第18話 魔法の仕組み
「えーっと、じいちゃんの言った事を整理すると、魔力欠乏症が影響してて、魔法を使うことは出来るけど、おすすめは出来なくて、それに魔法には順番あって、今は使えない……? って、どういうこと?」
言葉にした通りで、頭の中はたくさんの言葉が散らばり漂っていた。
そんなふうに混乱する僕を前にして、じいちゃんは落ちていた木の枝を手に取り何かを書き始める。
「……うむ、ちょっと待っておれ」
書いている内容は見る限り、さっき話してくれたことを纏めてくれているようだ。
すると、書き終えたじいちゃんが声を掛けてきた。
「まぁ、あんまり口だけで説明してもよくわからんじゃろうから、簡単に纏めるとこうなるのう」
じいちゃんが木の枝で指す地面には先程の会話が纏められていた。
・自分の中に存在する魔力を感じて己に纏う。
・それを内部に留める。
・そして発現したい部位へ魔力を移動。
・あとは詠唱とか具体的なイメージとかして、魔法を放つ。
「まぁ、あれじゃ! 魔力欠乏症の場合もつまるとこ、やることは特に変わらん。一応、お主が気にするかと思って説明したまでじゃ」
どうやら、考え過ぎる僕の事を気遣ってくれたようだ。
やっぱり、なんだかんだと言っても良いじいちゃんだ。
だけど、この話を聞いて一つだけ疑問に思ったことがある。
それは詠唱についてだ。
さっきじいちゃんは何も言ってなかった。
言わなくても、使えるってことだろうか。
「あのさ、じいちゃん。書いてくれたおかげで言いたかった事は何となくわかったんだけど――」
「――けど、なんじゃ?」
「いや……うん。さっきじいちゃん、詠唱なんてしてなかったよね? それが気になったんだ」
「おぉ、そうじゃな! まず詠唱の意味を言わんとな――」
じいちゃんは詠唱の必要性を教えてくれた。
その話によると、詠唱は魔力から魔法へ変わるのをより安定させる為に唱えるものらしい。
要するにイメージを詠唱によって固めることで魔力を不安定な状態にさせないのが目的なようだ。
「――じゃから、お主らの傍から少し離れたんじゃ、放出する魔力を安定するまで近づかんようにな。あとは魔法の強弱じゃの――」
そして、今度は魔法の威力の仕組みついて。
威力の強い魔法は、詠唱が長く具体的(イメージがしやすい)であればあるほど、その威力が増すとのこと。
逆に威力の弱い魔法に関しては、詠唱が短く具体的(イメージがしにくい)じゃないとその威力や効力は減っていくらしい。
ただ、具体的だからと言っても詠唱に時間が掛かり過ぎてしまうとそれ自体が弱点になってしまうから注意することが大切とのことだ。
逆に言うと、短くても具体的(イメージが強固)であれば威力を損なわないのが、じいちゃんの考えらしい。
とは言っても、まだ今の僕には必要のないこと。
物事には順序って物があるしね。
取りあえず、今は魔力を留める修行だ。
頭の片隅にでもしまっておこう。
そんな心の声を代弁するかのように、じいちゃんが言葉を発した。
「そんなことよりも、今は魔力を纏う修行あるのみじゃ!」
「うん、そうだね! 頑張るよ!」
「うむ。では、早速やるか!」
こうして、ようやく修行をすることになった。
☆☆☆
スレイプニルが見守る木陰の下。
僕はまず木陰の座って呼吸を整えていた。
じいちゃんは、その前に立って様子を見ている。
「自分を落ち着かせるようにのう」
「う、うん」
ゆっくり吐いて、ゆっくり吸って、またゆっくり吐いて、ゆっくり吸い、吐く。
「はぁ……すぅー」
それから目を閉じて、自分の体の中心にあるという魔力の出処を探す。
じいちゃんが言うには、魔力の出処は光って見えるらしいけど。
「うーん……」
どこにあるんだろう、見つからない。
「どうじゃ、見えそうか?」
「まだ、何も見えないかな……もう少しやってみる」
「うむ」
それからしばらく目を瞑り魔力の出処を探すのを繰り返した。
でも、本当にこんなことをして意味があるのかってくらいに何も起きないし、見えてこない。
「……やっぱり、見えないや」
その様子を見ていたじいちゃんは、僕の頭に右手を置いた。
「ガハハハッ! まっ、そう簡単には出来んわい! 地道に繰り返していくしかないのう」
「地道かぁ……どれくらいかかるのかな?」
「そうじゃのう。お主の頑張り次第じゃが、早くて二十日、遅くて一ヶ月ってところかの!」
「えっ?! 二十日も掛かるの?」
「うむ、クエストを行いながらじゃからのう」
ということは、クエストを受注しなければ、もっと早く身につけれるってことなのだろうか。
「じゃあ、クエストをキャンセルするとか……」
「……うむ。お主はそれでいいのか?」
いいって、どういう意味だろう。
修行が本来の目的なはずなら、キャンセルしてもいいよね。こっちは命が掛かっているんだから。
「うん、だって早く身につけないと死んじゃうだよ?」
「……それはそうじゃな、じゃが! お主は勇者のような冒険者になりたいのじゃろう?」
なりたいけど。
僕には、この
今だって、修行という名の症状を克服することをしているし。
もし、何もなくて健康体だったら、今頃魔法の修行や冒険者クエストをこなしているはずなんだ。
「でも、ほら。僕には魔力欠乏症があるからさ」
すると、じいちゃんが肩を掴んできた。
「……よいか、リズ。お主が魔力欠乏症というのは紛れもない事実でどうしようもないことかもしれん。しかしじゃな、クエストと何かを並行して行うというのは遅かれ早かれ、どの冒険者も辿る道のりじゃ! そこに病気であることは何も関係ない!」
そうか、その通りだよね。
ギルドやクエストを依頼する人たちからしたら、冒険者がどういう環境で、達成したかなんてどうでもいい話だ。
冒険者は、自由で平等。
僕はそれに憧れたから目指したんだった。
「じいちゃん! ありがとう!」
「な、なんじゃ! 急に大きな声を出して」
「ううん、ちょっと言ってみたかっただけ」
「そ、そうか? うむ……」
そこから僕は町と草原を行き来しながら、クエストと修行に励んだ――。
☆☆☆
――二十日後。
その時は突然訪れる。
僕はいつも通り採取クエストを終えてから、スレイプニルの見守る木陰周辺で、魔力の出処を探す修行をしていた。
落ち着いて、集中、集中っと。
「すぅー、ふぅ……」
すると、青くて丸いものがぼんやりと見えてきた。
「じ、じいちゃん、なんか見えた! 青くて丸いやつ」
「ほう、もう認識出来たか!」
「え、これが、この丸くて青く光ってるやつが魔力の出処なの?」
「ふふっ、そうじゃ! それが魔力出処であり、魔力の根幹じゃな」
「魔力の根幹……でも、じいちゃんとは色が違うよ」
「それはそうじゃ、ワシの魔力は火じゃ! で、リズ、お主は水じゃからのう」
「じゃあ、その扱える属性によって色が変わるっていうこと?」
「うむ、そうじゃな。具体的にはなじゃな――とその前にもう目を開いてよいぞ」
「うん」
「よし! では、話を続けるかのう――」
僕の言葉を受けてじいちゃんは、詳しく魔力属性について説明してくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます