秋に想う

少し肌寒い朝

金木犀の香りに誘われて歩く


今は亡き祖父の植えた木の下を

祖母が草抜きをしていたあたりを


父が愛したテランセラの赤は枯れてしまった

手入れが行き届かない庭には雑草が伸びている


いつのまにか

よわいだけはあの頃の彼らに近づいていて

なのに心は彼らの傍らに置いたままのようだ


孫にだけは優しかった厳格な祖父のうしろ姿を想う

いつも茶の間で手仕事をしていた祖母の皺だらけの笑みを想う

無線室でモールス信号を打っていた父の、趣味を楽しむ横顔を想う


なぜか恋しい秋

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