10話 私たちのDIY!
D.I.Y計画!
大学の廊下にはまだ誰も生徒がいなかった。
丸窓から差し込む朝日は気持ちよくて、空気はひんやりして美味しい。
職員室から借りてきた銀の鍵をがちゃがちゃやる。部室の扉を開けて電気を付ける。ホワイトボードに太いマーカーでD.I.Y計画と書いた。
数日前に私が提案した計画だ。
きっかけは須磨寺の落語会だった。あの日は本当にたくさんのお客さんがいて笑い声で溢れ返っていた。いい雰囲気だった。だけどやっぱりいなかった。今までもそうだ。ずっといないんだ。
客席に同年代がいない。
おじいさんが孫を連れてくるぐらいで、高校生や大学生、二十代も三十代もほぼ見かけない。先輩ファンたちは尊敬している。齢を重ねても想像の世界で笑えるのは凄いことだ。でも私たちより先に必ず逝ってしまう。
落語会は基本的に空席が多い。お姉さんの時はもっと酷かった。このままでは落語ごと死んでしまうかもしれない。だったら私たちにできることを探そう。そうして立案したのがこの計画。
『どうしたら・今よりもっと・寄席にくる?』略してD.I.Y計画だ。
今日はその作戦会議を行う。そのためには必要なものがある。リュックのジッパーを開けて爽やかな緑色の箱を取り出す。後ろで扉の開く音がした。ぽーんと明るい声が飛ぶ。
「おはようほたる。ねえ、お菓子なに持ってきた?」
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