7話 心つながる大阪旅

ドキドキ四人旅

 大学生の夏休みは九月まである。そして今日がその最終日。


 平日の十時だ。九月の半ばだ。思ったとおり電車は空いていた。私たちはいつものように、ボックス席を四人で埋め尽くす。


 しずくさんは長い髪を垂らし、うららさんの肩に頭を乗せて秒で寝た。きくりちゃんは景色に興味津々で、きょろきょろと目を忙しなく動かしてる。私は地図と睨めっこしてる。


 私たちの乗った電車は今、大阪へ向かっている。


 私は地図をもう一度よく確かめた。というのも、今日の旅を計画したのは私だからだ。うららさんとしずくさんには、いつかお返しがしたいとずっと考えていた。どうしたら喜んでくれるだろう?


 そんな話を電話でしていると、きくりちゃんも手伝ってくれると言う。そうして一緒に計画を練ったのが今日の旅、大阪落語旅だ。


 なんでも大阪には、ガイドブックに載っていない落語ファン垂涎すいぜんのスポットがあるらしい。もちろん『寄席』も。


 ――喜んでもらえるかな。ちょっぴり不安だ。


 もっと不安なのは県外へ行くこと。この間まで高校生だった私にとって、大阪は海外ぐらい遠い。心の距離が遠い。


 未知の場所への不安とワクワクがごっちゃになる。


 でも今日はみんながいるんだ。まだ知らない景色を一緒に見れる。そう思うとワクワクが不安を跳ねのけた。電車もごとごと跳ねてる。

 

「そろそろ着くよ!」


 アナウンスが『大阪梅田、終点です』と告げる。速度が緩やかになり、やがて完全に止まる。電車の重いドアがゆっくりと開く。楽しさでいっぱいの落語旅が始まった。

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