トレンド入り!

「さて、奥へと進んでいくぞ! 目標はボスの討伐じゃ!」


 ウェスタはカメラに向かってそういうと、さらに奥へと進んでいった。俺もそれに続いていく。


 万が一後方から魔物が来たときにカメラを守るために、俺はカメラよりさらに後にいる。まぁ単純に映らないためでもあるが。



コメント

『最初からDクラスってことはボスもそこそこ強いんじゃないか?』

『Cクラスかな、多分。ボスはBクラスくらいだろう』

『ウェスタちゃんなら余裕じゃない?』



 ふんふんと鼻歌を歌いながら先に進んでいくウェスタと、コメントでボスについて議論するリスナー。なにやら温度差を感じるな。


 だが、俺からコメ欄のみんなに言っておくことがあるとすれば、そんな議論関係なくボスは瞬殺ということだな。


 そういえばウェスタは戦闘前に変身した後ずっとそのままだ。それでいいんだろうか。少し聞いてみることにしよう。


「ウェスタ、変身は解除しなくていいのか?」


 鼻歌を歌いながら先を歩いていたウェスタがこちらを振り返ってこたえる。



コメント

『あー確かに解除してないな』

『気になってた』

『俺的にはどっちのウェスタちゃんも好きだからおk』



 リスナーも気になっていたらしい。だよな。翼とか少し邪魔そうだし。


「かまわんのじゃ。むしろ、こうしていることのメリットのほうが大きいからのう。まず、この姿のほうが戦闘に関して優秀じゃ。普段の人間形態はいろいろセーブしておるからの。そして、こっちのほうが個性的じゃろ? 配信をしている以上、個性は重要じゃからな」


 なるほど、確かに納得の理由が返ってきた。確かにその通りだ。


「しかし、それ配信しているときに言っていいのか?」



コメント

『話題振ったやつが言うんかい』

『その話題振ったの主じゃんw』



「むむ、確かにはっきり言って微妙じゃな。画面の前のみんなは聞かなかったことにするのじゃ。しーじゃよ!」


 ウェスタは手だけをもとに戻し、カメラに向かってウィンクをすると同時に口に指をあてる。もうちょっと大人の姿だったらきっと色気がすごかったことだろう。


 しかし、今のウェスタの姿でそれをやるとただかわいいだけである。うん、かわいい。



コメント

『尊死タイム』

『かわっ』

『最強の可愛さ』

『やばい、ロリコンになる』



 今の同時接続数は大体2万5千人ほど。やばい、めちゃめちゃ見てる人いる!? 登録者もいつのまにか10万に到達してるし……配信、初めてよかったかもな。収益化とかも帰ったら申請してみることにしよう。おそらく通るなこれは。


「さて、話の途中じゃったが魔物が来たようじゃからのう、戦うとするのじゃ」


 ウェスタがもう一度手を爪に変化させ、カメラとは逆の方向を向く。そこにいたのは俺も討伐しているケイブサーペントだった。いつの間にか中深度まで来ていたらしい。早いものだ。


 そしてウェスタのカンニング解説タイムが始まる。


「あれはケイブサーペント。Cクラスの魔物じゃな。これといって特徴はないが、高水準のステータスを持っていて巻き付く攻撃、牙での攻撃が厄介じゃ。まぁ儂には関係ないのじゃ」


 そういってウェスタは炎の球体を飛ばし、一瞬でケイブサーペントを焼き尽くした。さすがだな。



コメント

『相変わらずやべー火力だな』

『ガワはめっちゃ可愛いのに火力はぜんぜんかわいくない。えぐい』



 リスナーも若干引き気味である。


 いや、まぁ主の俺も若干引いてる。そういえば先ほどから同時接続とチャンネル登録、そしてSNSのフォローの増え方がえぐい。同時接続が5万を超え、登録者数も20万を超えている。SNSのフォロワーも15万を超えた。


 一体何事かと思って検索したら俺たちの配信がSNSのトレンドに入っていた。


 なるほどぉそれでこんなに伸びてるのか。ウェスタも帰って状況をしったら驚くんじゃないかな。ウェスタは探索ということでコメントは読めないと概要欄に書いたためにコメントを読んだり確認したりはしていない。後で確認すると書いているし。


 俺は確認してるけど。


 しかし配信初めて2日でトレンド入りか。いいスタートを切ることができた。後はこのまま突っ走るだけだろう。


「主殿、戦闘訓練はしなくてもよいのか?」


「え、俺? いや、俺はいいよ」


 急にウェスタに俺の戦闘訓練の話を振られた。5万人が見ている前で戦えるかよ。



コメント

『お、主が動画に出るのか?』

『これは期待』

『戦え。戦わなければ勝てない』



 どうやらリスナーは俺に戦ってほしい様子。はぁ、仕方ないな。


「わかった、次の魔物が来たら俺が出るよ」


「その意気やよしなのじゃ。ほれ、ケイブサーペントが来たぞ」


 ウェスタの爪が指す先にはケイブサーペントがいた。よし、出るか。俺は装備をしっかりと着てカメラの前に出る。


 ドローンが少し心配だが、そこはウェスタが何とかしてくれるだろう。自立型で操作の必要がないから守るだけである。


「主だ。これからあの魔物と戦おうと思う。ウェスタほど強くはないから派手な戦いはできないことを承知で見てくれ」


 そういって俺はケイブサーペントに向かっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る