厨二全開
俺はマントを翻しながらケイブサーペントと向かいあう。前回とは違って相手がこちらに気が付いている状態からのスタートだ。ちょっと状況が違うな。
まぁ戦闘スタイルとやることは変わらない。俺は刀を抜き、ケイブサーペントの首の横まで移動する。開幕からトップスピード。
ケイブサーペントには見切れなかったらしく、こちらを見失った。
俺は刀を振り下ろし、一撃で首を切断する。ケイブサーペントには悪いが、俺はカメラの前にあまり出たくはないので瞬殺ということで。
王冠の位置を直し、俺はカメラの奥に下がった。
「これでいいだろ? ウェスタ、交代だ」
「むむ、これでは訓練にならんな。今度格上と戦ってもらうことにするかのう」
ウェスタは少し不満そうながらも配信へ戻っていった。俺も戦闘が終わったのでスマホでいろいろ確認を行う。俺が戦っている間に同時接続が6万人になっていたので、どうやら俺は6万人の前で戦っていたことになるらしい。
コメント
『厨二全開だけどめっちゃかっこええやん。強いし』
『早いし、断面見る限り攻撃力も高そう。つぇぇ』
『主のイメージ結構しっくり来たかも』
はぁ、マイナスの意見があまりなくてよかった。ちょこちょこ痛いやつ的な意見も見えるが、まぁ少ない範囲だろう。しゃーないやん宝箱から出てきたんだから。
「うちの主はどうじゃ? きっと強くなれると思うのじゃが、あまり戦おうとしないのじゃ。みんなからも何とか言ってくれると嬉しいのじゃ」
「おい、だから俺は戦わなくていいって」
ウェスタが急に俺に戦うことを押してきた。
「儂がいないときに危なくなったら大変なのじゃ。ちゃんと強くなってもらわないと困るぞ」
「別に離れないから大丈夫だろ」
「むっ。まぁ……そうじゃな」
コメント
『ここってカップルチャンネルだったりします?』
『(注)二人は契約しています』
『仲いいなぁ』
何やら冷やかされているような気がしてきたので、俺はしゃべるのをやめ、ウェスタにはしっかり配信に戻ってもらった。
すると、少し先へ進んだ後、ウェスタがカメラのほうに振り返える。
「ここから先は深深度ということで戦う敵も強くなるぞ。ここまでくれば攻略目前じゃが、油断はしてはいけないぞ。探索者の一番の敵は油断なのじゃ。みんなも気を付けるとよいぞ。それでは奥へ向かうのじゃ」
どうやら先が深深度ということで、ウェスタが探索者の心得を話していた。ウェスタは一応魔物であって探索者じゃないけどな。
ここから先はしっかり気を付けて挑まなければいけない。俺は特にな。
「さて、深深度初の魔物が現れるようじゃ」
ウェスタが立ち止まった先からはケイブサーペントを一回り大きくしたような黒い蛇の魔物が出てきた。ブラックサーペントだな。
「最初に現れたのはブラックサーペント。Bクラスの魔物じゃな。こいつも特に特徴はないのじゃ。しいて言うなら巨体とケイブサーペントよりも高いステータスじゃな」
ウェスタのカンニング解説が終わり、ブラックサーペントがこちらに気が付き向かってくる。早い! 俺よりも少し遅くはあるが、その巨体をもってその速度で動くのはさすがに反則だ。
しかもどうやらあいつはウェスタを無視してこっちに向かってきているらしい。
俺、なにかお前に悪いことしたっけ? そうか、さっき瞬殺された同種の恨みか。
しかし、そのブラックサーペントがこちらに向かってくる途中、一瞬にして輪切れにされた。
「主殿の元にはいかせんのじゃ」
その場には爪に炎を付与したウェスタの姿があった。え、かっこいいじゃん。
コメント
『かっけぇ』
『これは主も惚れ直したろ』
『超かわいいけど超イケメン過ぎる』
「主殿、大丈夫じゃったか?」
「おかげでな。ありがとう」
確かにこういうこともあるなら訓練しておいて損はないな。Bクラスってなるとちょっと厳しいし、今度Cクラスの強めの奴と戦う訓練でもしてみるか。
「さ、先に進むのじゃ。ここから先の敵は基本Bクラスじゃから、強敵じゃぞ!」
コメント
『嬉しそうだけどウェスタちゃんの前だったらCもBも関係なくね?』
『多分誤差』
リスナーのみんなもウェスタのやばさを理解してきたらしい。そういう子なんだ、うちのウェスタは。
現れる魔物を次々とウェスタがなぎ倒していき、そして1時間ほどが経過したころ、ついにあの場所に到着した。
今までの洞窟がいっきに開け、ドームのような場所に出る。雰囲気でわかる。ここはボス部屋だ。
「ここはボス部屋じゃな。ついにたどり着いたようじゃ」
そういいつつ、ウェスタは前に進んでいく。ドームの中心に巨大な蜘蛛の影が見える。
「このダンジョンのボスはアシッドスパイダー。毒持ちの魔物になるのじゃ。このダンジョンでは唯一の毒持ちになるのでな、急な対応の変化が出るからボスとしては最高難度なのじゃ。まぁ毒にさえ対応できてしまえばまったくもってふつうの蜘蛛の魔物じゃ。ステータスもBクラスにしては控えめじゃからな。みんなが挑むときは毒にしっかりと気を遣うのじゃぞ」
ウェスタのいつもの解説が終わる。そして、ウェスタは蜘蛛に向かいあい、爪に炎を宿す。
「ボス攻略、開始なのじゃ!」
その声と同時にウェスタは駆け出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます