第21話「決戦! 魔族の下っ端」

 俺たちは無遠慮に魔族支配下の町へ突入した。その時ぶわっと気温が上がったような気がした。


「人間共! 我ら魔族のためにキリキリ働け! 死んだらアンデッドにしてやるぞ!」


 おー……なんともわかりやすい悪役だろうか、いかにも殺してくださいといった風体をした豚の魔族が人間達にむち打って働かせていた。


「マイナーさん、殺しちゃって問題無いですよね?」


「ああ、いいんじゃないか」


 俺がそう言うが早いか、マリアは剣でその魔族に斬りかかった。魔族の方も容赦していない様子だし問題無いだろう。一撃で上半身と下半身が分割された魔族を見てそう思った。


「チョロいですねえ! 雑魚風情が調子に乗って人間様に喧嘩を売るからこうなるんですよ」


 もう聞こえていないであろう豚の魔族に向けてマリアはそう宣言した。当然ながら取り巻きの魔族が襲いかかってきたので、俺はメイスで叩き潰していった。ケルベロスの方には力量の差が明らかなせいかわざわざ寄ってこない。下級魔族であってもその程度の知恵はあるようだな。


「なんだ! ガタガタ騒ぎやがって、氾濫した人間は殺せと言われているだろうが……おい……」


「魔族ですね! 死になさい!」


 飛びかかったマリアの剣を新しくやってきた牛型の魔族は牛刀で受ける。しかしマリアの膂力が桁違いで、剣をパキンと割ってそのまま縦一線に切り倒した。


 牛の魔物は名乗る間もなく真っ二つになった。さらば、名もなき魔物。


 そして手下の魔物が二体も死んだのに気付いたのだろう、飼い主であろう魔族がやって来た。


「なんだこの騒ぎは!」


「ああ、魔族さんチース、とりあえず死になさい」


「人間だと! フハハハ! 人間ごときが私に挑もうなどと片腹痛いわ!」


 ブウン


 マリアの振った剣から衝撃波が出て魔族の髪を切った。途端に緊張した顔になった。


「ふむ、下等な連中では勝てないはずだな。我はロノウェ! 貴様ら人間が簡単に勝てる相手ではないぞ」


「その割には随分私の攻撃にビビっていたようですね」


 マリアの言葉に痛いところを突かれたのか、ロノウェはロッドを構えた。


「食らえ人間! フレアストーム!」


「てい」


 気の抜けたマリアの斬撃でロノウェが出した炎の壁はかき消された。コイツがここの魔族のリーダーというわけではなさそうだ。


 心底見下した目をロノウェに向けるマリア、魔族の目にもようやく恐怖の色が宿った。


「ひ……ひぃ……ファイヤーボール! ストーンバレット! アイスジャベリン!」


 ロノウェは必死になって使える魔法を連発してくるが、マリアは軽くそれを切ると、全てが剣にかき消されていった。


「ざっこ、あなた本当に魔族ですか? まあいいでしょう。どうせすぐ死ぬやつに興味もわきませんしね」


「主様、止めますか」


 ケルベロスがそう訊ねてきた。


「まあいいんじゃないか。負ける様子は全く無いし」


「そういうものですか……」


 マリアはまずロッドを持っている手を切り落とした。悲鳴を上げるロノウェ、それを聞いて愉悦に浸っているマリア、もはややりたい放題だった。手の施しようもないとはこの事か、次にもう片方の手を切り落としその悲鳴を心地よく聞くマリア、もしもマリアが魔族側に付いたらと思うとぞっとせずにはいられなかった。


 足を二本切り、『ハハハハハ』と笑いながらロノウェを刺している、口から血反吐を吐いてもはや悲鳴すら出てこないようだ。


「グオオオオオオ」


 俺の方に魔物が数体来たので小物をメイスで潰して、少し大きいものはケルベロスの餌になっていた。


「なあケルベロス、魔物って美味しいのか?」


「不味いです、しかしこれくらいしか地獄には食べるものがありませんから」


「お前も色々苦労しているんだな……」


 勝手に召喚して不味いものを食わせるのは少し申し訳ないな……


「ぐぽぉ……」


 ロノウェもまだ血を吐くだけの余裕があるようなので、もうしばらくは放っておいても大丈夫だな。どうせまたマリアのことだから挽肉になるまで叩き続けるのだろう。それを止められないし、止める木もない。


「フハハハ! 雑魚です! 魔族が人間に蹂躙される気分はどうですか!」


「マリア、多分もう聞こえてないぞ」


「安心してください、耳は切り落としていませんから。でも目は切っても大丈夫そうですね」


 そう言ってマリアはロノウェの目をスパッと横一線に切った。もう苦しみの叫びも上がらなかった。


「うーん……悲鳴がないと寂しいですね、そろそろ殺してあげましょうか」


 俺とケルベロスは呑気にそれを眺めながら近寄ってくるゴブリンなどをプチプチ潰していた。ザクザクと切り刻まれてロノウェはすっかりと肉塊になった。


 そうしてようやく終わったかと思ったら、さっき倒した豚と牛の魔物もきっちりミンチにしていた。しばしそれを待った後、その二匹は『美味しそうですね』とケルベロスが言ったので餌にしてやった。


 そうして町で目に付く魔王軍の連中は片付いた。しかしまだ魔王軍の幹部は出てきていない、この町を開放するにはそれを倒す必要がある。俺は目標に向けて二人と一匹で進んでいった。

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