閑話『魔王生誕』
横浜ダンジョンの最下層。そこに、この世界に4人、日本に2人しかいない召喚士のSランク、日向 亜紀はいた。
突如として発生したスタンピードを鎮圧するためだ。
彼女は配下の魔物を各階層に配置、暴走した魔物を狩らせ、本人と主戦力は最速で最下層まで駆け下りてきた。
「思ったよりも早かったね」
「ウチは効率って言葉が好きなもんでな。悪いけどあんたも速攻で倒さしてもらうで」
最下層で亜紀が遭遇したのは赤い瞳、角を持つメイド服の女性だった。
「悪いけどそうもいかないよ。ぼくの仕事は君たち人間の戦闘力を引き出すこと。さぁ、稽古と行こう!」
「ウチは別に戦い方を学ぶ必要ないねん。さっさと倒したる。行くで!」
亜紀は召喚士で、魔物を従える能力を持つ。しかし、彼女が本気で戦うとき、魔物を呼び出すことはない。
なぜなら……。
「ぶっ飛ばしたるで!」
「いい重さだねぇ……! 拳闘士か何かかな!?」
亜紀の拳を受けた悪魔は大きく後ろに飛んで衝撃を減らす。
「ちゃうで。ウチは召喚士や」
「召喚士? それでそのパワー、意外だね」
悪魔は『予定変更だね』とつぶやいて、魔法を発動した。
「『
「それはなんや」
亜紀は悪魔が取り出したもの……赤黒い巨大な斧を見て聞いた。
「見てわかる通りぼくの武器だよ」
「でかすぎやろ。あんたの華奢な腕で振れるんか?」
「それ、その体格で肉弾戦する君が言うかい?」
互いにどちらかというと華奢な体格である。
「まぁ武器があろうとなかろうと変わらんわ。もういっぺん行くで!」
「かかってきなよ!」
亜紀の超速の拳は悪魔のその巨大な斧によっていとも簡単に防がれた。斧が重いからから、先ほどの用に悪魔がノックバックすることもない。
「ぼくが思うに攻撃が直線的すぎるね! 今までは何とかなってたんだろうけど、ぼくレベルが相手になると全然かなわなくなるよ!」
「アドバイス感謝やわ。ええんか? 敵に塩送るよーな真似して」
アドバイスを受けた亜紀はそのアドバイス通り、次の攻撃は直線的に殴るフェイントからの回し蹴りとした。
悪魔はそれにも適応して蹴りを斧で受け止める。
「うん、いいね。ぼくも引っかかりそうになったよ。敵に塩な送るようなまでというかこれがぼくのやるべきことなんだよね」
「それはなんでや? あんた人間に敵意あるわけやないんか?」
亜紀は一度攻撃の手を止め、悪魔に尋ねる。
「そうだね。はっきり言ってぼくは人間なんてどうでもいいよ。まぁ君みたいな強いのは別だけど」
「じゃあなんでこういうスタンピードを起こしとるんや」
人間に被害を及ぼす行為。敵対しているわけでもないのにそれを行う理由を、亜紀は悪魔に問う。
「人間たちを強くするためだね。試練ってやつ? これを乗り越えたとき人間たちは一つ上のステージに立つだろうってやつ。いやまぁさすがに人間たちを見くびりすぎたのか魔物が弱すぎてぼくたちが出てるわけなんだけどね」
「ほぉ。それで魔物の数を用意してくれたわけやな。おかげでウチのレベル爆上げやで」
亜紀の職業、召喚士(V)は配下の魔物が手に入れた経験値の10分の1を自分も手に入れることができる。
「それはよかったね。でもレベルを上げるだけじゃ、いつまでたってもぼくたちの領域には到達できないよ。壁の一つや二つ、超えないと」
「壁の一つや二つ、な。そんなもんはぶち壊したるわ!」
亜紀がそう宣言したその時、ダンジョン内の魔物が全滅。奇しくも同時に、亜紀の進化の条件が達成される。
亜紀の回りにダンジョンの中の闇が凝縮されていく。数秒立った後、その闇を吹き飛ばし、中から目が黄金に輝く亜紀が姿を現した。
「ほらな。壁なんてウチの前には存在せぇへんのや!」
「……何をしたんだい?」
「さぁな。ほな、続きといこか。『
今度は亜紀の右腕を中心に闇が集まる。そしてその闇は形を変え、漆黒の剣となった。
「存在としての格もぼくに足るね。ぼくとしてはもうノルマは勝手にこなされたし帰ってもいいんだけど……。君が戦う気なら相手になるよ。悪魔として戦いは好きな方だしね」
「ほんならウチの力、しっかり目に焼き付けて帰るんやな!」
新たにこの世界に生まれ落ちた『魔王』とメイド服の悪魔の戦いが今、始まる。
◆◆◆
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
種族:現人神
名前:日向 亜紀
レベル:XXXXX
職業:魔王
ステータス:攻撃力 2149867
守備力 1489754
魔力 1890764
知力 2187462
精神力 1982309
速度 1856348
スキル:『剣術』『体術』『火魔法』『水魔法』『風魔法』『土魔法』『氷魔法』『雷魔法』『闇魔法』『魔王武装』『契約』『契約:Sクラス上位の魔物×50』
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『魔王武装(亜紀)』
<
・漆黒の片手剣。斬りつけた相手のステータス、そして経験値を吸収する。そして、この剣で命を奪うと、そのものが持っていたスキルを奪い取ることも可能である。
『魔具(ミリア)』
<
・赤黒い大斧。この斧で負ったダメージは48時間再生することができない。また、血を浴びる事でどんどん軽くなっていく(悪魔にとっては関係ない)。
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