第2話 身を守るもの 1/2

 6つ並んだスチールキャビネット。


 小鳥とこの棚をここに運び入れたとき、私はまだまだ元気だったわね。


 今じゃもうこんな重いもの持てないわ。


「木製のバットと釘は買うとして……他になにか足りないものはある?」


 定期的に消耗品はチェックしているけれど、念のために確認。


「うーん、ないよ。いっつも聖がたっくさん予備を買っておいてくれるもん」


「そうね」


 薬品が並べられている棚。


 殺すとき、解体するときに使う道具が並べられた棚。


 道具を手入れする道具が入った棚。


 ゴム手袋や防護服など、消耗品が入った棚。


 未使用の木製のパズルの秘密箱が並んだ棚。


 粉砕した骨を入れた秘密箱が並んだ棚。


 全ての棚に鍵をかけている。。


 あと、全ての部屋も。


 こんな人里離れた屋敷に誰かが来るとは思えないけれど、もしものときのために。


 まさか、があってはならないから。


 道具や消耗品の入手ルートは基本的に闇ルートで海外送金か、現金か。


 ホームセンターへ小鳥にお使いを頼むときは、現金決済。


 クレジットカードは足がつきやすいし。


 因みに、私は基本的に屋敷から出ない。


 出たとしても、庭と森ぐらいね。


「あっ」


 棚を見回していたとき、小鳥が声を上げた。


「どうしたの」


「バット、二本買っておいてね」


「二本? 一本で十分でしょ」


 彼女はブンブンと音がしそうなほど勢いよく首を横に振り、


「玄関の戸棚に一本隠すでしょ。あと、聖の部屋に置いておかなくっちゃ。聖の護身用なんだから」


「そうね」


 小鳥の言う通り。


 一本では心もとない。


 複数あった方が、身を守るためには便利だろう。


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