第19話 よく分からない「おことわり」

 いったん死刑が確定した袴田巌氏の再審初公判を報じる記事(第1面)の末尾に、「おことわり」と題して、次のような文章が掲載されていました。


「袴田巌被告は、これまで記事の最初を元被告としてきましたが、再審公判が始まったため被告呼称とし、それ以外は敬称とします。」


 私は一読したとき、意味がよく分かりませんでした。

 特に最後の方にある「それ」は、何を指すのか。

 また、読み返してみると、「記事の最初を」というのも、分かりません。


 字数の制約があるはずなので、分かりにくくても、仕方のない面もあるでしょう。 とはいえ、読んで分からなければ、掲載する意味が薄れます。


 この件に関する記事は、1面だけでなく、他の二つの面にもありました。それらを読み合わせて考えたら、「おことわり」の意味が分かりました。

 各記事では、最初に袴田さんの名前が出た時だけ「被告」が付され、その次からは「さん」付けされていました。

 「おことわり」を、より分かりやすく書くと、次のようになると思います。


【改善案】

 袴田巌被告の呼称については従来、記事に初めて出る際には元被告としましたが、再審公判開始に伴い初出の際は被告とし、その次からは敬称とします。


 どうでしょうか。オリジナルのものより分かりやすくなったでしょうか?


 オリジナルのものが分かりにくかった原因は、次の点だと思います。

1)主語を「袴田被告」としたこと。

 ここで言わんとしているのは袴田さんの呼称についてなので、主語は「袴田被告の呼称」とした方が分かりやすくなると思います。


2)「記事の最初を」が分かりにくい。

 「袴田さんの名前が記事の初めに出てきた際」という意味なのですが、「記事の最初」とすると、「記事の初めの部分」という意味になってしまいます。


3)「それ以外」が分かりにくい。

 正確に言えば、「袴田さんの名の初出以外」ということです。しかし、呼称を袴田さんの名前が出てくる順番(最初と2回目以降)で変えるので、「それ以外」というと分かりにくくなります。短文で言うのは難しいのは確かなのですが、「その次から」とした方が、まだ良いのではないでしょうか。

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