第7話 もたついた文

 某全国紙に掲載された、無着成恭むちゃくせいきょう氏の訃報の一部です。


 「……。51年には、綴り方をまとめた文集『山びこ学校』を世に出した。」

 ここまでは、問題ありません。綴り方とは、作文のことです。

 

 上記の続きが、以下の文です。

「作品は、自分の考えをしっかりと生徒へ書かせる手法をとるという当時としては画期的な教育方法として、戦後の教育界に大きな影響を与えた。(以下略)」


 言わんとするところは理解できますが、どこか回りくどく、もたついた印象を受けます。主語と述語の呼応も、どこか変な印象です。

 

 細かい点から挙げると、

1)「自分の考えをしっかりと生徒書かせる手法」とありますが、「生徒」が自然ではないでしょうか?


2) この文の骨格は、「作品は」……「教育方法として」……「影響を与えた。」ということだと思います。

 しかし、「作品」は「教育方法」なのでしょうか? 「作品に現れた教育方法」なら分かりますが。


3)「作品」というのが、『山びこ学校』に収録された個々の作文を指すのか、『山びこ学校』という作文集を指すのか、はっきりしません。


 上記の文を私なりに修正するとしたら、下記のようになります。


 『山びこ学校』の作文は、生徒に自分の考えをしっかり書かせるという手法によるものだった。これは当時としては画期的な教育方法で、戦後の教育界に大きな影響を与えた。


 少しは分かりやすくなったでしょうか?

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