第3話

【アカデミー:宿舎】


「手紙か」

「うん。父さんに」

自分の机に向かって手紙を書いているのはアキラ・ユガワラ。買ってきた雑誌を片手にそれを見たのはデイル・ハラルドソン。

「プリヴォルヴァ3で働いてるんだったか」

「そうだよ。火星向けの造船所」

手紙には近況が書かれている。アカデミーでの生活は半年になり、光節もそろそろ近い。

「そういえばそうだな」

「デイルは帰郷するの?」

「そのつもりだ。地球はあんなに大きく見えるのに、移動には時間がかかるからな」

「地球じゃバカンスシーズンっていうんだっけ。青い海で泳ぐのかぁ」

アキラは海を見たことがない。

いや、訓練中に地球を見れば確かに海はそこにあるが、惑星上の青い模様としてしか知らないのだ。

「まぁ、地中海にクルーズしに行く奴は結構多い。俺の家にもクルーズ船があってな。普段はモナコに泊めているんだ」

「すごいね」

「俺がすごいんじゃない。実家が凄いだけだ」

デイルは自分の机に座り、参考書を開く。

重点育成プログラムでは実技だけでなく座学も叩き込まれる。

推力や重力、遠心力といった物理学は当然、磁場や熱量を扱う太陽学、コロニーや輸送船などが関係する工学、地質学、航海学、宇宙医学、経済学、文学等々。

「光節の前には中間試験だろ?今のうちに詰め込まないとな」

「そうだ、分からないところがあるんだけど後で聞いていい?」

「ああ。どこだ?」

「脳神経周りなんだけど」

「そこか......」

デイルの眉に皺が寄るーーー彼も苦手な分野/無限の酸素と重力を持ち安定した大地を離れたホモ・サピエンスが、閉鎖空間で長期生活するために手を入れた部分について。

「これはヴァンセットが詳しいな」

「まだ戻ってないの?」



【アカデミー:トレーニングルーム】


「百九十八......百九十九......百九十八......百九十七......」

「戻ってます!戻ってます......!」

「うっさいわね。そんなに私のカウントダウンが聞きたいのかしら?」

「今はカウントアップのほうが......ありがたいです!」

「はいあと十回!」

「サー、イエスマム......!」

ヴァンセット・ツィナーは汗を流していた。

汗が滴り、顎から鼻に垂れ、額へと落ちる。

遠心力で1G環境が構築されたコロニー内で、逆さづりになったヴァンセットが呻きながら身を起こす。汗は額から鼻に垂れ、顎に戻った。

「あと八回!」

「イエスマムっ!」

やけくその返事とともに疑似重力に従い身を降ろし、、再度腹筋に力を込める。

顔面を汗が行き来し、目や鼻に入り苦しいが、腹筋のあげる悲鳴に比べれば大したことはない。

ヴァンセットはそれらをまとめて無視し、最後の一回をついにやり遂げた。

「OK、今日もしっかりやれたわね」

脚を固定していた器具が外され、頭からフロアに落ちる。

直撃の一瞬手前で手をつき、身を起こした。

「生きてる?」

「生きています、サー!」

「ダメみたいね」

生存を宣言した直後、頭に血が上ってのぼせたヴァンセットは敬礼姿勢のまま前に倒れるーーーいつものように構えていたマケイラ教官がそれをバスタオルでキャッチ。

「誰か十四班を呼んできてくれる?」


しばらくして呼ばれたミシェル・ラングレンが現れた。

「このボクの手を煩わせるバカを引き取りに来たよ、教官」

「バカがバカやった原因の半分はあんたにあったと思うけど?」

「場合によってはそういう表現もできますね」

先の徒手格闘の実技訓練中、ミシェルにそそのかされたヴァンセットはマケイラ教官に相対し、例によって余計なことをして逆鱗に触れ、腹筋二百回の罰を受けていた。

カウントアップは途中でカウントダウンに切り替わったり、ヴァンセットが再び余計なことを言ってリセットされたりして、実際は四百回ほどになったが。

「彼も困ったものですね」

「軽薄なのがなければ若い子達にもモテるんじゃない?あんたも同室で同質なんだから、ちゃんと面倒見なさいよね」


ミシェルは教官からバスタオルに包まれたヴァンセットを受け取り、背負って帰る。

「それで、どうだった」

「ああ、すげー柔らかかった」

「上手くやりやがって」

「そう褒めてくれるな」

「褒めてない」

バスタオルからは反省していない声。実際、ヴァンセットがマケイラ教官から罰を受けるのは日常茶飯事であった。それでも不規則言動以外では注意を受けないどころか、座学でも実習でも教官陣から高評価を得ているあたり抜け目がない。

「素敵な女性だからね。声もかけたくなるさ」

「教官はキミのこと嫌いだってよ」

「......辛い」

「冗談だよ本気で落ち込まないでくれ。担ぐ重量が増えるじゃないか」

肩に担がれたヴァンセットは大人しく運ばれる。流石に腹筋が堪えているようだ。

「それよりも、光節はどうする?L5に帰るのか」

「……そのつもりだ。麗しの伯爵の靴を舐めないといけないからな」

「楽しそうで何より」

「そういうミシェルは輝かしいご実家に?」

勿論だとも、とミシェル。

「そもそも光節は月開拓者が夏の間地球に残してきた家族とバカンスを楽しむための文化さ。そして主導したのは、当時から開拓者の人材管理を担当していたラングレン家だ」

「しかし何故光節なんだ?普通にサマーバケーションで良かっただろう」

「開拓者の多くはアジア連邦からの出稼ぎ労働者。往還機のスケジュールの都合、彼らを春節に返してやれないからね。代わりにそれらしい名前にして面子を保ってやったのさ。まぁそれが百年以上残って文化として定着したのは......面白いところだね」

地球の暦では八月に当たる光節期間中、各コロニーと地球、火星の往来は一気に増える。

学生たちも中間試験を終えれば、多くが一時帰省の予定だ。

「まぁボクらは試験に心配はないけれど、万が一には備えておいて損はない。そろそろ教官にちょっかいだすのをやめて真面目に勉強をするのはどうだ」

「先週の模試、俺のほうが五点上だった。今度は十点差をつけてやろうか?」

「落とすぞ」

「それはやめてくれ......ただでさえ腹筋が痙攣してるんだ」



【アカデミー:格納庫】


「さて、我らが班長。調子はどうだ?顔色が良くないぞ?」

ミシェルがヘルメットの位置を整えつつ揶揄えば、顔色の悪いアキラが答える。

彼が視線を左右に振れば、アルペイオスのカメラもそれに合わせて振り向き、焦点を合わせる。

〈つくづく、頭の違いを実感させられる班だね〉

「まぁ、ボクが言うのもなんだけど君はよくやっているよ」

中間試験を前にして、今日は実技の試験だ。

Leフレームの操作に関しては、さすが最先端の教官がそろったアカデミー。ミシェルたち十四班ら重点育成プログラム対象者は一年次の半ばにして、既に二年次の過程を始めていた。

〈人の脳の容積には限りがあるんだ。詰め込んだところで溢れるだけだって〉

「そうはいっても、五班も二十八班もおなじ課程をこなしているんだ。特に二十八班はツバメ・テシガワラ以外はアキラと大して変わらない席次だぞ。彼らにできるんだから、キミにできないわけがない」

〈そうかな......そうかも〉

「というわけで、今日の目標は教官の撃墜なんてどうだ」


「そいつはいいな。興奮してきた」

〈お前はいい加減落ち着きを覚えろ〉

デイルが窘めるも、ヴァンセットは気にした風もない。

〈こいつの教官への執着はなんなんだ〉

〈年上趣味だったの?〉

〈罰を受けるのが好きなだけかもしれない〉

「揃って酷いな」

グローブからエアを抜き、手に密着させる。

「考えても見ろ。相手は二冠だ。それを倒せるなら、俺は三冠に限りなく近づけるって寸法だ」

〈三冠はすべて個人成績。相手になるのが俺たちだが?〉

〈三冠かぁ〉

〈ボクの冠を奪うのなら容赦はしないよ?〉

「この成績で進めば、アカデミックシリーズの出場権は重点育成組でほぼ占められるだろう。そうなりゃ、勝手知ったる同期の対策だけで済む。それ以外のが出てきても、実力でどかせばいい。分がいい勝負だ」

ランニングスーツをシートに接続し、ヘルメットも続いて共通規格のポートに接続。

ユキカゼには機体とランナーの情報伝達を増やすために、腸や脊髄の電位を機体に送るための追加ポートを設けている。これが無くても操作はできるが、反応速度は平均的な数値にまで低下する。

ちなみにランナーたちの意見では突起のせいでシートの座りが悪いだの、加速時に押し付けられて痛いだの不評。次世代機では形状が見直される予定だ。

「あぁ、早く撃ちたくてうずうずしてきた」


まったく、とデイルはため息を吐く。

既に彼らは訓練出力での武装が許可されている。

狙撃型ランドグリーズは無重力空間での戦闘を不得手としているが、幼いころより自社製Leフレームの操作訓練を受けてきたデイルはそれをハンデとしない。

レーザー狙撃銃のエネルギーパックが装填され、予備弾倉も機体に積み込まれる。

補給用のエネルギー供給経路に異常はない。

背中に背負った大型砲も、展開機構にも異常はない。

「フォーメーションはどうする、班長」

〈いつもので行こう。僕たちの基本パターンで〉

〈今日は教官たちもちょっと本気出してくるだろうし、奇をてらわないほうがいいのは確かだ〉

〈それじゃ、後ろは任せたぜ〉

半年の訓練の間、個別の技能と合わせて連携も学んだ。

前衛後衛2x2の基本から出発し、班の個性に合わせた編成だ。

カメラが狙撃モードに切り替わり、赤外線カメラが白いアルペイオス、青いユキカゼ、赤いレンジャーを順に注視。高倍率光学レンズに切り替えれば、アルペイオスの前で出力の最終調整を行っているベテラン整備士の横顔が大きく映る。

「良く見えてる。いい腕だ」

背面を写すサブカメラに、自社エンジニアが大きくサムズアップを見せた。


「各機、スタンバイ。十四班、全員準備完了。発進許可願います」

準備完了を示す表示を確認し、アキラは管制に発進を申請した。

〈コントロール了解。訓練宙域への発進許可〉

ブザー音とともに床が下へ動き出す。

エアロックに入り、真空ポンプにより空気が抜かれればそれも聞こえなくなった。

足元がゆっくり下に降り、円筒形のコロニーから突き出した射出口。そこから自転方向に靡くように伸びるカタパルト。

〈発進に備え〉

赤のランプが灯る。赤、赤、青ーーー発進。

カタパルトが作動し、電磁気が彼らの機体を宇宙に投げ飛ばす。

コロニー表面に頭を向けた姿勢から、速やかに足の方向へ上昇。

自転するコロニーでは数分と経たず射出口が迫ってくる。エラーで射出口が格納されなかった場合、上昇しなければコロニー表面からみて逆立ちした姿勢で射出口にぶつかるだろう。

〈高度クリア。そのまま訓練宙域に向かえ〉

「十四班、了解」

スラスターで姿勢を調整し、黄道面に対して機体を直立させる。

惑星重力による上下の区別がない宇宙空間で、上下の感覚をいまだに捨てられない人類は仮の上下を定めた。

太陽に対し惑星が公転する軌道を黄道面と呼ぶ。これはおおむね同一平面上にあり、公転を反時計回りに見る向きを、つまり地球の北半球側を上としたのだ。

人類資本の多くがいまだに地球の北半球を中心に回っているため、この見方は大した反対もなく採用された。

「まもなく訓練宙域に入る」

浮かぶデブリ帯が光学カメラにも見えてきた。



【アカデミー:訓練宙域】


〈ゼロアワーマイナス十......五......状況開始〉

L1標準時で十時ちょうど。管制のカウントダウンと共に試験が始まる。なおこの距離では通信のラグはコンマ秒以下なのでこの場合は無視される。

「全機、最大推力」

〈了解〉

アキラのレンジャーを先頭に、アルペイオスとユキカゼが続く。少し遅れてランドグリーズ。

レーダー上、正面から教官たちのレンジャー四機が迫っている。

「射程まであと十秒」

各機は既にレーザーライフルを構えている。

「撃て。散開!」

射撃と同時に隊列を崩す。

白は上に/青は下に/赤は右に/黒は左に。

散開する先を読んで撃ち込まれていたレーザーが光の速さで到達するが、スラスターの廃熱が残る空間を貫いて消える。

射撃の先を読んで散開したアキラたちが撃ったレーザーもまた教官たちの速度を止めることなく回避された。

教官機たちは分散した若鳥を狩りに行くーーー前衛後衛2x2の一般編成。

「掛かった」

先に狙われたのは、アルペイオスとレンジャー。

それぞれに二機が張り付き、巧みにに距離を詰める前衛とプレッシャーを与える後衛が白と赤のLeフレームを駆り立てる。しかし姿の見えない二機の若鳥への警戒も怠らない。

〈頼むよヴァンセット、デイル〉

〈おう〉

〈ああ〉

まっすぐ飛べば即座に落とされる。

一方向に飛んでも狙撃される。

乱数回避ーーー上下左右に振りつつ、加速と減速を混ぜ、機体の上下も変えながら、旋回と反転を組み込む。

予想可能な甘い挙動には命中弾が飛んでくる。一瞬とて油断できない。

加速度に全身の血液をシェイクされ、自機の姿勢すら把握できないほどの速度で過ぎ去る景色に位置を見失いかけながらも回避運動を続ける。

時折反転して牽制の/揺れる意識で狙える最大限の精度での射撃を放つ。

全身を圧迫し、加速度に合わせて血流を保つランナースーツのお陰で、またプラス/マイナスGがかかる時間が短時間のため意識を失うことはなんとか絶えているが、このままでは教官たちに落とされるのを待つだけだ。

だが、それこそがアキラとミシェルの役目だ。


「撃つぞ」

〈往くぞ〉

まずはアキラから。

技量と機体性能のお陰でミシェルは持ちこたえるだろう。

デイルが宣言したのと、ヴァンセットが声を出したのは同時だ。

赤いレンジャーを追う教官機の挙動を隠れて見ていた二人は、同じタイミングで攻撃を決心。

狙撃手は姿を隠し、一瞬に全てを集中させる。

デブリに機体を繋ぎ、廃熱すら絞ったランドグリーズは狙撃銃と狙撃砲を構えている。

アキラの機体が目標とした地点を通り越した瞬間、射撃。

人の目では観測できない速度で放たれた熱量はアキラを追う教官機の鼻先を掠める/直上を貫く=咄嗟に現れた目標に瞬時に対応した前衛教官機、だがセンサーが狂う/軌道が狂う→そこに急迫する青いユキカゼ。間に合わない。

〈一機撃破〉

デブリから飛び出しざまにレーザー刀を抜いてコクピットを焼き切った。

訓練出力のレーザーが機体に取り付けられたセンサーを焼き、教官機は破壊判定を受ける。

同時に出現した二機/前衛機ロストにも素早く対応する後衛教官機、だが誰を狙うか決める一瞬の隙に振り向いた赤いレンジャーの銃口が向く。

「撃破!」


「へぇ、やるじゃない」

我の強い四人。2x2にするにはヴァンセットが下がるしかないと見ていたが、3x1で落ち着いた十四班。

ずっと訓練担当をしていたマケイラは、二機の奇襲で教官を撃墜した彼らに対するスコアを再度上方修正する。

理性的なふりをしたバカと、騎士気取りのバカと、真面目ぶったバカと、バカなバカが教官相手にここまでやれるとは思っていなかった。普段から見ていたせいで、彼らのバカがうつったのかもしれない。それは違う。違ってほしい。自分の基準についてこれる彼らのレベルが低いわけがないのだ。通常カリキュラム組を教えている彼らが連続して撃墜されるなんて、きっと教官が優秀なのね。

〈まさか......〉

「伊達に重点育成プログラム対象者じゃないってことよ。そしてあのバカたちを鍛えたのは私よ?」

〈そうでした〉

後衛を務める教官も、元はポリス系コロニーの救難隊のエースだ。戦闘に関しても悪くないセンスがある。だが難点があるとすれば、少々柔軟性に欠ける。基準は当然自分だ。

「来るわよ、避けて」

〈はい!〉

遅い。マケイラは歯噛みする。

指示を聞いた瞬間には動いていないといけない。光の速さでレーザーが飛び交う宇宙空間では、挙動を感じた瞬間の反射神経がすべてだ。

案の定乱数回避の最中、黄道面に反転した姿勢から上体を倒して股の間から撃ってきたアルペイオスのレーザーに脚を焼かれた。そこに横から突き刺さる大出力の狙撃砲。

「残りは私だけね」

判定システムが脚部損傷を実機に反映する前に刺さっていた。当然、一瞬後ろには狙撃銃のレーザーが飛んでいて、後衛教官機のスラスターも破損している。

脚部を破壊され、動きが制限された動作を見込んでの二発だ。

「よく見てるじゃない」

システムのラグを読んで確実に仕留めに来ている。

一年次の前半ということで、機体の動作に制限を入れたのは手加減が過ぎたようだ。

「脚の一本くらいはあげるつもりだったけど、三機も落としたんならもういらないわよね」

だが機能制限は外さない。レーダーもセンサーも70パーセント程度の性能にしているが、あえてそのまま行く。なぜなら勝てるからだ。

そして四対一。数は四倍の差しかない。

「たった四機の新型で、性能が劣る一機もの訓練機に勝つつもり?」

舐めんじゃないわよ、ガキども。


残りは一機、ただしマケイラ教官。

「フォーメーション、ベレロポンテス」

〈っしゃぁ!〉

教官たちがこちらの力量を見極める前に、速攻でカタを付ける。

マケイラ教官以外は普段担当していない教官たちというのもあり、こちらの癖は見抜かれていないだろう。

だから、速攻で落とす。

アキラの案は班員に当然と受け入れられた。

「覇道は圧倒的であるからこそ覇道だからね」

「他の教官を落とせば、愛しの教官とヤれるってわけだ」

「こいつらの面倒を見る手間が省けるなら」

そして、ベレロポンテス。

神話の怪物キマイラを殺した英雄の名。

絶対的な実力を持つ教官を仕留めるための作戦。

ヴァンセットが前に出る。

デイルは後ろを、ミシェルが上を行く。

〈へぇ、それが貴方たちの本気ってわけね〉

「あなたを……アンジェラ・マケイラ・ダリンスキー教官を倒すには、これが最善です」

〈いいわ、来なさい。手加減してあげる〉

ヴァンセットがバレルロールを打ちその空間をデイルの狙撃砲が貫く。ユキカゼのバックパックすれすれを掠める挙動は当然予期されていて、ユキカゼが姿勢を戻した瞬間に斬撃が飛ぶ。

しかしそれを受けるのは斜め上から撃ち込まれたアルペイオスのレーザー。

〈誤射が怖くないのね〉

〈もちろん怖いとも。怖いからこそ集中して撃つのさ〉

レーザーを弾いた姿勢を狙ったユキカゼのレーザー刀は体裁き一つで交わされ、さらに蹴りを入れられる。吹き飛ぶユキカゼの細身のフレームと、反対に飛び上がる鈍重な教官機塗装のレンジャー。それは一気にアルペイオスとの距離を詰める。

〈チッ〉

デイルの狙撃砲が咄嗟に射撃を止めるーーー射線上には身を入れ替えられ盾にされたアルペイオス/狙撃銃の射線は教官機を掠めて当たらない。

〈さぁどうする?ミシェルは人質よ〉

落ち着いた教官の声音ーーーだが虚勢。

すでに照準は定まっている。

〈撃て〉

三方向から撃ち込まれたレーザーはアルペイオスごと貫く。

コクピットブロックやエンジン部を避け、最低限の機動に影響がない手足頭に貫通判定。

「やったか......!?」


狙撃銃と狙撃砲は確実に仕事をした。

だがレーダー上からレンジャーが消えた。

教官機ではない。アキラだ。

次いでアルペイオスも消える。

「散開!」

どうやら教官は、俺たちがミシェルごとーーー急所は避けたといえ撃つと予期していた。

どうやってかレーザーを避け、アルペイオスの影からユキカゼを撃ち、アルペイオスにとどめを刺した。

次は俺だ。動きが鈍いランドグリーズは格好の獲物。

「だが、レンジャーよりは!」

〈そうかしら?〉

通信に聞こえる声は、ヘルメット内の耳元にセットされたスピーカーからしか聞こえない。

そのはずだが、不思議とその声は背後から聞こえた。

「!」

一瞬で最大出力→乱数回避ーーーだが声はついてくる。

〈わざと性能を落としたレンジャーに追跡される気分はどう?〉

「生憎、ヴァンセットと違ってそういう趣味はないんでねっ!」

全身を揺さぶられる回避軌道に、声を出すことすらままならない。

レバーとペダルをめちゃくちゃに動かし、咄嗟に見えた機影に射撃ーーーやったか。

〈残念、ハズレ〉

機能を停止されたアキラのレンジャーに着弾のランプが灯っている。

〈味方撃ちは最悪の失敗よ。肝に銘じなさい〉

「イエス、マム」

視界の端、被撃墜のランプが灯る。


〈各個撃破されるのが新しい編成?〉

「こんなはずじゃなかった、という経験は教官にも多いと思う」

〈そうね。たとえば今ごろ、本当なら貴方たちを速攻で撃破して教官小隊は暖かいコーヒーでも飲んでいたはずだったわ〉

「例えば俺なら、もう五秒早く到達してそこで漂ってるデブリの発生を防いでいたはずだった。半壊しててもあれはいい盾になる」

思ったより強く蹴り飛ばされて、復帰に時間がかかってしまった。

そのせいで射撃のタイミングが自分だけずれ、アルペイオスごと撃ち抜く次善策が破綻した。

さらに華奢なユキカゼのフレームに搭載されたスラスターの推進軸が歪み、まっすぐ飛べなくなっていた。

「かなり痛かったですよ。そんなに俺と二人っきりになりたかったんですか?」

〈ここなら合法的にあなたをド突きまわせるもの。もし私を落とせたらデートしてあげてもいいわよ〉

「全力で行かせていただきます」

〈デブリになっても回収なら気にしなくていいわよ。明日の通常カリキュラム組がウォーミングアップがてらやるでしょうし。それくらいの水と非常食は詰んでるわよね?〉

「それは教官のレンジャーのお話で?脚部の負荷は再度の戦闘には耐えられないでしょう」

蹴りを入れたのだ。推進軸が歪むほどの強い衝撃と同じだけの衝撃を、骨太とはいえ製造されて長い間経ったレンジャーも受けている。

〈あなたのユキカゼ、推進軸だけじゃないわね。レーザー伝達経路にも歪みが出てるわ。使える武器はどれくらいかしら〉

「貴方の可愛いお尻に触れる程度の武装なら」


〈そう、なら一発キツいの行くわね〉

まだ生きているメインカメラが視覚情報を寄こす。

動力を停止され、漂っているアルペイオスの光学、サーマル、レーダー複合視界は二機のLeフレームの交戦をしっかりと捉えている。

同時に加速した二機は、交錯する間際に体勢を変えて接触を回避、互いに距離を取りながら射撃を継続。

天頂方向へ加速しつつ再度距離を詰める。

〈そんな散った射撃じゃ誰にも相手にされないわよ〉

〈こういうのも駆け引きだと習ったもので〉

〈誰によ〉

〈......ミシェル?〉

「俺を引き合いに出すなバカ」

武装ではまだ教官が有利だ。

ユキカゼのレーザー銃はすでに精度が狂い、エネルギー供給経路が断線し、先ほどの牽制で残エネルギーも撃ち尽くしたらしい。

レーザー刀も出力は数秒が限度だろう。

それに気づいた教官は、しかし油断なく距離を開けたまま。

訓練宙域の天辺まで格闘に持ち込もうとするユキカゼと巧みにかわすレンジャーのダンスが続くが、宙域制限が掛かり互いに反転するタイミングでユキカゼが仕掛けた。

明後日のほうを向いたスラスターを吹かして吶喊。反転直後から一拍遅らせたことで構えていた教官の機先を制すーーーが、一拍ずらして対応した教官のレーザー刀と鍔迫り合いになる。

〈はぁ!〉

裂帛の気合が教官の刀を弾き、刀身が首筋に迫る。

だが届かない。エネルギーは尽き、レーザー発振が停止。ただの金属棒となったレーザー刀を装甲で受けた教官はユキカゼの胴を斬るだろう。


「だがぁ!」

〈っ!〉

左手でレーザー刀を受けるーーー残していた回路を暴発させレーザーを吹き飛ばし、加速とする。さらに残りのスラスターを限界まで吹かし、一瞬だけ教官機の機動を上回る。

「貰ったぁ!」

右手の回路に残りのエネルギーを集中→点火。ユキカゼに備えられた最後の切り札、赤熱するマニュピレーターが打撃となる。

頭上を飛び越し、上方からコクピットブロック+バックパック狙いの一撃。爆砕機構が右手を射出。相対速度により回避は不可能。

レンジャーのサブカメラ性能では頭上に消えたユキカゼをフォーカスできない。

そして次の瞬間、被撃墜のブザーが鳴った。



【アカデミー:講堂】


「訓練機四機被撃墜。教官機三機撃墜、一機撃破。一年次の中間考査にしてはいい成績ね」

マケイラ教官が壇上でアキラたちの記録を再生しながら言う。

マケイラ教官機は腰部スラスターを全損。しかし撃墜には至らなかった。

ヴァンセットは背中狙いの一撃を加速で躱され、レーザー刀で切り刻まれた。

それは見る人が見れば、かつての低軌道軍のエース、ダリンスキー大尉の刀裁きであったと分かるだろう。

「私が相手じゃなければ、まぁ勝ってたでしょうね」

出力70パーセントの旧式機であっても、学生と教官の実力差はそれほどまでにある。

「最後の攻撃、絶対に当てられる自信があったんだ」

「頭上に急加速して背後を撃つ。ここの教官たちでもほとんどは初見で落とされるでしょうね。訓練出力とはいえ、撃墜判定、大破判定が出てたでしょうし実際にも破損は免れないわ」

講堂で同じく記録を見ている教官たちも感嘆の声を漏らしていた。

「では何故私が避けられたのか。簡単よ。前にやられたことがあるの。地球周回軌道、最終ストレートに入る直前のデブリ帯。やったのはゲルトルーデ・ジオローパ。クリサンセマム・チャンピオンシップの覇者。私の三冠を阻んだ女。そして貴方の保護者でもあるわね」



【アカデミー:訓練宙域】


ズオ・シェンのサンゲイが加速する。突撃手仕様のサンゲイは固体ロケットブースターを多数追加装備し、短時間の限定加速を可能としていた。

前衛教官機はそれを回避したところで、別方向から突撃してきたクウェト・バックマンのサンゲイに貫かれた。

〈一機撃破、一機撃破〉

直線軌道のクウェトを狙った後衛教官機にも急迫したズオだがこれは体術で突撃方向を交わされる。

〈口先だけですの?〉

〈うっさいわね〉

デブリの背後から急迫したコヨーテ・アリマのユキカゼがレーザー刀で後衛教官機を背後から突き刺すーーー撃墜判定。

〈どうよ!〉

〈アタシたちが作った隙よ。出来て当然!〉

立て続けの撃墜に気炎を上げる五班。

〈やるじゃないか〉

〈そうだな〉

それを見下ろす二機ーーー射撃。


デブリの濃いエリアに敵出現の警報ーーー姿を隠していた二機が現れた。

さらに警報ーーーガルシア・ベラスケスのサンゲイが撃墜された。

続いてクウェトのサンゲイが。

〈加速に自信があるのは良いことだが、軌道を読まれれば撃たれることをいい加減覚えるべきだ〉

〈爆撃手から注意を逸らすつもりだったのだろうが、注意をそらしたいという動きが逆に爆撃手を注目させている。今後の課題だな〉

教官機がデブリの間に現れては消える。

ズオとコヨーテは神出鬼没の二機に照準を合わせることすらできず、徐々に一点へ追いつめられていく。

〈......突破するわよ〉

〈アンタに指図されるなんてね〉

棘のある会話と裏腹に、息の合った加速と乱数回避。

〈なるほど、口だけ達者なスケアクロウではないようだ。だが遅い〉

〈......ゲッツ〉

〈あぁ。行こう、ルイ〉

ルイ・ラカーユとゴットフリート・キルヒの射撃が徐々にズオとコヨーテの回避可能な空間を削る。

射線を避ければ徐々にデブリの濃いエリアに追い込まれる。

気を抜けば互いに接触し操作を失う。

仲の悪い二人でも、この場で仲違いする危険は理解している。それは事故と悪点数に直結するのだ。

〈何かいいアイデアは浮かんだ!?〉

〈そういうアンタこそ普段はうるさい口が止まってるわよ!〉

逃げ場はいくつか見える。だがそこに入れば間違いなく撃たれる。

どうする。二人の思考がそこに陥った時。

〈判断が遅い。時には死中に活を見出すべきだった〉

〈!〉

爆炎。ガルシア機が持っていた爆弾が投げ込まれ、デブリが不規則に動き出す。

〈......最悪っ!〉

被撃墜のランプが灯った。



【アカデミー:講堂】


「ルイとゲッツ相手に瞬殺されなかったのは上出来ね」

講堂で試験の映像を見ていたアキラたちは軽食をつまんでいる。

まもなく試験終了となった五班が戻ってくるだろう。

そして二十八班が出場する。

「ルイ・ラカーユ元少佐......低軌道軍のエースと呼ばれた男......ゴットフリート・キルヒ......ハインツ&トムソン社のテストパイロット......ともに二年次の担当教官......」

「正解。ルイは私とは別の地域担当だったから、会ったのはアカデミーの教官室が初めてだけど噂は結構聞いてたわ」

例によって余計なことを言ったヴァンセットが腕立てをしながらの発言に、マケイラ教官は背中に座ったまま肯定する。

「ハラルドソン家の子としては、H&Tは気になるんじゃないかしら」

「はい。弊社とH&Tは北欧と中欧をそれぞれ代表する企業ですから」

とはいえグリンヤルティとH&Tは業務提携を多く交わす仲でもある。

「元は半導体企業のグリンヤルティと、造船業のH&T。他企業を買収することで拡大した二社は不得意分野を補う蜜月関係。地球の企業ではよくある形だ」

ミシェルら月面貴族からすれば、取引相手が複数あって面倒くさいというのが本音。

「開拓政府が公社として全て運営する月が特別なだけだ。コロニーだって各地の連合政府と企業がそれぞれ出資して、窓口もそれぞれだ」

アキラはよくわからないという顔をする。

「いっぱしの経営者気取りで......若者が何か言ってるだけさ......女性一人支えることもしないで......」

「ふんっ」

「ぐえ」

茶々を入れたヴァンセットは潰れた。

「誰が重いですって」

「まだ言ってないですよ教官」


「それで、俺たちが教育してる間にマケイラ教官殿は......教え子と不純な行為を?」

「ただの教育よ。この学年じゃよくあることね」

「......」

「そう引いてやるな、ルイ。マケイラ教官も独り身が長いんだ」

「ちょっとねぇ」

しばらくして、二人の教官と共に五班が帰ってきた。

試験開始時は威勢よく吠えていたズオとコヨーテも、さすがに意気消沈しているがマケイラに潰されたヴァンセットを見てさすがに表情を変える。

何事もなかったように二人は立ち上がり、椅子に座ってしらを切る。

「それより、次は二十八班よ」



【アカデミー:訓練宙域】


すでにレンジャー三機が落ちている。

ツバメ・テシガワラのランドグリーズは装備の大半を失い、四機の教官機に捕捉されている。

〈万事窮すか……〉

試験前は、先に試験を終えた十四班と五班が教官機を撃墜しているのを見て、彼女たちも士気を大いに上げたものだ。

だが蓋を開ければこの有様。

さらに、今回の相手となる教官にはマケイラやルイのようなネームドはいない。

〈良くないですね〉


3x1編成を組む二十八班。

試験開始から突撃を仕掛け、2x2編成で慎重に距離を詰めようとした教官たちの出鼻をくじくまでは良かった。

だが引き撃ち中心の作戦に切り替えた教官たちは、追いすがるガスパールを落とし、エルロイを落とし、ツバメの左脚を落とし、孤立していた狙撃手のヨナタンを落とした。

今は仕留め損ねた彼女を食らいに戻っている教官を、逃げることもできる待っている状態。

周囲にデブリはない。逃げる脚もない。

幸い、彼女が得意とするレーザー刀はある。

バックパックと右足の推進軸を調整ーーー飛ぶ。

確実に遠距離から仕留めようとしていた教官機は、当然予想していた動きと、予想以上の速度に狙いを外す。

〈一つ!〉

最も近づいていた教官機の胴をすれ違いざまに刻む。

〈二つ!〉

その残骸を蹴って次の一機。

〈三つ!〉

だが、留められる。

抜刀して受ける一機/側面に回り込む一機。

距離を取れば十字砲火。

正解は前。

強引に加速し、体軸を動かし停止した左足を叩き込む→教官機のレーザー銃を掴み側面の機影に向ける。

だが既にそこには何もない。

〈上!〉

蹴り飛ばした教官機をさらに回して盾にする。

〈甘い!〉

機体は、下部から貫かれた。

撃破したと思っていた二機目の教官機。

しかし撃墜には至っていなかったようだ。

〈状況終了。全機制限解除、帰投せよ〉



【アカデミー:講堂】


「二十八班、厳しいな」

ミシェルが呟く。

アキラも頷きこそしないが、唇を横に結んで真面目な顔。

「勿論、通常カリキュラム組に比べれば進んでいるほうだろう。だが彼らが真に重点育成プログラムの成果を出せているかと言われれば疑問符が付く。集中して投入されたリソースには当然金がかかっている。機体を動かし、修理するにもアカデミーから金が出ているわけだ。燃料も消耗品も、俺たちは通常カリキュラムの三倍は使っているはずだろう」

企業の出として、デイルの発言は辛辣だが正しくもある。

「成功例が二班だけじゃ、来年の予算はつかないだろうな」

貴族の出として、ミシェルもまた辛辣だ。

「重点育成プログラムからいいとこどりして通常カリキュラムを強化するか、この時期に成績優良者を選別してプログラム開始時期を遅らせるか」

「伝統に逆らって導入した制度が無意味でした、では面子が立たないということか」

「そうだ。このプログラムは......アカデミー理事が導入したと聞いている」

ミシェルは入学前、貴族関係者を集めた式典で理事に会っていた。

高級スーツに身を包みながらも、手には機械油が深く染み込んでいた。

「整備士からのたたき上げ、って雑誌に書いてあったね」

「......生憎だが、それはフェイクだ。考えても見ろ。整備士がアカデミーの学長になれると思うか」

「確かに......」

デイルに論破されたアキラは唸る。

アカデミーは各企業や団体からの出資で運営される。理事は最大出資者が就任し、当代の理事はアメリカの大手インフラ・物流企業StERA社のCEOでもある。

「各コロニーに管理の名目で手を入れてる企業だ。世界で一番影響力を持つ企業と言ってもいい。一流大学を出てエリートコースを外れることなく歩いてきて、社内政治に勝ち続けてやっとたどり着ける地位だ。整備士、という噂は......庶民に親しみを与えるための与太だろう」

「手の染みも、機体付きの整備士の手と比べればわかるが、工具に親しんでできた染みじゃない。人為的な物だろう」

ミシェル、デイルともに分析に容赦はない。

だが、そのような人物が反対を受けながらも推進した”重点育成プログラム”。

そのために動かされた金額も莫大なものだと理解できる。

「さて、ではボクらはどうするべきかな?大人しく学生を続けて、ライバルが減るのを高みの見物と行くか?それとも友人として彼らの勉学を助け、ランナーの何たるかを教え、ひいては学園運営の一助となるか」

ミシェルは三人に呼びかけた。



【アカデミー:宿舎】


「~……」

声にならない声を漏らしながらベッドに倒れ込んだアキラ。

今日、中間試験が終了したのだ。

「ほら」

見かねたヴァンセットがチョコレートを投げてよこすが、アキラはベッドの上に落ちたそれを掴もうと手を動かしたところで力尽きた。

「ダメだこりゃ」

「まぁ、ここ数日徹夜してたからな」

「皆でアキラに教えた範囲はどこも外していなかった。回答欄を間違えでもしなければ、十分高得点を狙えるだろう」

三人は疲れ切ったアキラのために身支度を整えてやる。

「五班はまぁ大丈夫だろう。二十八班も最低限のアドバイスでどこまでやれたかは不明だが......まぁ光節が終わり、彼らがちゃんと帰ってきたなら本腰を入れるとしようか」

「そうだな。俺たちも帰省して、やることがある」

「H&T製のクルーザーで地中海遊覧クルーズがか?」

「欧州諸勢力へのあいさつ回りと会合だな。そういうミシェルこそパーティー三昧か」

「そうだとも。年頃の美女ばかりの会場に放り込まれるのさ。羨ましいだろ」

政略結婚である。この時代でも、人類は家族という単位を捨てられずにいる。

「人が無条件で信頼できる相手はそう多くない。その点、血族であれば出生から今に至るまでのすべてを把握しているし、教育を施せば望ましい才能を開花させられる。どこかの誰かを信頼するよりも裏切りのリスクがない......どうしたデイル。いつもより表情が暗いぞ?」

「......血族、か。いや、何でもない。気にしないでくれ」

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