第5話 佐嶋あおい

 私は、いつも好きな人がいた。

と、言ってもすべて片思いだったけど。


小学生の時は、同じクラスに好きな男子が4人いた。

頭が良い、幸照くん。

色白でキレイな顔の、賢ちゃん。

足が速い、かっちゃん。

背が高くて、少年野球のピッチャーをやってた、東村くん。

この4人の中で、誰が1番好きなのか、その時々で変動していた。

だから、この中の誰かに、告白するというほどではなかった。


中学生になって、3年生の先輩が、とにかく輝いて見えた。

気になる先輩が3人いた。

でも特に何か行動を起こすことなく、先輩たちが卒業して、好きな気持ちも終わった。


2年生になって今度は、同じクラスの村田を好きになった。

今までで1番、はっきりとこの人のことを好きなんだ!って自分でも意識した。

気持ちを伝えるにはどうしたらいい?

まず、話をしたこともないから、話せるような間柄になることだよね。

同じ班になったのをきっかけに、少し話せるようになった。

告白、しようかな?

初めての告白。

なんだか、出来るような気がした。

村田も多少なりとも私のこと嫌いではなさそうな気がしていた。

村田の誕生日が近かったから、プレゼントを買って、手紙を添えて、で、好きですって、伝えよう。


その前日、村田がちょっといい?と私に聞いてきた。


「あのさ、頼みがあって、明日、夕方の5時に中央公園の時計の前で待ってるから、加藤を連れて来てくれない?」


途中まで、ものすごく、ものすごい、ドキドキして、最後でズッコケた。

いや、私じゃないんかい!!って。

加藤というのは、加藤佳美ちゃん。

私の親友の子。

つまり村田は、佳美ちゃんのことが好きなのだと知った。


これが、失恋というものか……

告白もしていないのに、砕け散った。

あきらめるには、どうしたらいい?

村田と話さないようにした。

段々と距離をおいて。

って、同じクラスだから、普通に目に入る。

だけど、もうこれ以上好きにならないように。

少しずつ、少しずつ 諦めていった。


高校生になり、部活が一緒の新野くんを好きになった。

高1の秋、思いきって告白した。


「えっ?ごめん。俺、玲奈とつきあい始めたんだ。知らんかった?」


玲奈とは、津田玲奈ちゃん。

同じ軟式テニス部の子。

知らなかった。

知ってたら、告白なんてしなかったのに。



それからは、誰も好きになっていない。


好きになっても、その人は、私を好きになってはくれない。


なら、誰も好きにならない方がいい。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る