第16話 小中学生な文 その2
また見つけました。
前話に引き続き、いわゆる「てにをは」に疑問符が付く文です。
国際面のトップにありました。
「イスラエルはパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻を前に、対ハマス非難を内外に浸透させる狙いがあるようだ。」
この文の骨格は、次のとおりだと思います。
・主語:イスラエル
・客語(目的語):狙い
・述語:あるようだ ……以下では、単純化するために「ある」とします。
つまり、「イスラエルは、狙いがある」がこの文の骨格だと思います。
明らかな間違いとまでは言えないかもしれませんが、違和感を感じませんか?
私なら、
「イスラエルには、狙いがある」
としますね。
述語が「ある」であるならば、「○○には」とした方が落ち着きが良いと思います。
もしも、「イスラエルは」を生かすとすれば、
「イスラエルは、狙いを持っている」
あるいは、
「イスラエルは、狙っている」
などとします。
ちなみに、『新明解国語辞典 第八版』の「ある(有る)」の項には、<どこ・なに・だれニ―>(二はカタカナで太字)とあります。「ある」の主語には、「に」を付けるべきであることを示しているのではないでしょうか。
お読みになっている方の中には、重箱の隅をつつくような話だと思われる方もいるかもしれません。
しかし、自然で読みやすい日本文を書く上で、的確な「てにをは」を使うことは、とても重要です。
以前、某大学大学院修士課程の中国人留学生が修士論文を執筆するのを、手伝ったことがあります。論文の中身ではなく、日本語表現について見てほしいということでした。
欧米人などに比べて、漢字が理解できるという点で圧倒的に有利な中国人ですが、「てにをは」には相当苦戦するようです。私が指摘した誤りも、「てにをは」が多数を占めていました。
外国人留学生なら間違っても多少大目に見てもらえるでしょうが、一流新聞の記者ともなれば、そうはいきません。
的確な「てにをは」を使ってほしいです。
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