第2話 身を守るもの 2
「ねぇねぇ、聖」
「なに?」
ホームセンターでバットを買うか、幾つもあるルートから入手するか悩んでいると、先ほどとは打って変わって落ち着いたトーンで小鳥が言った。
「侵入者が現れたとして」
彼女の顔を見ると、いつもの笑顔はどこへやら。
真剣な表情で私をじっと見つめていた。
「絶対に私が帰って来るまで持ちこたえて。聖を殺すのは私なんだから」
「……わかってるわ。約束だもの」
私たちには幾つか約束ごとがあるが、その一つ。
いつか、私を殺す。
さてさて、いつになるのやら。
元々は自立した女性だった小鳥は、私の家に転がり込んでからすっかり子どもみたいになってしまった。
母親に甘えるような、恋人に甘えるような。
なんて表現すればいいのかわからない。
「うん、ならいいよ」
笑顔を見せる彼女の顔に答えは書いていない。
ところで、
「貴女も護身用に、なにか車に積んでおいた方がいいんじゃないのかしら」
玄関に置く予定の釘バットは私たちの武器になる。
でも、車にはなにも乗せていない。
狩りのときに注射器を隠し持っているぐらい。
「あーそうだね」
うーん、と眉間に皺を寄せて悩む小鳥。
「可愛い顔が台無しよ」
眉間に指を当ててグリグリしてあげる。
「えへへ」
「笑ってないで考えなさい」
笑う要因をつくった私が言うことではないかも。
「そうだ!」
閃いたらしい。
パッと花が咲くような明るい表情で、
「カッターナイフはどう?」
「そうねぇ」
眉間から指を離し考える。
「カッターぐらいなら、警察に職質されても怪しまれ……ないかもしれないわね」
若干無理があると思う。
なにに使うのか聞かれたら終わり。
この子は絶対、上手く答えられない。
「よっし、カッターナイフにする!」
まぁ……この子は人畜無害そうな可愛らし幼い顔立ちをしているから、なんとかなるでしょう。
多分。
「それだけでいいの?」
他に刃物系を持っていたら、確実にお巡りさんに目をつけられる。
「十分だよ。それに、どこにいたって聖が守ってくれるもん」
出た。
いつも言う言葉。
「貴女は私を神様だと思っているようだけど、ただの人間よ」
私の言葉に答えず、小鳥は首を傾けて微笑んだ。
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