第13話 憧れて

 中学に入った時からずっと憧れていたの。いつもいつも真っ黒に陽に焼けた男らしい顔が、頭から離れたことがない。


 もちろんそんな想いは、まだ誰にも話したことはないんだけど・・・・・


 小さい時から親戚のおばさんや近所の人たちから可愛いと言われてきた。だけど自分じゃあ可愛いなんて思ったことは一度もない。


 本当はね、身長がもっと高くなりたかった。鼻がもっと高ければといつも思っていた。女性らしく胸ももっと大きくなって欲しくて、大きくなる体操もやったの。


 でもね、あんまり変わらない。なんか目が大きすぎるし、クッキリした二重瞼よりも切れ長の目が羨ましかった。


 毎日、何度も鏡に映る自分を見て思っていた。もっと可愛ければ、もっとキレイだったら、きっとあの人も振り向いてくれるかもしれないって。


 水奈ちゃんが羨ましかった。小さい時からいつもあの人と一緒。当たり前に二人で手もつないで・・・・・


 あの人のこと、いつから好きになったのかは覚えてないの。気がついたらいつも彼のことを見ていた。


 頭は良いし、スポーツは万能、背は高くて男らしいし、それにとっても優しそうなんだもの。


 白馬の王子様なんかじゃなくて、まるで映画に出てくる強くて逞しい騎士みたいな、亜紀の憧れの夜野風太くん。


 中学の時は、時々男の子から誘われたり、メールやラインを聞かれることも多かった。


 でもそれはモテるからじゃなくて、たぶん気軽に声をかけやすいタイプだったのかもしれない。


 多少成績が良かったのは、みんなよりも必死に勉強したからだし、明るかったのはそう見えるようにいつも演技していたの。


 でもね本当の亜紀は、すごくコンプレックスが強くて内向的なんだよ。人前で話すのなんかとっても苦手なの。


 いつもみんなが亜紀のことを見ている気がして。変なこと言ったりするとバカにされるか嫌われちゃう、そんな気がしていたから。


 言葉をよく選んで、誰の気にも触らないように、おかしなことを言わないようにしゃべる。もちろん他人の悪口なんか絶対に言わないよ。


 だから頭が良くて、いつも明るくて、絶対に悪口も言わない良い子って、イメージを崩さないようにしていた。


 亜紀としては、男の子はどちらかというとアイドル系の可愛い男の子よりも、ちょっと野性的な男らしい人が好きかな。


 だって亜紀は弱虫で泣き虫だし、甘えん坊さんだから、彼氏ができたらいっぱいいっぱい甘えたいだもの。

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