第19話 魔法の種類
じいちゃんの話によると。
まず魔力というのは、一人につき一属性しか授かることはできないもので。
この世界にいる誰もが両親の持つ属性のどちらか一方を引き継ぐようだ。
ただ、稀に祖父や祖母から受け継ぐこともあり、他にも特殊な属性もあるとのこと。
一般的な魔力の種類は、火:赤〜オレンジ色、水:青色〜空色、氷:水色〜薄水色、風:緑〜黄緑色、土:茶〜黄色、闇:黒色、光:白色の七属性。
色の濃い薄いは魔力の込め方やイメージなんかで変わったりするようだ。
特殊な属性は、
だけど、この五属性は普通の人では授かることできなかったり、物語や国なんかで語られたりしている属性らしい。
蒼炎は勇者のみが使えたという蒼色の炎を扱う属性。
紫電は獣人の国、アルフレザに住む希少な種族である
空間は魔王のみが使えた無色の空間を操る属性。
あとの二属性も、このアイモーゼン周辺で語られている神獣フェニックスが使ったとされる
今じゃ本当にあったのかすらわからない物だ。
「――ま、こんなとこじゃろう」
「うん、ありがとう。じいちゃん! なんとなくわかったよ」
「うむ、それならよかったわい」
「うん! でも、やっぱり魔法使いたいなー」
「ガハハハ! まっ、そうじゃろうな! じゃが、今日は大きな一歩を踏み出したんじゃ、そう慌てなくともいずれ使える日がくる!」
そうだ、じいちゃんの言う通り。
取りあえず、自分の魔力を認識出来たので、第一関門突破だ。
一つ一つ、目の前のことを乗り越えていこう。
「うん、まだまだ頑張るよ!」
「うむ!」
すると、じいちゃんが嬉しそうな表情で話掛けてきた。
「――あ、そうじゃ、そうじゃ! 今から気晴らしに町でもいくか!」
「えっ!? いいの?」
「ああ、もう修行をして二十日は経つしの。それに硬い荷台にも飽き飽きしてきたところじゃ」
「ってことは……や、宿屋に泊まるってこと?!」
「ガハハハ! そういうことじゃ! 今日からはアイモーゼン町を拠点とする」
「やったー!」
「ガハハハ!」
これで体を洗ったり、憧れた勇者一行みたいに宿屋から始まり、冒険者ギルドに行くなんていういかにも冒険者っぽいこともできる。
僕らが会話で盛り上がっていると、スレイプニルの声が聞こえた。
「ブルルッ!」
視線を向けると、スレイプニルは大きな目でじいちゃんを見つめ体を町へと向けている。
なんだか訴えかけるような目だ。
たぶん、町へ一緒に行きたいという意思表示だと思う。
「ふふ、今度はスレイプニルにも行きたいみたいだね」
「なんじゃ、お主も町に行きたいのか?」
「ブルルッ!」
じいちゃんに返事をすると、馬車もひとりでに引こうと、その歩みを進め始めた。
さっきまで、町に向かいたくないという意思表示を見せていたのに、急に気が変わったのだろうか?
やっぱり不思議だ。
本当に馬なのか、なんて考えてしまうくらいに。
でも、じいちゃんはそんな彼に対し、いつも通りやれやれといった感じだ。
「ふぅ、毎回じゃの。ワシの言う事を聞かんのは……そのクセ急に行動を変えるからのう」
「あはは……それはそうだね」
「まぁ……仕方ないの! いくか!」
「あ、うん!」
「ブルルーッ!」
結局、依然として馬らしくない彼を不思議に思う僕と、その態度に振り回されて溜息をつくじいちゃんは、先へ行くスレイプニルのあとに続き、草原の町アイモーゼンへと向かった――。
☆☆☆
――それから、しばらくして。
日が傾いてきた頃。
僕らは宿屋に泊まる手続きをしていた。
今回泊まる宿は、街の大通りに面した馬車でも通りやすい場所にあり、この町特有の赤煉瓦、尖った帽子のような屋根の建物。
中はそこまで広いっていう感じではなくて、一階は受付、その奥には小さめの食堂があるって感じだ。
たぶん、二階が部屋になっているんだと思う。
ちなみに、スレイプニルには手続きが終わるまで馬車と一緒に外で待っていてもらっている。
「こちらが料金表になります」
「ほうほう! これが料金か」
「そうですね、あとはお部屋ですがこちらになります」
「ふむふむ、部屋はこれか!」
建物内で、じいちゃんは女将さん相手にずっと笑顔で頷いている。
チョロいというわけじゃないけど、言われた言葉を繰り返しているだけ。
やっぱり不安だ。
初めてくる宿屋だし、元々人を信じやすくて、細かいことを気にしないじいちゃんのことだ。
ちゃんとお金のやり取りをできているのかも気になるし、どうにかして見たい。
よし、ジャンプだ。
「タンッ!」
だけど、跳び跳ねた瞬間しか見えず、肝心の料金がわからない。
そもそも女将さんとの会話に夢中となっているじいちゃんが邪魔だ。
じいちゃんのことを心配して見ようとしているのに――。
☆☆☆
――どれくらい時間が経ったのかな? 体感的には、五分後前後といったところだと思う。
じいちゃんと女将さんは、未だに部屋の間取りがどうこうって話をしている。
なんというか、女将さんの言葉をじいちゃんが繰り返すから、話が前に進まないといったところだ。
本当にこれで冒険者をできていたのかな。
さぞかし、一緒に旅をしていた人たちは絶対苦労しただろう。
なんて考えている僕はというと、ついさっきまで料金表が見れないことを諦め切れず抗い続けていた。
全力で跳んでみたり、左右に動いて見え方を変えてみたり色々とだ。
だけど、大きな図体と自分の身長より高い受付に阻まれた続けたことで諦めてしまった。
もう、いいよね。
二人とも会話に夢中だし。
あのじいちゃんと、笑顔で会話を続けている女将さんも悪い人じゃないだろうし。
見えないものは見えないし。
僕はこのまま二人の会話に耳を傾けることにした。
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