第14話 近づきたいの

 亜紀の彼氏は、できればうちのパパとは全然違うタイプで、頼りになる強い男の人がいいなぁ。


 亜紀のパパはとっても優しい人なの。生まれてから今まで、一度も怒られたことないんだよ。いつもニコニコ笑って、亜紀の話は何でも聞いてくれるの。


 でもパパはね、ママに頭が上がらないみたい。旅行の行き先だって、買い物だって何かを決めるときは必ずママなんだから。


 だからかな、パパのことは大好きだけど、彼氏になってくれる人は、優しいだけじゃなくて強い男の子がいいな。


 そんなこと考えていくと結局、風太くんにたどり着いちゃうの。しょうがないよね、だって憧れてるんだもの。


 いつか風太くんに振り向いてもらいたい。いつもそう思いながら勉強でがんばり、テニスクラブでもがんばっていた。


 でも亜紀は風太くんのこといつも見ているのに、いつも思っているのに、全然近づけないの。


 そんな亜紀にもやっとチャンスが巡って来たみたい。偶然だけど同じテニスクラブの仲間たちと恋話していたの。


 その仲間の中の一人が、風太くんの大ファンでファンクラブ作ったって話を聞いた。


 ファンになったきっかけは、その女の子がコンビニで買い物のお金が足りなかった時に、偶然そのコンビニにいた風太くんが助けてくれたんだって。


 やっぱり風太くんってカッコいいし、優しい本当に騎士みたいな男の子なんだな。


 「ねえ、亜紀も夜野くんのこと知ってるよね。素敵な人だと思わない?」


 そう聞かれた時に亜紀も思わず本音で答えちゃったの。


 「夜野くんって頭は良いし、運動は万能でカッコいいですよね」


 「やっぱり亜紀もそう思ってたんだ。じゃあ決まりだな。亜紀も夜野くんのファンクラブに入ってよ」


 「えーっだめだよ。私は夜野くんと一度も話をした事もないし、夜野くんのことよくわからないし。私そういうの苦手なんだもの」


 「亜紀いいのよ、別に話なんかしたことなくても。夜野くんのことが好きで、応援する気持ちさえあればオーケーよ」


 恥ずかしいから何度か断ったんだけど、結局は押し切られて。しかもいつの間にかファンクラブの副会長に。


 でもどうせ自分ひとりでは、絶対に風太くんに声なんかかけられないし、おんなじ気持ちの女の子だったら、一緒に風太くんのお話をできるかもしれないから。


 でもね、水奈ちゃんのことがとっても気になるの。だって水奈ちゃんって背は高いしキレイだし、運動神経も良いんだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る