第18話「装備ガチャにピックアップ武器登場」

『装備ガチャに期間限定ピックアップが追加されました』


 俺はなんともいえない脳内の声と共に町を出て初日の宿泊地で目を覚ました。ここら辺は人間も魔族も少ない安全地帯なのだが、ピックアップとは何の事だろうか?


 そう考えながら回せるガチャ一覧を調べてみた。


『装備ガチャ、恒常ガチャ、キャラガチャ(未解放)』


 そう表示された。キャラガチャは未解放だそうなので、仲間を手に入れるには恒常ガチャのレアリティが高いものを引くしか無さそうだ。


「マイナーさん! ガチャを回しましょう! 出来れば魔族を軽く屠れる便利な県を希望します!」


「確率操作はできないけど、マリアが幸運スキルを使ってくれれば当たるかもな……」


 そんなわけで、道中の役目を果たしてくれる装備ガチャを回すことにした。『採掘スキルを使用します』の音声と共に地面からニョキニョキと石が生えてくる。便利なこと極まりないが、このスキルが役に立つのはマリアあってのことだ。


「はえー……いつ見ても奇妙な光景ですね」そう言ってツンツンとガチャ石を触っていた。こんなものを出すのは俺くらいのものだからな。


 十連一回分くらいガチャ石が貯まったし装備ガチャを回してみる、隣でマリアが幸運スキルを使用していた。


 金色の光が八個、虹色の光が七個、今までに比べれば信じられない確率でレア装備が排出された。光が収まると、フルプレートアーマーや、いかにも切れ味のよさそうな剣、果てはエリクサーが当たり前のように十本セットで出てきたりもした。便利便利、こんな便利なことがあっていいのだろうか?


「マイナーさん! 私はコレで行きます! ごっついのにすごく軽いんですよ!」


 見ればマリアは武器としては非常に変わった極太ブロードソードを持っていた。刀身の太さが通常のブロードソードの倍はあるそれを、木の棒でも振り回すようにブンブンと振っている。おそらくはアイツの力ではなくエンチャントされた魔法の影響だろう、心強い限りである。


 俺は一本のレイピアに目がいったのでそれを持ってみた。すると魔力が感じられ、試しのその辺の木にレイピアを向けてみると電撃が出て木を中ぐらいからへし折ってしまった。


「おおー……マイナーさんもなかなか渋い武器を選びますね。魔法が使えない人間でも扱えるんですね」


 どうやらそういうことらしい。便利極まりないな。


 レイピアを腰に下げ、マリアはブロードソードを軽く振り回しながら俺たちは進んでいくことにした。


 少し進むとポイズンスライムが出てきた。俺が魔法で凍結させてやろうと思うと、その前に横から大きな剣でスライムを叩き潰すやつがいた。


「マリア、スライム相手に物理攻撃をするのか……」思わずそう言ってしまった。


「でも倒せたじゃないですか」


 ピチピチと砕け散ったスライムは次第に動きを止めて消え去った。オーバーキルのような気がしないでもないが、味方としては心強いな。


「確かに倒せたけどさ……俺の魔法の方が簡単なんじゃないか?」


「でも私が魔族を倒すと気持ちよくなれるじゃないですか?」


 魔族への恨みで我を忘れてませんかね……本末転倒にも程があるだろう。


「さて、次へ行きますよ! 次はどんな化け物が出てきますかねえ……」


 普通に怖いことを言うマリア。魔族と戦う以上化け物は当然出てくるが、その合間の平和な時間を楽しもうと言うつもりは全く無いらしい。


 バーサーカー同然のマリアは喜々として出てきた魔物を潰しながら進んでいく。せめてもの魔物への救いは、ブロードソードで潰されると一撃で絶命するのでザクザク地道にマリアに切り刻まれるようなことが無いことだろうか。


 スライムが出ればスライムを、一角ウサギが出れば一角ウサギを、目に付いたものは残らず破壊していった。


「うーん、気持ちいい!」


 血の跡をつけながらマリアは進む、高も徹底的だとわざわざ俺が手を貸さなくてもどうとでもなるような気がする。しかし俺にはマリアが必要なので黙っておいた。

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