第22話 そばにいたい

 野球部のマネージャーになれないのかな? もしマネージャーが無理なら、お手伝いみたいなものでも構わないから。


 少しでも中村くんのそばに居たいと思う。できればいつも近くに居たい。いろいろな方法を考えてみた。その挙句の由美の結論であった。


 告白したものの見事に振られてしまったけど、やっぱりまだ諦めきれない。


 だって私のこと嫌いって言われたわけじゃないし、他に彼女かいるからって言われたわけではない。


 「ゴメン! 悪いけど今は野球に打ち込みたいんだ・・・・・」そう言われただけなのだから。


 いつもは元気娘みたいに言われているけど、でもやっぱり私だって普通の女の子だから、すごくショックだった。


 中村くんから交際を断られて3日間は、あんまり眠れなかった。泣いてばかりいたし、普段はいっぱい食べるご飯もほとんど食べられなかった。


 4日目には辛い気持ちは少し和らいできた。だっていつまでも泣いていたってしょうがないから。


 仲間のみんなに本気じゃなかったけど、諦めたって口に出したことで、やっと気持ちの切り替えができたの。


 でもね、やっぱり中村くんのこと好きだから絶対に諦めきれないし、何回振られたって構わないから、挑戦しちゃうって決めたの。


 だってまだ彼女はいないんだし、嫌われた訳じゃないんだもの。


 でも一度断られたから、2度目の失敗はもうしたくない。でも彼から離れてじっと持つだけじゃあ、忘れられてしまうと思う。


 それにあんなにカッコいい彼だから、他の女の子がいつまでもほっとくはずがないもの。


 だから、だからこそ忘れられないように、他の女の子に取られないように、いつも彼のそばに居たいの。


 野球部のマネージャーとかお手伝いとか、いつも彼の近くにいて、ガンバってる私を見ていて欲しいの。


 7月中旬、間もなく夏休みに入る直前に、偶然マネージャーポストが空いた。もちろんそんな情報を、由美が知るところではなかったが・・・・・


 うちの野球部のマネージャーは3人いる。3年生のチーフと2年生のサブマネが2人いたが、サブの1人が父親の仕事の事情で、転校したためだった。


 3年生のチーフマネージャーの弟が、偶然由美と同じクラスだったため、どんな役割でも構わないから、野球部に入部させて欲しい旨のお願いをしていた。


 7月初めの蒸し暑い朝のことであった。由美が登校し教室に入り自席に座ると、すぐに後ろの席から声がかかった。


 「おい木村、お前、この前俺に野球部のお手伝いがしたいって言ってたよな。昨日アネキに話してみたら、今日の放課後に、部室に来るようにって言ってたぞ」


 「えーっ、本当?」


 まさかすぐにチーフである姉さんに話してくれるとは思っていなくて、嬉しさと驚きでつい大きな声を出してしまった。


 たぶん野球部入部希望の答えをいただけるのかもしれない。放課後ドキドキしながら部室のドアをノックした。

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