第14話「ヘイブン町への突入」

『この先、ヘイブン町→』そう書かれた看板が立っていた。もう既に空はすっかり黒く染まりつつあったが、看板は妙に綺麗で魔族の気配をまったく感じることはなかった。


「マイナーさん、腕が鳴りますねえ!」


「なんでウキウキしてるんだよ……どう考えても危険地帯に入ろうとしているんだぞ?」


 余裕綽々のマリアにそう訊ねてみたが、どこ吹く風と言ったようでまったく気にしていなかった。むしろ魔族がたっぷりいることに期待さえしているようだ。


 そこへゴブリンの大群が出現した。


「ギギ? ギギー!!」


「「「「ギー!」」」」


 雑魚だが数が多いな、俺は横を見ると、そこには残酷な笑みを湛えたマリアが楽しげに剣に手をかけていた。


「いやー来ちゃいますよねえ、これはしょうがない! 向こうから喧嘩を売ってきたのだから殺されても文句は言えませんよねえ!」


 ブウン


 鈍い音と共にマリアが振った剣から光線が出てゴブリンたちを切断していった。


「当然の如く殺すんだな……」


 魔族にかける情などないはずなのだが、こうも簡単に命を奪っていくと多少は気後れする。気にした様子も無くマリアは死体をぐちゃぐちゃにすることに腐心していた。たかがゴブリンを何度も何度も切りつけ、もはや魔族と言われないと分からないまでの肉塊にしていく。


「マイナーさん、殺し放題っていいですねえ! ハハハハハハ!!」


「お前、一応正当防衛で倒したって建前を忘れてないか?」


 そんなことを言っても、それが建前であることは誰の目にも明らかだった。


 そうしてゴブリンをミンチにしてから俺の方を向いて言う。


「じゃあ私たちの殺戮ショーの始まりですね! 少々役不足な相手ですが、この先にはせいぜい強い魔族がいるのでしょう、ぶっ潰してやりましょうね!」


 なんだかマリアの笑顔は邪悪な感じを持っていた。この調子だと魔族がぶちのめさせられそうだな……とこの先に待っている虐殺ショウを考え、ぞっとしたのだった。


「さてマイナーさん、武器は持ちましたね?」


「おう、そこそこ使えそうなやつだ」


「ではこの看板がご丁寧に立っていることですし、喧嘩を売りに行ってやりましょう!」


 俺がそっと目をそらしていた、『この先魔族領、人間の立ち入りを禁ず』というおどろおどろしい黒地に白文字で立っている看板を呼んで、俺たちは魔族領に突っ込んでいった。

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