(シナリオコンテスト向きの)登場人物図(人物表)の書き方

人物関係図といっても、かつてのTV雑誌にありがちな矢印が入り混じった「思い思われふりふられ」みたいな曲がりくねった矢印が入り組んだわかりにくい図をエクセルの組織表フォーマットで作成するわけではありません。

本文に添付する人物関係図に書くべきことは、下記の3つだけです。

1.登場人物の名前

2.登場人物の年齢

3.登場人物の公的な肩書


1.登場人物の名前

主役と脇役には、姓と名の両方が揃ったフルネームをあらかじめ決めておきましょう。セリフがちょっとしかない端役なら苗字と肩書きだけで大丈夫です。セリフのないエキストラに近い端役であれば名前ではなく、女性店員など肩書きで代用します。なお、女性店員が3人いるなら、女性店員1,女性店員2,女性店員3などと書きます。


脚本やシナリオの場合は、必ず脚本家が登場人物名を声に出したり、登場人物名でグーグル検索するなりして、確認しておくべきことがいくつかあります。

・発音しにくくないか

・他の登場人物と聞き間違いをしないか

・実在の人物名と重複しないか


・発音しにくくないか

意外と無視できない要素です。映像化されれば、登場人物の名前を役者なり声優が声に出して度々呼ぶことになります。間違っても「ぱみゅぱみゅ」みたいな言いづらい名前にすると、現場が辛いことになります。声優や俳優ならともかく、最近はドラマの出演者にお笑い芸人など御世辞にも活舌が良いとはいえない人も多いので、サ行が連続するような名前なども避けたほうが無難でしょう。


・他の登場人物名と聞き間違いをしないか

これも気を付けたい要素です。双子の女の子だからって「あつこ」と「なつこ」なんて命名すると、文字で追える台本上では問題がなくても、映像と音でしか追えない視聴者には判別のつかない非常に紛らわしいものになります。ここまで極端でないにせよ、主役や脇役に「ひろし」と「みおり」など母音が完全に重複する名前の組み合わせも避けるべきです。


・実在の人物名と重複しないか

意外な盲点ですが、実はこれが一番危険です。漫画『僕の心のヤバいやつ』のヒロインは山田杏奈ですが、実在のモデルさんと同姓同名です。まあ、アニメと実在モデルでは存在する次元が違う(?)ので問題視されないのですが、もし今後このアニメが実写化するとなると少々面倒になるかもしれません。

さて、一番大事なことをこれから言います。あなたが登場人物、特にヒロインの名前を決めたら、今すぐその名前でグーグル検索をしてください。

一番まずいのは、ヒロインの名前が【実在のAV女優の名前と重複すること】です。

アニメはともかく、TVドラマのプロデューサーは最近では女性が多く、この部分のチェックをしてくれることはまず期待できません。一方で、世の男性はAV女優にそこそこ詳しいので、もしヒロインの名前がAV女優と丸かぶりだったりすると、視聴前にキャラのイメージが固定化されてしまいます。


2.登場人物の年齢

登場人物の年齢の記載が必要なのは、主役・脇役・端役までです。セリフのないエキストラには年齢表記は不要です。端役の年齢表記については、店員や警察官など名前ではなく役職がそのまま役名になる登場人物には不要です。

ここから大事な点を述べます。

例として、作中において主人公鈴木大介の半生を描くものとして、7歳の幼少期、25歳の青年期、50歳の現在と3つの時代を書く場合は、

人物表の表記は、

鈴木大介 (7)(25)(50) 

と年齢を3つ並べて書くことになります。

例えアニメであったとしても25歳と50歳は同じ男性声優が演じるにしても、7歳は声変わり前としてボーイッシュな声が演じられる女性声優になる可能性が高いから、キャスティングの準備のため、年齢表記は必ずすべて書きます。

もし、鈴木大介の幼少期のみキャストを変えてアニメ化される場合は、

鈴木大介     (声優名●●●●)

鈴木大介(幼少期) (声優名〇〇〇〇)

のようにクレジットされますが、脚本段階では年齢を重ね書きするだけでOKです。

なお、作中で鈴木大介の3年前の回想が短く挿入される程度でしかない場合は、

人物表の表記は、

鈴木大介 (50) 

だけでOKです。


3.登場人物の公的な肩書

登場人物の肩書が必要なのは主役と脇役、そして役名が役職名ではない端役までです。つまり、役名が警察官とか店員などになっている端役には肩書は不要です。

逆に端役でも主人公鈴木大介の同僚の平田とか、上司の坂口などの場合は、

平田 鈴木の同僚

坂口 鈴木の上司

など、年齢はなしで肩書がつく、という形になります。


そして、肩書きはあくまで【現在時点の公的な肩書】で書きます。

例えば、『課長島耕作』であれば、主人公島耕作の肩書は「初芝電器産業 課長」です。将来取締役になるだとか、家で嫁からどう呼ばれてるとか、酒癖が悪いとか、そういう私的な情報は肩書きには記載しません。


実際には人物表の並びについても言及すべきなのですが、商業作品前であれば、トメだのW主人公だのはあまり意識しても仕方のない部分ですので、ここでは省略します。


これでようやく、本文前までの用意ができました。次は脚本本文の書き方について説明します。






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