第6話 ヒールというアイテム

 私は、大学生になった。

高校生の時の一件から、男子自体が苦手になった。

この2年半は、男子と話をしたこともない。


今まで、何人の人を好きになってきたのだろう。

きっと、私は惚れっぽいんだ。

すぐに好きになる。

だけど、誰も私を好きになってはくれない。

私が、好きになった人は、私じゃない人を好きなんだ。


人を好きになること、恋をすることが怖い。

絶対にうまくいかないし、傷つくだけだから。


だから、私は男子と一切かかわらないことにした。

男嫌いな人を演じることにした。

好きになってしまうのが怖いから、好きにならないようにしていた。


地元ではなく、県外の大学に進学した。

アパートで一人暮らし。

恋をすることが怖いと言いつつ、都会のキラキラしたオシャレなデートに憧れもあった。

同じ高校の同級生で、この大学に進学した人はいなかったから、誰も私を知らない。

なら、いっそ、はじけてみてもいいかな?

ギャルになってみる?

いや、私はそんな陽キャではない。

自分を変えるのって難しい。

高校生の頃と変わらないような感じでいる方が楽だ。

真面目でクールで男嫌い。

それでいいや。

ひとつだけ変えたことと言えば、10センチのヒールのパンプス。

高校生の頃は、スニーカーだったけど、大学生になって初めてヒールを買って履いている。

なんとなく、背のびをしている緊張感もある。

コツコツと、ヒールの音を響かせて歩く。

真面目でクールで男嫌いキャラには、ヒールはいいアイテムだった。




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