第6話 何故今更

「それでは、なにか思い出したことがあればご連絡ください」


 刑事は私に手渡し出て行った。


 車の音が遠ざかり、


「はーあの人ねちっこかったね」


 小鳥が漸く口を開いた。


「よく我慢したわね」


「えへへ」


 頭を撫でてあげる。


 喜んでいる姿に癒されるわ。


「にしてもさ、なんで今更捜してんだろうねえ」


 首を傾ける。


 うん、あざとい。可愛い。大優勝。


「そうね……少し探ってみるわ」


「ほーい」


「その前に、食事を再開しましょうか」


「ほいほい」


 私たちは手を繋ぎ、私の部屋へと向かった。


 命をいただくために。


 その日の夜。


「小鳥」


「なぁに?」


 ソファに寝転び、猫のシロと戯れていた彼女に声をかける。


「あの刑事がハルを捜している理由がわかったわ」


「仕事はっや! 流石だねえ」


 正確には私が調べたわけではない。


 知り合いに頼んだのだけれど。


 相変わらず寝っ転がったままの彼女の足元に座り、


「あの人、ハルの父親よ」


「えっ、マジか」


 目を丸くして驚く小鳥。


 可愛い。


「マジよ。だからグループのメンバーたちに話しを聞いて回っている。私たちのところに来るのが遅かったのは、こんな山奥に住んでいるからでしょうね」


 よく見つけたものだ。


 彼の手腕には感心する。


「あーそっかぁ。てかさ、この場所が見つかったってことは」


 小鳥が私の目をじっと見つめる。


「行動が見張られている可能性があるわね」


「ですよねー」


 うぎゃー、と意味のわからない悲鳴をあげながら脚をバタバタさせる。


 当たって痛いからやめてほしいわ。


 彼女の脚を抑えつつ、


「狩りを当分控えましょう」


「んだね」


「素直でよろしい」


 えへへ、と笑う彼女に微笑みかけながら考える。


 冷凍庫にはたっぷり人肉と血液があるから、最低でも1か月は生きていける。


 警察に伝手はあるのよ。


 アイツを辞めさせることだってできる。


 でも、なるべく借りはつくりたくない。


「ねぇねぇ、聖」


「なに?」


「アイツ、殺す?」


 カラダを起こした小鳥が無邪気に笑う。


「そうねえ」


 殺したっていい。


 面倒なヤツは早急に始末すべき。


「やめておきましょう」


 警察を殺したら確実に大ニュースになる。


 狩りがやりにくくなること間違いなしだ。


 小鳥の楽しみを奪いたくない。


「どうせいつか破滅するのだから。遅かれ早かれ」


 私たちに明るい未来なんて待っていない。


「それまで毎日を楽しみましょう」


 私の言葉を聞いた小鳥は、優しく抱き着いてきたのだった。

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