のエビチリ、鶏とカシューナッツの炒め物、牛煮込み、ロブスターの香り揚げが続々と出てくる。

刺激のある香り、香ばしい香り、脂の香り、ハーブの香り。地上と比べて脱臭されたコロニー内で、これほど華やかな香りを楽しめる機会は多くない。

L1に浮かぶコロニー群の中で、ビッグアイに継ぐ規模のコロニー、天都東父。

アジア連邦資本で建設され、ビッグアイ建造までの間は最大の規模を誇った。宇宙開拓の長い歴史の中で順次拡張され、迷宮めいた複雑さも備える天都東父を彼が訪れているのは、無論中華のフルコースを堪能するためではない。

余人の寄り付かない奥まった個室で話されることは間違いなく政治的な内容であり、相手は青叔父=天都系列コロニーの裏社会の有力者。

ミシェルもただの学生としてではなく、月とL1に利権を持つ一権力者としての会談だーーー傍から見れば老人と孫のようであるが。

「さて、何から話したものか」

ラングレン家が持つ権益も、ミシェル個人が持つ権益も、L1のポリス側に集中している。出資している企業が天都に支店を進出していることも多いが、例えそれらが水虎会と問題を起こしたとしてもミシェルが出張る理由にはならない。

「こんな老人の夕食に付き合ってもらったんだ。なにか実のある話をしてあげなくてはね」

「若輩の身にとっては、どのようなお話でも勉強になります」


ミシェルがヘリオトロープを飼っているビッグアイのマンションで彼女の新曲を聞いていた時、連絡があった。ラングレン家を通さず、直接のコンタクトだ。

裏社会の重鎮からのご指名を断ることもできず、急ぎ東父までやってきた。

放っておかれたヘリオトロープは今頃裏路地で通りすがりのオーディエンス相手に新曲を披露していることだろう。心配でもあるが、ミシェルよりタフな彼女のことだから心配するだけ損でもある。

さて、とミシェルは眼前で歯に詰まったカシューナッツの欠片を爪楊枝で取り除いた老人に意識を向ける。

「勉強といえば、班の皆は元気かね」

「はい。皆健康で、元気よく教官に噛みついております」

「ははは、若いうちはそれくらいでないと。私も、学生時代は指導教官を良く困らせていたものだ。ところで君の班員は、確かグリンヤルティの御曹司と、ジオローパの少年だったな」

老人の瞳の奥がすっと細くなった。

「十四班と、五班。編成に仕掛けがあったことには気づいているかな?」

「はい。意図的に集められたようだ、とは疑問がありました」

「ならば、本来アキラ・ユガワラの席はツバメ・テシガワラが選ばれるはずだったということも気づいているだろう。そして、アカデミー運営陣の間でも派閥争いがあることも」

ミシェルは明確な頷きを出さず、どうとでもとれる表情を浮かべる。

「聞いたことがあるだろう。オケアノス派とテティス派の主導権争いを」

「ゴシップの類として、ではありますが」

「あれは与太ではないよ。正真正銘の対立で、人類圏の経済方針を決めるものだ。未来ある君たちに言うのは残念なことだが、人類のリソースは有限だ。火星進出か、領土拡充か。両方やることはできない」

「未開の火星や木星を開拓しても投資に見合ったリターンを得られるとは限りません。しかし現状のコロニー整備だけでは利権の奪い合いになります。そして地上を開発するのなら、宇宙開発で棚上げされていた上層と下層世界の対立が再燃する」

分かっているようだな、と頷く青叔父。

「ならばそのあたり、少し話そうじゃないか」



【L5:シンガポール・ノア】


L5系コロニーの首都、行政府最上階のカフェにヴァンセットは来ていた。

ビッグアイほど大きくも、東父ほど複雑ではないシンガポール・ノアは、L5の行政と経済の中心地である。TPU政府と連合に参加する各政府、各企業がコロニー建造以来緊密に連携しているおかげで維持されている風景である。

「お陰で犯罪発生件数も人類圏で指折り低い安全な都市でやんす」

「犯罪者を都市に入れないことがその秘訣、と」

「TPUは北京やDCとは違う思想でコロニーを経営しているでやんす。環太平洋という広大で面倒な地域を統括するには、ちょっと高いところから見下ろすのがいいんでしょう」

向かいの席でレモンスカッシュにストローを突き刺した男は、全てを見下したようにつぶやく。

「TPUは全加盟国が火星開発に合意しやした。北欧と中欧は慎重派。南欧は意見がまとまらず、東海岸とア連は利益次第、って状況でやんすね」

「面倒だな」

アイスティーにガムシロップを垂らす。ヴァンセットがこの男と連絡を取るようになってしばらく経つが、奇特な言動には今も慣れていない。

レモンスカッシュに次々とレモン果汁を淹れた黄色い液体から漂う酸味は、席を挟んだヴァンセットの嗅覚までしっかり届いていた。

宇宙では気密や気流の影響で味覚が地上よりも鈍る。味付けはそれを加味して濃い目になっているのが常だし、地上に降りた宇宙人は極端に濃い味を好むともいわれているが、さすがにこの男は味覚障害持ちではないかと疑っていた。

「いずれにしろ、一年二年の話ではありやせん。それよりも新標準機のほうが先でしょう。お決めになられましたか?」


L4残党の動きを探っていたら、気づかないうちに行政府の尻尾を踏んでいたらしい。

アカデミーに持ち込んでいた通信機の周波数もいつの間にか割られていた。

突然の通信に身構えたヴァンセットだが、行政府は意外にもフレンドリーであった。

曰く、来年勝たせてやる。だから力を貸せ。

行政府はTPU評議会に繋がっている。アカデミー一年次で上位を争うヴァンセットを取り込めるのならば、新型機くらい融通しようというのだ。他にも思惑はあるはずだが、卒業後の就職先としてTPU評議会というのは悪くない。出世コースというやつである。

エプソム・トーナメント前にはガイセイとアマツカゼの情報も貰っていた。

TPU内ではユキカゼ、アマツカゼを擁する明石工房が最大手だ。L5の標準採用機で、ヴァンセット自身も使っている。だが他にも数社、メーカーがあった。

コヨーテ・アリマを支援する台南航空開発、地上作業用フレームを開発するAUKLAND、航空機に強いS.T.Rxなど。

来年の競技シーズンに向けてヴァンセットには各社からカタログが送られていた。これでヴァンセットが結果を残せば、次期採用という栄誉に近づくわけだ。

同様の接触はコヨーテにも行っているだろう。彼女が台南空の製品を選ぶことは想像に難くない。

「とはいえ、カタログ値と実績が備わっているのは明石か台南空。そしてアマツカゼは既に一勝している。とはいえコヨーテが大人しく首輪をつけられる生き物かといえばそんなことはない」

「……なるほど。ではそのように手配いたしやすよ」

「お願いします」



【アカデミー:食堂】


「あはは、流石に一日に二回はきつかったかな?」

シフはあっけらかんとしているが、地球を二週してきたアキラたちはテーブルに突っ伏している。

シミュレーターで表示される競争機たちは演算処理の都合で挙動が甘い。過去の勝利者たちの行動パターンを取り込んでいるとはいえ、アキラはもちろんガスパール、ヨナタンともに実力のあるランナーだ。AIの動き程度すぐに対応できる。

しかし問題はシフであり、自分たちだ。

AI機を囮に背後から迫り、頭上から撃ちおろして重力の井戸に落とそうとしてくる。

この軌道は特にシフが慣れており、ガスパールはこの四日間で五度は墜落した。

三度墜落のヨナタンはどうにか身を起こして味気ない茹で野菜にフォークを突き刺すが、口に入れたところで動きが止まった。

「……不味い」

二度墜落のアキラはミンチを固めて焼いただけのタンパク質にソースを溢れるほどかけてライスと一緒にかき込む。

茹ですぎのヌードルをつまらなさそうにフォークに巻いたシフは一度も落ちていない。

「位置取りが大事よ。可能な限り武器を減らして、撃たれないように。でも撃つときは一発で確実に。常に全球を見張って、焦らないこと」

弾切れのところを袋叩きにされたアキラは顔をそむける。

「常に誰かの射程にいると思って、二時間の間集中を切らさないこと」

注意散漫になったところを落とされたヨナタンが顔をそむける。

「加速のタイミングを計って、常に燃料計算を続けること」

ガス欠になったガスパールが顔をそむける。

かくいうシフは一度も落とされず、常にトップでゴールしていた。

「そりゃ、私が一体何回このシミュレーションしてると思ってるのかな。AIの動きなんて見切っちゃったよ。そこに乱数を持ち込んでくれる君たちには感謝してるんだから」


翌日。二年次の学生がシミュレーターを予約していたので暇になった三人は、コロニー内を散策していた。

電動カートに乗り込み、港湾部まで走る。

彼らが宿舎、講堂から格納庫や港湾部に移動するとき、普段は電動バスを利用する。定期便がコロニー内を走り、学生や職員たちを施設の隅々に送り込むのだ。

電動カートはバスを補完するように用意されたヴィークルで、学園関係者ならば誰でも使える。操縦もLeフレームに比べればはるかに簡単だ。

「もう人が少し帰ってきたら、バーベキューでもやるか」

「それは良いな」

港湾部の傍には街がある。ポリス・ハルディンの中に暮らす職員、企業関係者たちが生活する街だ。コロニー内の容積の一割程度を占めるこの街に、普段学生が来ることは少ない。

禁止されてはいないのだが、学業が詰め込まれているのと、宿舎から距離があるためだ。宿舎内の売店で大概のものが揃うようにできているため不便はない。

それでも、時には遊びに行きたいものだ。

円筒の中心に向かって伸びるアパート群はワンルームから3LDKまであり、企業職員たちの単身赴任を、あるいは家族連れでの生活を支えている。

庭から上がる煙に脂の匂いが鼻をくすぐる。

「塩豚か。そういう香りだ」

「シンプルに焼いたズッキーニって美味しいよね」

「チーズも捨てがたいな」

企業職員は格納庫側に食堂を持っている。

学生も利用できるので、実習中はアキラたちもよく利用する。実習後も整備などと口実を作って夕食まで食べていくことが多い。

タイミングが悪いと、アカデミーの食堂で食べる羽目になる。

「安いのは良いんだけどね」

「舌まで安くなってしまうのはいただけない。せっかくマシなところに出てきたんだから」

ポルトガルの片田舎出身のガスパールは、地元で一番の成績だったことから宇宙に出るチャンスを得た苦学生である。

「配給食よりも味が酷いって、相当やばいよな」

「最近さらに酷くなったよね」

学生らしくファストフード店に入る。

ここでは地球とも、月面とも、L1とも同じ味の規格化された味が食べられるので学生が好んで利用する。値段が安いのも苦学生たちには魅力だ。

チキンレッグにかじりつき、炭酸飲料を喉に流し込む。

ポテトをまとめて数本摘まみ、またチキンを齧る。

「なんで同じコロニーなのに、食堂は不味いんだろうね」

「食堂の管理会社が経営難で、まともな食材を仕入れられないとか?」



【L1:ビッグアイ】


「知ってるよ、コバヤシ食品加工。正式にはコバヤシ・フランクリン食品研究開発合同会社だっけ。H&T傘下だったよね」

「詳しいんだね」

「まぁ、縄張りには敏感じゃないとね。他所の賭場を知らずに荒らして知らずに消されるのはこの業界よくあることだし」

ヘリオトロープはブリトーを齧りながら、ミシェルお気に入りのソファに寝そべっている。

その汚れた手がソファの革を汚す前に、彼女の手を取ってウェットティッシュで拭う。

「苦しゅうないぞ少年」

「……やっぱこんな女拾うんじゃなかった」

「生憎クーリングオフ制度は形骸化してるんだよ」

年上の音楽家が書き散らした譜面を拾い集め、その下に隠れていた食べかけのまま忘れられたヌードルに足を突っ込んで悲鳴を上げたミシェルは、数十度目の後悔のため息を飲み込んだ。

「中華は美味しかった?このシンデレラ・ヘリオトロープを置いて美味しいものを食べに行くなんて、いつか天罰が下るんだから」

「裏社会の重鎮との会食で、味なんてわかるわけないだろう」

「それくらいでビビるなんて、ケツの青い坊やだね。どうせ水虎会の狙いは外宇宙開発でしょ」

何気なく投げられた言葉に一瞬身構えるーーーどうしてそれを。

「それくらい簡単だって。天都とポリスでひしめくL1はもう開発限界。古いコロニーをバラして新造するには、いろいろと権利が絡み合いすぎてるし、コロニー設計も行き詰ってるらしいじゃん。ここは火星のラグランジュ点にいっちょ建ててみて、設計の見直しとか利権のリセットとかしたいんでしょ」

青叔父の話から、ヴァンセットの話から見えてきたオケアノス派の狙いそのものだ。

「路上ライブしてると疲れたサラリーマンが缶コーヒー奢ってくれるんだよ。その時に話聞いたりしてさ。それにドレス着てシンデレラやってると、偉いおじさんたちが色々話しかけてくれるんだ。人畜無害で可憐な美少女にはみんな口が軽くなるんだよ」

「……美少女?」

食べ終わったらしいブリトーの包み紙が投げつけられた。

「それを軽い口調で教えてくれるキミの軽い口の理由は何だろうね」

「家賃の代わり、ってことで」


翌朝、ギターを担いで出ていったヘリオトロープを見送ったミシェル。今日の彼女はスタジオ収録とのことで、タクシーに乗って出ていった。

彼が寝ているうちに汚された部屋を片付けて、コーヒーを淹れて気分をリセット。

今日の予定は彼が出資する企業の視察だ。

〈ミシェル様、ご用意ができました〉

「ありがとう、今行くよ」

ラングレン家から彼に宛がわれた秘書兼運転手兼ヘリオトロープのわがままを聞く役の男の運転で港湾部へ。

コロニー外に出て、L1工業区へ小型艇で移動する。

居住区、商業区であり煌びやかなポリス・ビッグアイや天都東父と違い、無機質なたたずまいの工業区へ向かう船はどれも大型の輸送艦ばかり。工員たちはほとんどが住み込みで働いているが、居住環境はお世辞にもいいとは言えない。それでもL2よりは文明的だともっぱらの噂。

「ようこそお越しくださいました」

「よろしく頼むよ」

主要株主である侯爵家の嫡男にして、自社製品のテスター。

ミシェルの搭乗機、アルペイオスを製造しているエレクセオン社のL1工場である。

不在の工場長に変わり、設計部長が案内をする。

「ガイセイ、アマツカゼに負けることはできませんからね。次のナガサキまでにはきっちり仕上げてみせますよ」

「ありがとう。しかし、これはとても速そうな機体だ」

「その分積載量や強度が犠牲になっています。操作性も悪化、速度を追及した機体ですから、並みのランナーでは軌道を追うことすらできません」

「相手にするのは並みじゃない。最新鋭の機体と、最精鋭のランナーだ。ボクのようにね」

「もちろんです。そしてミシェル様の腕であれば、この機体のスペックをカタログ値以上に引き出してくださるでしょう」

「兵装は?」

「レーザーブレード、それから軽量型レーザーライフル」

「ずいぶんシンプルだな」

「ミシェル様の加速の軌跡こそがこの機体の主兵装ですので」

満足げに頷く。副腕も兵装ラックも、ただの重りにすぎない。

「気に入った。魅せてやろう」


次いで、隣の部門に向かう。

ランナー用の神経接続スーツだ。技術革新に至っていないので現行型のスーツと同じだが、成長期がそろそろ終わるハイティーンの彼らの体形はこまめに追う必要があった。

「採寸するからね、はい脱いで。はいバンザーイ」

子供扱いにめげず、言われるがまま身体を測られる。

「前回より身長がちょっと伸びてるわね、たくさん食べてるのね。良いことよ」

機外作業にも耐えられる宇宙服として、全身を包むランナースーツは性能が頭打ちになっている。この五年は接続時のノイズを低減する発展ばかりで、ブレイクスルーが期待される分野はいくつかあるものの、実際の運用にそこまで影響はないとみられている。

「作業用フレームのスーツであれば酸素量や耐久性が求められますが、競技用ではユーザーの体形に合わせたワンオフ。汎用品にフィードバックするほどの技術蓄積もなく、そもそも作業用にノイズ値コンマ数パーセントの高性能は求められていませんから」


次いで、隣の部門に向かう。

無重力区画で組み立てられていたのは軽量型レーザーライフル。

「長いな」

「長さは汎用品と同等です。細身になったのでそう見えるわけですね」

「デメリットはあるのかい」

「冷却機構を改善しました。排熱性能は向上しています。またエネルギーラインを並列化しましたので、低出力連射と通常照射の二つのモードで射撃できます。さらに、過出力射撃機構を備えました。どこまでヒューズが耐えられるかは不明ですが、おそらく150%はいけるでしょう」

兵装設計担当が自信ありげに説明すれば、ミシェルは口角をあげて目を見開く。

「それは素敵だ。ボクの腕でも勝てない相手を想像してくれるなんて。気に入ったよ」

「さらにこちらのレーザーブレードですが、過出力時は理論上ランドグリーズの胴体を両断できます。レギュレーション違反の代物ですが、誤作動が万が一起これば全てを切り捨てる妖刀となるでしょう」

三冠の規則で致死出力の兵装はすべて禁止されている。このお陰で競技中の死者はしばらく出ていない。だがこのレーザーブレードも、レーザーライフルも、その規則を軽々と踏み越えていた。

「パーフェクトだ。それくらいでないと、ボクのライバルは倒せない。キミが心配する必要はないよ。ただの必殺の一撃なんて、平気で避けれる奴しか知らないから」

獰猛な笑顔につられて、設計の男も笑った。

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