死霊を従える王

 配信を始めるためにやってきたのは少し離れた場所にあるBクラスダンジョン。ここまで移動するのに1時間もかかってしまった。今朝言っていた通り、元スケルトンズ、改めデッドガールズは家でお休みである。


「そろそろ配信始めるか?」


「初めてよいぞ~! 準備は万端じゃ!」


「私も初めて構いませんよ」


 二人から許可が出たので配信を始めるボタンを押す。


「こんにちはなのじゃ! 『ウェスタン』のドラゴン、ウェスタじゃよ!」


「同じく『ウェスタン』のゴースト、レイナです」


 配信が始まると同時に二人が挨拶をする。お、今日の同接は凄いな、始まった瞬間5万スタートはなかなかにやばい。



コメント

『待ってました~!!!』

『ウェスタちゃんかわいい! レイナ様美しい!』



 視聴者たちも盛り上がっている。コメントが流れる速度が速すぎて

あんまり読めない。


「さて、今日はレイナ主軸でのダンジョンの攻略じゃな! 儂は主殿の近くにいるから、今日の戦闘はレイナに頼むのじゃ」


「かしこまりました」


 ウェスタは俺の方にかけよってくる。今回は俺の目の前にカメラが飛んでるから、視聴者から見たらウェスタが近づいてくるように見えたんじゃないかな。



コメント

『かわっっ』

『近づく姿だけでかわいい』



 それな。俺もかわいいとおもった。ウェスタは今俺の隣で待機中である。


「配信でなくてもいいのか?」


「今日はレイナがメインじゃから儂まで映る距離にいたら戦闘の邪魔じゃからのう。今日は譲るのじゃ」


 なるほど、確かに二人は戦闘の規模が何かと大きくなりがちだから一緒にいると戦いづらいのか。


「と、いうわけで今日は私がメインの配信となります。まだ不慣れではありますが本日はよろしくお願いします」


 そうしてレイナ主導の配信が始まる。


「ではさっそく進みましょう。本日は戦いを見てもらうことが目的と聞き及んでいますから」



コメント

『ウェスタちゃんでないのちょっと残念だけどレイナ様が美しいから許せる』

『二人がありえないほど強いのも理解しているけど探索者というよりアイドル見てる気分』



 何言ってるんだこいつら。言語能力が吹き飛んだ視聴者はとりあえずおいておいて、俺たちは先へ進むレイナへとついていく。


「魔物ですね」


 ふと、レイナが立ち止まり言った。俺にはまだ魔物は見えない。ウェスタの時も思ったが二人とも感知能力でも持っているのだろうか?


「では私の戦闘をお見せしましょう。まぁ一戦目は私自身は動きませんが」


 レイナ自身が動かないとはいったいどういうことだろうか。



コメント

『期待』

『動かずに敵を倒すってこと?』



 視聴者からは初戦闘の期待とともに少しの困惑が見える。俺も困惑してるんだからそりゃそうだ。


「『死の軍勢よ出でよクリエイト・デス・アーミー』」


 ウェスタの足元の影が広がり、その影の中からスケルトンやゾンビ、半透明の幽体など、さまざまなアンデッドが飛び出してきた。こっわ。死霊王の名前に負けないレベルだわ。



コメント

『……こっわ』

『浅見もびっくりだろこれ』



 たびたび名前が出てくる浅見さん。確かにこの光景をみたら浅見さんも驚くだろうなぁ。アンデッドの数と規模が圧倒的すぎるからな。レイナのこの召喚は。


 飛び出してきたアンデッドたちはレイナの先に歩いてきていたBクラスの魔物であるでかい亀、ブラストタートルに群がり、一瞬にして葬り去った。


 あいつ結構な耐久力を持ってて厄介って言われている魔物なんだけどな。



コメント

『あの爆裂亀一瞬でやられたぞ』

『あいつ結構固いのに』

『アンデッドによる集団リンチでお陀仏。南無』



 なぜか視聴者の間で亀をいたわる会が出来上がっている。こいつら、さっきからどうしたんだ?


 まぁいいや、うちの大切な視聴者は変人ということで。


「いかがでしたか?」


 レイナが視聴者に聞く。が、視聴者がなにかいう前に俺が言わなければならないことがある。


「レイナ。めっちゃ強くていいとは思うけど……怖がる人もいるだろうから今後はそれ、やめよう」


 実際俺は少し怖かった。


「かしこまりました」



コメント

『配慮のできる主』

『レイナ様ほかの戦術とかあるのかな』



 ほかの戦術か。俺も少し気になる。ウェスタとレイナの戦いは一ミリも見えなかったから見てないし、レイナの戦闘方法は知らないんだよな。


「気を取り直して先に進みましょうか」


 レイナが先へと進んでいく。このダンジョンは魔物が多いのかすぐに2体目と遭遇した。


「では先ほどとは違い、私が直接出向きましょう」


 レイナは2体目の亀の前に歩いていく。そのレイナの右手の拳に闇のオーラのようなものが凝縮されていった。


 ある程度近づいたところで亀がレイナに気づき、爆発する背中の結晶をレイナに向けて飛ばす。


 しかし、それはレイナが右手をふるうだけで塵となって消滅した。闇のオーラに触れた瞬間、一瞬で。


 そして、レイナはさらに亀に近づくと、右手で亀をぶん殴った。


 亀は吹き飛ぶわけでもなく、殴られた部分から塵となり、最終的には全身が塵となって消滅した。


 ……レイナってもしかして相当えぐい戦い方するタイプ?

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