第12話 珍妙コラム 第3弾
某全国新聞一面を毎日飾っているコラムについては、第8話と第10話で取り上げました。
本コラムは突っ込みどころ満載の場合が多いので、毎朝閲覧するのが楽しみです。
その期待に違わず、またやってくれました。下手な
まず第一噺は、漫画『タイガーマスク』を取り上げます。私は未読です。
主人公(プロレスラー)は虎の仮面を被っていますが、それを取ったら自分はただのノッペラボーだ。いつか自分の正体を明かさなければならないと思いつつ、それが出来ずに葛藤していた。と、コラム氏は言います。
第二噺は、「考えてみれば、3年間続いたコロナ下の生活にも通じなくはない。」で始まります。(傍点は引用者。以下同じ)
出ました! もったいぶった二重否定表現。
昔の日本陸軍などが盛んに使っていた「〇〇せざるべからず」という表現を連想しました。
「コロナ下の生活にも通じる」とまで断定的に言えることではないというなら、「通じるような気がする」などと言えば済むではないでしょうか?
第二噺は続けて、タイガーマスクがコロナ下の生活に通じる具体例として、2点あげています。
1) 顔が半分隠れるマスク
2) SNS上に、マスクの下の素顔を加工した写真の投稿が加速
そして、「振り返った時、思い出の顔がノッペラボーでは寂しかろう」と言います。
寂しいのは誰なのでしょう? コラム氏でしょうか? 不明確です。
また、コロナ下のマスク着用と、タイガーマスクを結び付けるのは、やや無理がありそうです。なぜなら、ネットで確認すると、漫画『タイガーマスク』のマスクは、すっぽりと被って、顔や頭全体を隠すタイプです。一方、コロナ対策としてのマスクは、鼻と口を覆うだけですから、その人が誰だか分かります。
ですから、「思い出の顔がノッペラボー」になることはないと思いますが、いかがなものでしょう?
第二噺はさらに続けます。
「……ここへきて、”無加工”を売りにしたり、素顔の投稿を通知で促したりする写真共有アプリが人気」だそうです。
そして、コラム氏は詠嘆します。
「素顔も復権の兆しかしらと勝手に安心しつつ、感染対策が不要になる日をただ願う」
「素顔の復権」などと、大袈裟ではないですか? ただ単に、新型コロナが5類に変更され、マスク着用などの対策が個人の判断に任されただけのことだと思います。
それに、コラム氏が「ただ願」っている「感染対策が不要になる日」は当分来やしませんよ。もちろん、2類の時とは違いますが、完全に新型コロナ前に戻ることは当分あり得ないと、専門家が言っていました。
また、「ただ願う」なんて、ジャーナリストとして、消極的すぎませんか? お坊さんじゃないのですから。
さて、第三噺は、同新聞に掲載された子供の詩を取り上げます。
中学生の詩だそうで、「うすっぺらーい紙の中/自分の本音隠してる(以下略)」などと、「先行きを案じてい」るそうです。
ただ、この詩が、詩全体なのか、一部を抜粋して引用したのか書いていないので、詩の趣旨を十分に読み取ることができません。
そしていよいよ、結語です。
「自分らしく生きるために、心を覆う無用の仮面は外したい。覆面ヒーローの『脱マスク』ほど難しくはないだろう」
第4話で取り上げた、願望の主体が不明の「~したい」が出ました。どうも、コラムや社説を書く方は、これがお好きなようです。意図的に、主語をぼかしたいのでしょうか?
それはさておき、この結論はいったい何なのでしょう?
自分らしく生きるために、心を覆う無用の仮面を外すですと?
ここに、意図的か否かは定かではありませんが、ちょっとしたすり替えがあります。タイガーマスクの仮面や、コロナ対策としてのマスクは、それぞれ明確な着用目的がありました。
それがいつの間にか、「無用の仮面」となっています。ちょっと、ずるいですよ。
また、「自分らしく生きるために、心を覆う無用の仮面を外す」とは、いかにも青臭い論だと思います。中学生が言うなら分かりますが。
誰だって自分らしく生きたいです。しかし、大人ともなれば、所属する組織、親族、地域など、いろいろな人間関係やしがらみの中で生きざるを得ません。時には、自分を殺すようにして我慢しなければならない場合だってあります。
結論が、安直すぎませんか?
このように中身の薄いコラムを、堂々と一面に掲載していることが、私には信じられません。
ミニコミ紙や同窓会の会報などでは、一番最後のページに「編集後記」が掲載されれていることが多いです。
それと同様、このコラムは一面ではなく、最後のページ、つまりテレビ欄の下の方に掲載するのが似合っていると思います。
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