「日テレシナリオライターコンテスト」の募集要項を見てみよう

それでは、前置きも済んだところで、改めて『日テレシナリオライターコンクール』の募集要項を見てみましょう。


「作品形式等」の(3)、シナリオフォーマットが日テレ指定になっています。

特に気になるのは、本文ページは(28行✖29字を1枚とする)という部分です。

28だの29だの随分中途半端ですよね?なぜ、行数も文字数もキリの良い30にしないのでしょうか?その種明かしを元業界人しか知りえない情報を交えて、これからしましょう。


俳優やTV関係者でもなければ、本物のきれいに製本されたドラマ台本を見たことはないでしょう。一昔前に比べコンプライアンスが厳格化されたせいで、放送前や後を問わず、ドラマ台本やアフレコ台本が外部に流出するといった不祥事は大幅に減少しました。それでも放送前のドラマ台本が流出した事件が数年前にあったのですが。(これも機会があれば、後日改めて記事にしましょう)

でもまあ、実際のドラマ台本がどのようなものかは、我々ワナビーも知っておく必要があります。まずは、"ドラマ台本"をグーグルで画像検索してみましょう。


脚本とは、柱・ト書き・台詞の3つから構成されています。それら3つの詳細はまた改めて説明するとして、画像検索で表示されたドラマ台本の検索結果を見ると、「コの字」を上からかぶせたような数字が入ったり入ってなかったりの行があります。これを柱(はしら)といいます。先ほどダウンロードした日テレ指定のシナリオフォーマットでは、

(空行)

〇柱

(空行)

と柱の前後1行が空行になっていますね。ですので、台本になった際には、【柱は3行としてカウント】します。この【柱は3行としてカウント】という知識を得たうえで、もう一度さきほどの"ドラマ台本"の画像検索結果を見てみましょう。


さて、台本は1ページあたり、何行ですか?

……そうです。1ページ14行のものと1ページ17行のもの、2種類がありましたね。

つまり、日テレ指定のフォーマットの28行は、1ページ14行の台本の見開き2ページと同じ分量ということです。

ではなぜ、14行と17行の2種類があるの?というか、文庫本みたいに文字数も行数もびっしり書いたほうがよくない?そう、思いますよね。

台本の値段は放送時間ではなくて、1ページあたり〇円、の形式で決まります。じゃあ、なおさら「どうして文字数も行数もびっしり書かないの?」って話に当然なりますよね。


それでは次に、"割本"でグーグル画像検索してみましょう。

さきほどの"ドラマ台本"に、何やら手書きでいろいろ書き込まれた台本の画像が出てきましたね。これは実際に撮影するにあたって、柱で区分けされたシーン(ロケ場所)をさらにカット(編集点)ごとに細かく区分けして、監督がカットごとに『どのように撮影するか』という詳細な指示を書き加えたものです。ちなみに〇や□は撮影前、●や〼は撮影済みを表します。ちなみに、この塗りつぶし作業はADの仕事です。

つまり、1ページ14行の台本は17行の書式よりページ数は増えるので値段は高くなるけど、監督は書き込みやすい。1ページ17行の台本は14行のものに比べてページ数が減るので値段は安くなるけど、監督は書き込みにくい。というわけです。

実際には台詞の言い回しを監督が現場で書き直したりすることもあります。その際は台本の行間に直接手書きで書き加えることもあるので、1ページ17行のフォーマットよりも1ページ14行のほうが書きやすいのはいうまでもありません。


今回のコンテストにおける「1ページ28行、40枚程度」という分量の指定は、日テレでいえば1時間ものの分量で書いてください、というお願いなわけです。

ドラマ台本の場合、台本1ページは約30~35秒換算です。民放テレビドラマには本編以外にオープニング曲とエンディング曲で各90秒、次回予告で30秒の計3分30秒の他にも、CMが適宜入り、毎時54分辺りから短い別番組や次の番組になるので、ドラマ本編は賞味40~45分程度というわけです。実際は編集で多少の時間調整は利きますし、CMについても番組スポンサー(タイム)の他にも、おおよその時間以外には番組の指定のないCM(スポット)を入れるなりして調整が利きます。ですので、台本1ページあたり何秒というのはそこまで厳密ではありません。


以上から分かる通り、脚本をわざわざシナリオ形式に変換する理由の1つは、【事前に決められた放送枠に対して脚本の尺が充分であるかの確認のため】ということになります。ただ、脚本原稿を台本形式に書き換えるだけでは、尺の確認としては十分とは言えません。脚本として書く内容、特にト書き部分の制約は尺を図る上で非常に重要な要素になります。この点については、ト書きの説明の際に詳細に説明します。










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