第11話 事件と出会い
大きな電車の揺れを利用して、乗客の間をかき分けて無理やり前に進む。迷惑そうな顔をして睨まれたが構わず進んだ。
3回目の揺れで、なんとか女学生の左後ろにたどり着いた。
水奈ではない。水奈は163cmくらいだけど.もう少し小柄の女学生だった。誰だかわならないけど、ウチの高校の制服着てるから、助けてやらなくっちゃ。
上から覗き込むと、女学生の後ろに張り付いたサラリーマン風の中年男の手が、お尻のあたりでモゾモゾ蠢いていた。
「ヤメろよ」
170cm位の中年男は、聞こえないふりをして、相変わらずフザケた作業を続けている。
「おい、ヤメろって言ってんだろ」
調子こいてる中年男に、ムカついて少しデカい声で怒鳴り、男の左肩を掴んで女学生から引き離した。
なんだよって顔して、オレのことを睨んだが、オレも強く睨み返した。
電車が駅のホームに滑り込み、下車する乗客の流れに合わせて、中年男はホームに逃げて行った。
追いかけるようと思ったが、まだ高校のある下車駅ではないので、とりあえずは追っ払ったから良しとした。
「おい、大丈夫か?」
女学生に後ろから声をかける。振り向いた女学生は、なんとあの亜紀ちゃんだった。
よほど怖かったのか、緊張で青白くなった顔。大きな目が今にも泣き出しそうに涙で潤んでいた。
「あ、ありがとう、夜野くん」
「変なことされたら、ちゃんと声を出さなくちゃダメだよ。黙ってるといつまでもいい気になって、しつこく追いかけてくるんだから」
「うん、わかってたけど、でも怖くって声が出せなかったの。ごめんなさい」
ホームから乗り込んでくる新たな乗客の動きにあわせて、亜紀ちゃんの肩を掴んで自分の方にグルリと体を回した。
車内は、あっという間にまた満員状態。亜紀ちゃんをまるで抱き抱えるように向かい合う。
「オレに謝んなくてもいいよ。でも今度やられたら、ちゃんと声出さなくちゃ」
「はい、本当にありがとう」
こんな近くで見るのは初めてだった。可愛い女の子だと思っていたけど、近くで見ると、ドキっとするほど可愛い。
それにオレの体に押し付けられた亜紀ちゃんの体、抱き枕みたいに柔らかい。体が小さいのに結構肉付きが良くて、あったかいし、しかもいい匂いがする。
あんまり女の子と密着することって無いからな。ちょっとドキドキしちゃうぜ。
高校のある下車駅までは、何も話せなかった。水奈が変な話するから意識しちゃったのかな?
ホームに電車が滑り込み、どっと大量の乗客がホームに流れ出した。
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