第16話 親友でいたい

 昼休み時が終わるチャイムが鳴って、続きは来週の月曜日の昼休み時間ってことになったの。


 前日の日曜日は、パパとママと弟と4人で久しぶりのテニス。ママはテニスがとっても上手くて、大学時代はテニス部のキャプテンで国体にも出たんだって。


 パパはママと付き合い始めてから、ママに教えてもらったので、テニスの腕はそこそこかな。もちろんママには全然勝てないけどね。


 家から20分ほどの距離に会員制のテニスクラブがあって、お休みの日はなるべく運動しようってママの提案で家族全員会員になったの。


 家族揃ってテニスをするのは月に1〜2回程度かな、ママとパパは週1は必ずテニス。亜紀がテニスを始めたのもそんな環境のせいで、物心ついた時からラケットを振り回していたみたい。


 亜紀と弟の智のペアとパパとママとのペアで試合をしたの。


 智は亜紀とは3つ違いの中学一年生。もちろんテニスクラブに入っています。キャリアは亜紀よりも短いけど、テニスの腕前はもう敵わないかな。


 でもね亜紀と智のペアは、悔しいけどパパとママのペアにまだ一度も勝ったことないの。


 智はとっても優しい弟で、いつも亜紀のことを心配してくれる。それにすごい女の子にモテる。バレンタインなんか、たくさんのチョコをもらってる。


 亜紀にボーイフレンドがなかなかできないことも智の心配の1つみたい。いつも亜紀に言ってくれるから。


 「お姉ちゃんは、もっと自信を持っていいと思うよ。弟の俺から見ても優しいし可愛いんだから」


 ありがとう。お姉ちゃんがんばるね。


 今日は月曜日。お昼休みには友達と屋上で一緒にご飯食べるの。先週の風太くんの話の続きがあるのが気が重い。


 なんか水奈ちゃんの顔をまともに見れないの。どうしても亜紀が悪いことしてるみたいな気がして。


 だって水奈ちゃんと風太くんが『ただの幼なじみ』ということが、やっぱり信じられないの。すごく嬉しいけど、もしかしたら水奈ちゃん、無理してるんじゃないかな。


 今日のお昼休みには、水奈ちゃんにちゃんと確認できたらいいな。じゃないとこれから、水奈ちゃんとの仲が壊れちゃう気がするもの。


 亜紀は風太くんのことすごく好きだけど、水奈ちゃんのことも、同じ女の子として大好きなの。


 大人しくて他人には優しいし、スポーツもすごい。それに顔も可愛いしスタイルもとっても良い。


 もし亜紀が男の子だったら水奈ちゃんみたいな女の子を彼女にしたい。そんな風に思っちゃうくらい。


 だから水奈ちゃんとは、これからもずっと親友でいたいの。


 気が重い月曜日の朝、いつもの通り満員電車に乗り込む。今日もめちゃくちゃ混んでいて蒸し暑くてイヤになっちゃう。


 満員電車は嫌い。だって知らない男の人にピッタリくっつかれたり、嫌な思いをすることが何回かあったから。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る