第19話 代償 2 *小鳥*
「え」
捧げたはずの左目があった。
びっくりして目を丸くする私に、
「私が死んでから返してくれたの」
傷一つない左目。
「どうして?」
純粋な疑問。
「これからは私が代わりにこの森を守れってことなのかもしれないわね」
「ん?」
答えが答えになっていないような気がする。
守れってどういうことなんだろう。
「祠には日本刀があるでしょう。あれは養父母の祖先からずっと守ってきたもので、なんて言ったらいいかしら」
悩むそぶりを見せたのは一瞬。
すぐに口を開いた。
「宿っていたのよ、神聖な存在が」
「ほへー」
間抜けな声が出た。
仕方ないじゃん。
私の理解の範疇を越えてる。
「因みに」
聖は声のトーンを落とし、話を切り替えた。
「ここら辺、幽霊がうじゃうじゃいるわ。私も同じようなものだけど」
「うげぇ」
「その反応やめなさい」
「ごめん」
素直に謝ります。
そりゃいるよね、幽霊。
私たちが殺してきたんだもん。
たっくさん。
「安心して、私の周りには不思議と近づいてこないから。呼べば来るけれど」
「呼ばないで呼ばないで」
ふふふ、と笑った聖は完全に私をおちょくっている。
「もうっ」
「ごめんなさい」
手で口を押えながらまだ笑ってる。
頬を膨らませて抗議の表情をすれば、優しく頭を撫でてくれた。
自然と頬が緩む。
大好きなんだ、聖にこうしてもらうの。
「小鳥、お願いがあるのだけれど」
「なぁに?」
首を傾けて尋ねる。
「私の魂はここにあるから、今まで通り祠にお供え物を置いてくれるかしら」
「うん」
即答。
というか、彼女の指示にNoをいうことは有り得ない。
聖は私にとって神様だもん。
神様の言うことは絶対、でしょ。
「ねぇ、聖。これからも傍にいてくれる?」
幽霊だとしたら、いつかふっと消えてしまうかもしれない。
そんなの嫌だ。
悪霊でもなんでもいい。
ずっと隣にいてほしい。
「えぇ、ずっといるわ。約束よ」
私たちは小指を絡め、指きりげんまんをした。
いつかのように。
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