第19話 心壊れて

 亜紀ちゃんとは親友だし、相変わらず仲良しグループのままだけど、なんか最近は以前より明るくなって、可愛さが輝いてるみたいな気がする。


 お昼ご飯もみんな一緒に食べて、お話なんかもしてるけど、風太くんの話は全然出ない。二人とももう付き合い始めているのかな?水奈には関係ないことかもしれないけど気になるの。


 風太くんとのあの電話でのやり取りがあってから、何日かはほとんどご飯なんか食べれなかった。でもお母さんがすっごく心配して、いろいろ声をかけてくれたの。


 お父さんはいつもあんまり話はしないけど、水奈がなんか悩んでるみたいだと分かって一言だけ声をかけてくれた。


 「水奈、なんかあったらいつでも話しなさい。お父さんもお母さんも、いつだって水奈の味方だからね」


 ありがとう。水奈泣いちゃった。ごめんねお母さん。ごめんねお父さん。心配かけちゃって。水奈がんばって前みたいに元気になるから、もう少しもう少しだけ待ってね。


 水奈はソフトボールに打ち込むことにしたの。そうすれば少しの時間だけでも、哀しい気持ちが忘れられそうな気がするから。


 でも本当は、水奈の気持ちは変わらないよ。だって小さいときからずっとずっと風太くんだけを想っていた。風太くんが誰よりも大好きだったし、風太くんを信じていたから。


 たぶん、いや絶対にこれから一生、風太くんのこと忘れられないけど。何とか諦めるようにがんばるね。本当は死んじゃいたいくらい哀しいけど。


 写真のアルバムに写る笑顔の水奈の隣には、必ず風太くんの笑顔があった。もう想い出さないように、風太くんが写る写真を捨ててしまいたいけど、捨てちゃうと水奈の写真もみんな捨てなくちゃならない。


 本当に兄妹みたいに、姉弟みたいに、いっつも一緒だったんだね。離れられない二人でひとつみたいに、ピッタリくっついていた。


 恥ずかしいけど、風太くんとチューしてる写真もあったの。捨てられないよ絶対に。水奈の今までの人生のすべてが、風太くんとの楽しい想い出なんだもの。


 風太くんとのことを考える度に、風太くんの顔を想い出す度に、心が痛くて壊れそう。ううんもうずっと壊れたままなんです。


 忘れなくちゃいけないけど、絶対に忘れられない。別れなくちゃいけないんだけど、絶対に別れたくない。せめてお話くらいしたいんだけど、怖くて話せないの。


 今まではいつも、風太くんが隣にいるのが当たり前だった。風太くんが隣にいてくれることさえ気が付かなかった。


 絶対に失くしちゃならない、一番大事な風太くんを忘れちゃっていた。そんなことさえ気が付かなくなるほど、水奈ってバカな女の子だったんだね。


 神さま、水奈はどうすればいいの?


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