第14話 好きになってる?

 私はこの1週間、朝のバスを一本早いやつにしている。

7時12分

18分早いというのは、単純に18分早起きすればいいのだけど、体が慣れないというか、ペース配分がうまくいかない。


寝グセの人は、私がいつもあの時間にバスに乗ってたのを知らないだろうし、初見で顔を覚えられるほどの特徴的な顔でもないから、いつも通りにヒールを履いて、何食わぬ顔でバス停に並んでいればいいのかもしれない。


だけど、無性に恥ずかしくて、顔を見たら赤面してしまいそうだ。

こうして1週間、あの人に会えないと、いつもバスのつり革をつかんで立っている横顔とか、後ろ髪のハネ方とか、毎朝見るのを楽しみにしていたことに気づいた。

それが、アレを落としてあの人に拾われるっていうハプニングで、ドキドキ ドキドキして、これは吊り橋効果ってやつみたいなものなのかもしれないけど、なんだか、あの人のことを好きになってるんじゃないか?って思う。

あの人が見ず知らずの私を好きになってくれることは絶対ないし。

とにかく、ちょっと、あの人から離れて、自分自身のほとぼりを冷まそう。

名前も知らないあの人を好きになるのはダメだ!

今までの反省をいかして、好きになるのは、絶対にやめよう。

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