第17話 「足元の」:「現在の」ではダメ?

 前から気になっていたのが、「足元の」とか「足元では」という言葉です。

 今日も見つけました。北京で開催された「一帯一路」の国際協力フォーラムに関する記事です。


「……、今回はより明確に小規模事業優先、人への投資を打ち出し、環境問題やきめ細かい支援を重視する姿勢を示した。背景には中国経済が低迷している現状もありそうだ。」(傍点は引用者=私)


「足元の」は、経済記事で時々見かけますが、政治、国際、社会など他の分野の記事では、まず見かけません。


 ネットで「足元 経済用語」と入力して検索すると、出てきました。ネット情報なので、正確性については保留付きです。

 それらによると、「足元の・では」という言い回しは、元々は金融業界で使われていた一種の業界用語のようです。「目前の状態」や「今現在の状態や状況」、あるいは「目下」といった意味合いで使われます。

 現在はこれが他業界にも広がり、好んで使う人もいるため、ビジネスシーンでやたら目にするようになったそうです。


 なるほど。

 ならば、ごく普通に、「現在の」とか「直近の」とか言えば済むのではないでしょうか?

 現に、経済記事以外では見かけないということは、「足元」を使わなくても記事は書けるということだと思います。

 経済新聞ならいいかもしれません。しかし、一般紙は、色々な層の人が読むので、出来るだけ一般的な分かりやすい用語を選択すべきです。


 『広辞苑 第七版』は、「足元」の語義の一つとして「目前の状態」をあげています。ただし、用例は「足元を固める」です。

 『新明解国語辞典 第八版』には、そういう語義は出ていませんでした。


 なお、上に引用した記事は、「足元の」と「現状」が意味的にダブっているのではないでしょうか。ですから、

「背景には中国経済が低迷している現状もありそうだ。」

で済むと思います。


 もしも「俺は経済には詳しいんだ」という雰囲気を出したいなら、「足元」を使ってみるのもいいかもしれません。私は、そういうことは嫌いですが。


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