ロスト・ガール

瀬戸安人

ロスト・ガール

 ゆびわ、なくしちゃったの。ままにもらった、だいすきなたからものなの。


 その女の子はべそをかきながらそう言った。

 ああ、面倒臭い事になっちゃった。よりにもよって、こんな面倒臭い迷子だなんて。

 何だって、あたしはこんな事に巻き込まれてばっかりなんだろう。厄介事を背負い込むなんてまっぴら。

 こんな子は、知らん顔して放っておけばいいんだ。その方がいいのはわかってる。

 ・・・・・・わかってるのに、わかってはいるんだけどなぁ。

 もう、そんな目で見ないでよ! わかったわよ! 一緒に探してあげるわよ!

 ・・・・・・ああ、あたしもお人好しのお節介だ。こんな風だから、この子みたいなのが寄って来ちゃうんだ。

 何でもないわよ。こっちの話。それで、何か手がかり、っていうか、どこでなくしたの? わかんない? ああ、面倒だわ、これは・・・・・・。


 はぁ。

 三時間! 三時間よ!

 アテもないのに街中をあっちこっち探し回って。キョロキョロしてるから、周りの人はヘンな目で見るし。歩き回って足は痛くなるし。疲れたから休もうとすると、その子は泣きそうな顔して、あたしの事をじぃっと見るもんだから、のんびり休憩もしてらんないし。ホンっト、参っちゃうわよ!

で、やっとの思いで見っけたのは、道路脇の植え込みの中。転がってって、草陰に入っちゃったから見つかんなかったんでしょ。

 はぁ、疲れた。


 でもね、探し物が見つかって、その女の子、すごく嬉しそうに笑って、ありがとう、おねえちゃん、なんて言ってさ。そういうのって、やっぱ、ちょっと嬉しいかな。


 その子が宝物のオモチャの指輪を持っていなくなってから、あたしは探し物を見つけた植え込みからちょっと離れた所、道路脇に供えられた花束に目を向けた。

 ここから、こんな方にまで飛んで来ちゃったんだね。きっと、怖くって、痛かったよね。


 あたしはもう一回、女の子が消えてった方を振り返って見た。

 その姿は、もうどこにもない。

 バイバイ。もう迷子になっちゃダメだからね。

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ロスト・ガール 瀬戸安人 @deichtine

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