異世界召喚
ㅤ懺悔します。
ㅤ私は罪を犯しました。だけどもちっとも後悔などしていないのです。
ㅤ聖女が遣わされるとお告げを受けた日は、晴天でした。じりじりと照りつける金色の日の下で、私はそのときを待っていました。
ㅤ貴女は、想像していたのとは少し違う姿でそこに現れました。目を開けた私のすぐ目の前にあったのは、しなやかな四肢ではなく、赤黒い球体でした。両手で持ち上げられるほどのそれを見つめていると、不意に、球体が身動ぎし、そして、二つの蒼い目が現れました。現れた、という表現はおかしいかもしれませんね。貴女は目を開けただけなのでしょう。眠りから目覚めたばかりのようにぼんやりとした瞳を見つめ、そこで私は、球体に巻きついている絹糸が貴方の髪であることに気が付いたのです。呆然と自らを見つめる私に気がついたのか、貴女は、目元に甘やかな光を浮かべました。それは、太陽のような微笑みでした。ああ、なんということでしょう。この小さな肉の塊は、貴女なのです。
ㅤやはり召喚は、成功したのです!
ㅤその瞬間、私は巫女であることも忘れ、貴女に駆け寄りました。ああ、なんて、なんて可愛らしい。こちらをギョロリと覗き込む、貴女の双眼の愛らしいこと。前よりずっと鮮やかな紅色の頬の美しいこと。貴女は何も変わっていません。夢に見た姿そのものです。想像よりもずっと小さな肉の塊になってしまっていても、降り注ぐ慈雨のような声が失われようと、貴女は貴女でした。
ㅤ私は、貴女を傷付けないように抱き抱え、そのまま神殿を飛び出しました。
ㅤずっと、ずっと会いたかった!
ㅤ夢の中で貴女が微笑みかけてくれたあの日から。手の中の温度を少しも逃がしたくなくて、ぎゅうと抱え込んで走りました。
ㅤ家に着いたとき、腕の中の貴女は息をしていませんでした。
ㅤ私、貴女と一緒にしたいことが沢山あるんです。ねぇ、まずはどこから行きましょうか?
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