命に感謝を 2

 二時間後、


「よっしゃ始めるよ!」


「うん」


 小鳥は楽しそうに毛を剃り、皮を剥いでゴミ袋へ。


 骨から肉を綺麗に取り除き、骨と肉を別々のバケツに入れる。


 血は汲み上げポンプでバケツに。


 浴槽から遺体を出して解体した方が断然楽なのだけれど、血が無駄になるので浴槽に入れたまま作業は進んでいく。


「終わったぁ」


「お疲れ様」


 掃除や後片付けはやるけれど、殺しは基本的にしない。


 それが私のスタンス。


「んじゃあ、早速お料理しちゃおう」


「お願いね」


 三度別行動。


 小鳥は人肉を調理しつつ、余った肉や臓器、血は業務用の冷凍庫に。


 私は広い浴室で、バケツの血に水が混じらないように注意しながら掃除をし、続けて道具の手入れをする。


 終わったら、車内の清掃。


 あの女が乗った形跡を消す。


「できたよ!」


「わかった」


 二人してゴミ袋にゴム手袋と防護服を入れ、席につく。


 小鳥がテーブルに並べてくれた血と肉、臓器。


「「いただきます」」


 どんなクズの肉でも、命に感謝をしないとね。


「今日のお味はどう?」


「まあまあね」


 私たちは二人とも味覚が……ね。


 俗に言う『イカれてる』から、人肉だって臓器だって美味しく感じる。


 血を飲むときは吐き気を伴うけどもう慣れた。


「「ごちそうさまでした」」


「聖、お願いしまーす」


「うん」


 お皿を下げ洗っている間に、小鳥は地下室から木製のパズルの秘密箱を持ってくる。


「洗い終わったわ」


「ありがと。じゃあ、もうちょい頑張りますか! あっ、無理しないでね」


「ご心配どうも」


 浴室にブルーシートを敷き、ゴム手袋・防護服・使い捨てのキャップを身に付け、トンカチで骨を粉砕していく。


 そして骨を秘密箱に入れ、小鳥は地下室へ飾りにいく。


 私は掃除や手入れが済んでいない道具を綺麗にし、ゴミ袋に詰めて焼却場へ向かう。


 深く掘った穴にそれを放り込み、燃やす。


 メラメラと揺れる炎を見ていると気持ちが落ち着くのよね。


「聖」


「あぁ……待たせちゃったわね。ごめんなさい。行きましょう」


 ボーっとしている間に燃やし終わっていたらしい。


 小鳥に手を引かれ、あの分かれ道の右の方へ。


 先にあるのは、大きな鳥居としめ縄と中々立派な祠。


 命をいただいて、掃除が終わった後にお参りするのが私たちの決まり。


 次に、冷凍庫が置いてある隠し部屋の扉の上にある神棚、養父母の仏壇に手を合わせて終了。


 私はね。


 小鳥は、ノートに今日殺した人物の容姿や味などを記録し、地下室に戻しに行って終了。


 これが私たちの“狩り”のルーティーン。


 狂った人生を、地獄に向かって歩み続ける、愛しい人との共同作業。

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