テンダーブルーの箱庭
伏目しい
0 プロローグ
二〇一三年十二月十日(火)雨のち曇り
今日は最悪の日だった。
何もできず、午後はひたすら階段に座り込んで震えていた。
もし風邪を引いてしまったらさらにつらくなるとわかっていても、動くことができなかった。
嫌だ。
こんな自分が本当に嫌だ。
こんなのはただの甘えだ。我儘だ。
必死なふりをして、結局は楽な方に流れているだけ。
自分でどうにかするつもりもなく、最後は他人をあてにしている。
そんな自分が恥ずかしいはずなのに、何も変えられない。
いや、もしかしたら、何も変える気がないのかもしれない。
夜中になると無性に腹が立つ。
惨めで怠惰な自分を捨ててしまいたくなる。
捨ててしまいたい。
こんな身体。
何一つ思うように動かない、役に立たない身体を捨てて、新しくなりたい。
眠る前はいつも耳の奥がうるさい。
脳を焼き切るように熱が集まって、身体の奥からガンガンと響く。
頭は熱いのに手足は指先まで冷え切っていて、毛布を重ねても寒さで眠れない。
水が欲しくてコップに何杯も飲み干す。
身体はもういらないと訴えているのに、水を注ぐ手は止まらない。
何かが欲しい。
何かが欲しいのに、それが何かがわからない。
わからない代わりにひたすら水を飲む。
どれだけ飲んでも満たされない。
一体、私はどうすればいいのだろう。
わからない。
わからないままに泣きながら水を飲む。
とにかく今は、喉が渇いて仕方ないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます