panasi-a
ㅤ青空を見て泣きたくなって、来世は道端で溶けるナメクジになりたいと思った。
ㅤ非日常的な日常を送りたいと、願ったことがあるだろうか。私はある。ずっと、きっと叶わない夢を追っている。
ㅤ夢を見るのはいけないことだと言った後輩の、その裂けた喉から覗く舌は、ナメクジのようで、けれどもちっとも可愛らしくはない。夢が金で買えると言われたら、どうするだろうか。手を伸ばさずになどいられるだろうか。私にはできない。渇くほどに溺れて求めたそれが目の前に差し出されたのなら、21グラムの幻想などいくらでも差し出してみせる。
ㅤ先輩のことが好きですと奏でた唇は、紅をさしたよりもずっとずっと赤い。先輩は赤が似合いますねと言われたから、私は赤を一度も纏わなかった。約束をした指は散らばって、愛を灯した瞳は伽藍堂になった。可哀想な、可哀想な少女を捧げてまで叶えたかったものは、なんだろう。お前らにわかるだろうか。
ㅤ来世は夢すら見れぬようにと願いながら、赤の滲んだナイフを自らの喉に添える。
「先輩」
ㅤ涼しい風のような声がして、添えられた白い手に、また止められる。
ㅤ日常を、あの地獄のような日々を返してくれと言った叫びを呑み込んで、非日常が笑った。
ㅤ喉元に、蛆のような指が這う。
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