第2幕 暗雲

第4話 訪問者

 ピンポーン。


 狩りのない日。


 夏の日差しが眩しく輝き、風が木々を揺らす穏やかな日。


 滅多に鳴らないインターホンが鳴った。


「誰」


 素早く反応したのは小鳥だった。


 視線を鋭く、警戒心を丸出しにしてモニターを見に行く。


「聖」


「わかっているわ」


 二人並んで楽しくお食事しているところだったのに。


 キッチンの棚から木製のトレーを取り出し、食べ掛けの人肉や食器などを載せて自室へ。


 今頃玄関で小鳥が謎の訪問者と対峙しているだろう。


 さっさと隠さないと。


 本棚を横にズラし、隠し部屋の一番奥にトレーを置く。


 自分の服に血がついていないことを確認してから自室を出る。


 しっかりと鍵を閉めながら玄関の方を見れば、痩身の中年男性が立っていた。


 スーツを着ている。


 一体何者?


 杖をつきながら近づけば、小鳥が振り返った。


「どうも」


 中年男性が軽く頭を下げ、手帳を見せた。


「……警察?」


 どうしてここに。


 まさか、私たちの狩りがバレたのか。


 真顔でじっと彼を見つめる私に、


「ハルさんを捜索しているんだってさ」


 小鳥が静かにそう言った。


「え?」


 私がアイドルをやっていたときの仲間で、小鳥が殺し、私たちが食べた人物。


 なんで今更。


 疑問が顔に出ていたんだろう。


 刑事は、


「少しお話を伺いたいのですが……お邪魔してもよろしいでしょうか」


 人当たりがよさそうに笑った。


 目の奥は全く笑っていないけれど。


 小鳥は、どうする? とでもいうように私をじっと見つめている。


 決定権は私にある。


 家主だものね。


 さて、どうしましょうか。


 ここで断れば、不審に思われるだろう。


 ならば、


「どうぞ」


 取るべき行動は一つ。


 私は彼を客間へと案内した。

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