第21話 類は友を呼ぶ

 屋敷に戻り、浴室で汚れた服を脱がせ、取り敢えず応急手当を行った。


「骨は折れていないようね」


 擦り傷まみれだし、捻挫をしているが骨は無事。


「ほい、聖」


「ありがとう」


 小鳥が適当に見繕ったTシャツと短パンを姉妹に手渡す。


「シャワーを浴びて、着替えたら出てらっしゃい。お話ししましょう」


 その間にキッチンで水をコップに注ぐ。


 残念なことに我が家には彼女たちに与える食事も飲み物もないから。


「あの」


「綺麗になったわね」


「おー」


 姉妹は手を繋いで現れた。


 よし、綺麗になっているわね。


「それじゃあお話ししましょう」


 小鳥が姉妹をリビングのソファに座らせ、目の前のテーブルに水を置く。


「無駄な前置きは時間の無駄だからやめましょう。どうしてあそこにいたの」


 姉妹に包帯を巻きながら問う。


「……お父さんは会社を経営してて。でも倒産しちゃって。ご飯が少なくなっていって、食べさせてもらえなくなって」


 ネグレクト。


 お金がないから仕方がない。


 なんていう言い訳は通用しない。


 最低最悪の所業。


 私も小鳥も実の親からネグレクトを受けていた。


 似た者同士が集まったわね。


「それなのに今日はお風呂に入らせてもらえて、綺麗な服を着せてくれて。美味しい物を食べさせてもらって」


 姉は俯いた。


 妹は小鳥に湿布を貼られている。


「幸せでした。帰りの車で、妹は寝ていました。私は起きていて……だから気がついたんです。家とは逆方向に走ってるって。お父さんに『どこに行くの』って聞いたら、『ごめんな』って何回も謝られて」


 あぁ、察してしまった。


 彼女たちの両親は一家心中をするつもりだったのだ。


「なんか嫌な予感がして、慌てて妹を起こしました。どんどん車のスピードが上がって……上りでちょっと減速したタイミングで車から飛び降りたんです」


「マジ?」


 妹さんいグルグル包帯を巻いていた小鳥の手が止まった。


「よく無事だったね。骨折せず」


「はい」


 本当に。


 下手したら死んでいたでしょう。


「そこから記憶がなくって、気づいたら――」


「あそこにいたと」


「はい」


 なるほどね。


 あんなところに子ども二人がいた理由がわかってスッキリしたわ。


「ところで貴女たち、名前は?」


 最初に聞くべきだったことを思い出した。


浜辺はまべ琴葉ことはです。妹が『音葉おとは』です」


「そう。年齢は?」


「私が16歳で高校1年、音葉が7歳で小1です」


「「え?」」


 私と小鳥はハモり、思わず顔を見合わせた。


 全く年齢とカラダの成長度合いが見合っていない。


 まさか姉……琴葉ちゃんの方は高校生だなんて。


 信じられないけど、私も幼い頃は似たようなものだったわ。

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