ダンジョンの中で食べるコンビニスイーツ

 とりあえずは契約を行うとしよう。ウェスタが運んできてくれたスケルトン・ダークネスの意識空間に魔力を注ぎ込んでいく。Sクラスとは言え、やはりウェスタの時のように意識空間に引きずり込まれることはないな。ウェスタははっきりとした意思と圧倒的な力を持っていたからこそそんなことができたのだろう。


「『契約』!」


 滞りなく契約の魔法は成功し、魔法陣がスケルトン・ダークネスの体を読み込んだ。よし、契約完了だな。俺のスケルトン近衛兵団が増えていく。再三繰り返すがウェスタがいれば必要ない。だが、召喚士として契約できるのなら契約したいのだ。


「終わったな。先に進むのじゃ」


「まってくれウェスタ。先に休憩にしないか? 結界張ってれば安全に休憩できるだろ? お菓子とかも持ってきてるしさ」


 契約が終わったとみるなり先に進もうとするウェスタを引きとどめる。最初からこのペースで飛ばし続けるのはかなり消耗がでかい。得策とは言えないだろう。このダンジョンがどれだけ長いかもわからないしな。


「む、そうじゃな。少し休憩とするのじゃ」


 そういってウェスタは俺たちを取り囲む大きな結界を作り出す。いつ見てもきれいな見た目の結界だな。


「ありがとう、ウェスタ。少し待っててくれ」


「了解なのじゃ」


 ダンジョンの地面に直接座るのもちょっとアレなので俺は指輪の中に収納していたレジャーシートを出す。本当なら持ってきた布団の下に敷くためのものだが、まぁ別に今使ってもいいだろう。


「広いし、ウェスタもこっち来いよ」


 布団引くために特大サイズを買ってあるからな。二人で寝ころんでもはみ出ないほどにはでかいぞ。


「わざわざこの上に座るのか? 儂は別にダンジョンの地面に座ってもよいのじゃが」


「汚れるだろ? 今はまぁそれでもいいけど配信の時とかにこういう状況になったら汚れない選択肢を選んでくれよ?」


 ウェスタが汚れたりするにつれて俺が何か言われる確率が上がっていくからな。最悪虐待しているとか言われかねない。それはさすがにな。


「むむ、確かに見栄えを気にするならそれが正解じゃな。よし、これでよいかの」


 ドラゴンとしては普通の地べたのほうがいいんだろうか。少し気になるな。


「それで、今日の菓子はなんじゃ?」


 心なしかウェスタの目がキラキラしているように見える。早くお菓子食べたいんだな。しかたない。


 今日のお菓子は……。


「じゃじゃーん! コンビニスイーツでーす! その名もシュークリーム!」


 というわけで今日のおやつはシュークリームだ。コンビニで買った一口サイズのがいくつか入っているやつだな。


「しゅーくりーむ、とはなんじゃ?」


 まぁウェスタが知らないのも無理はないな。


「食べてみればわかるさ。うまいぞ~?」


 袋を開けて、俺はウェスタに一つシュークリームを差し出す。ウェスタはそれを不思議そうに手にとった。


「少しやわらかいのじゃ。丸ごと食べてよいのか?」


「おう。一口サイズのシュークリームだし、一気に食べちゃえよ」


 俺の言葉を聞いたウェスタは一口でシュークリームを口にした。


「むむ、ほれはふまいほ」


「ちゃんと食べてからしゃべりなさい?」


 目を輝かせて何かを言うウェスタ。おいしいのはわかるけど、あまり行儀はよくないぞ。


 しっかりとシュークリームを食べ終えたウェスタは俺に「もう一つ食べてもよいか?」と聞いてきた。そもそもウェスタのために買ってきたものだからな。俺はもう一つ食べたから十分だ。


「残り6個はウェスタが食べていいぞ。俺は飲み物飲んでるからゆっくり食べな」


 案外ウェスタは食べるのがゆっくりなタイプだし、ウェスタが食べている間に俺も十分休憩をとることができるだろう。


 俺は亜空間からエナジードリンクもどきのジュースを取り出し、それを飲みながら足をのばしてくつろいだ。おいしそうにシュークリームをほおばるウェスタを見ながら。


 まったく、いい表情で食べるなぁ。ウェスタが3個目のシュークリームに手を伸ばした時、俺は一度、結界の外に目を向ける。外には先ほど召喚を解除するのを忘れていたスケルトン・ダークネスがいた。


 完全に忘れてた。でも今はそれでいい。俺は最近ウェスタに教えてもらったある技を試す。強いイメージをもって。


『聞こえるか? 聞こえてたら頷いてくれ』


 スケルトン・ダークネスに向かって念話を飛ばしてみる。スケルトン・ダークネスは頷いた。ウェスタのほうを見ると、ウェスタはいまだに3個目のシュークリームを食べていた。一口で食べず、半分で食べたら後ろから少しクリームが出てきて困惑しているようだった。まったく、なにやってるんだか。ばからしいことをしているがかわいらしいのでつい苦笑を浮かべてしまう。


 まぁそんなことはおいておいて、実験は成功だな。ウェスタには聞こえてなさそうだ。


『お前にフィーアと名前を付ける。指令が一つある。ここに近づく魔物がいたら倒せ。ただ、ダメージを負ってしまったらすぐに戻ってくるように』


 指令を聞いたらしいフィーアは結界から離れていった。さっそく敵を見つけたんだろうな。


 俺たちが休憩をしている間はフィーアにレベル上げをしてもらおう。ウェスタが動き出したらレベル上げの機会もなくなるしな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る