四人の小さな旅
旅の目的地、そこはオアシスだと言う。
太陽をいっぱい浴びた銀の列車は揺れる。四人掛けの椅子はぴったり埋まっていた。向かい合わせのボックス席に、みんなで一緒に座れることが妙に嬉しかった。
流れる車窓から街並みが消えてゆく。のどかで緑豊かな自然が広がる。そうして終着駅に着いた。三十分で着いてしまった。
駅を出る。ギラっとした太陽を浴びた。
「オアシスや」
さっきまでの自然はどこに行ったんだろう。突然、街がぽっこりと出現した。キレイに整った街並みだけど、せかせかしていない。ゆったり広々としている。歩道もめっちゃ広い。
中央には突き抜けるような大通り。目線をずーっと先へやると、小っちゃな城が見えた。ケーキみたいにまっしろな城がぽつん。
「ようこそ。ウチのふるさと姫路へ」
「ええとこやね」
「でしょ?」
きゅるるる。しずくさんのお腹が鳴った。お昼の十一時。
「きくりちゃん、ええとこある?」
「任せてくださいっ。姫路と言えばあのお店がありますから」
◇
注文してから一分も経たなかった。目の前にどんぶり鉢が並ぶ。姫路名物えきそば。たっぷりと立ち昇る湯気を顔に浴びると、出汁のいい匂いがした。「はふう」と小さな声が漏れる。四人でハモる。笑い声も。
「いただきます」
黄金色の出汁がぷかぷか揺れている。黄色い中華麺が泳いでる。出汁を吸った天ぷらはほわほわ。ネギの緑が食欲をそそる。天ぷらもネギも麺も纏めて箸ですくう。そして一気に啜るっ。
するすると入る入る。ずるずるずずず。ごくごくごっくん。
――はふう。優しい味がじんわりと胃に染みわたった。
たぶん今とろけきった顔をしてると思う。それぐらい幸せだった。目の前で小麦色の手がぶんぶんしてる。それで我に返る。
「ちょっとちょっと、みんな落語忘れてない?」
「えへへ。そうでした」
まだメガネに水滴が残るうららさんは、額の汗を拭い、コップの水を飲み干してから言った。
「さて。姫路に来たのなら、行かねばならぬ所がある」
「あそこやね。うららちゃん」
二人は目を合わせて頷く。
「行こう。落語の聖地巡礼に!」
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